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彗星の時  作者: 燕兄さん
2/20

出会い

 その時、男の立っている丘から数キロ離れた場所に、岩が崩れるような鈍い音とともに巨大な土埃の柱が立った。

 男は、視線を手からはずし土埃の柱を確認すると、なんのためらいも無く、その方向へいきなり走り始めた。

 男が立っていた丘とその異変があった場所との間には、10メートル以上も落差がある崖と、野蛮な植物が生い茂った鬱蒼としたジャングルが立ちはだかっている。

 しかし男は全く躊躇もせず、ものすごいスピードで崖を駆け下りると、ジャングルの直前で大きくジャンプし、数十メートル離れた巨木の梢に飛び移った。さらに、そのままワンステップでもっと先の木の枝に飛びはねる。まるで、森の中を住処とする野生の猿のような機敏な動きだった。しかし猿と決定的に違うところは、男の身長が180センチ位もあるにもかかわらず、蹴っていく枝がほとんど動かないことだった。


 異変があった場所には、子供の悲鳴が響いていた。

 12・3歳位だろうか。色白で金髪の少年が石柱に鎖で縛り付けられている。その少年は、元々整った顔をしているようだが、大きく見開いた眼と恐怖に引きつった顔は地獄を見た死者のように土気色になり、喉の奥から搾り出すような悲鳴を上げていた。

 少年を死の世界へ引きずり込もうとしているのは、巨大な生物だった。全長数十メートル、太さは2メートルもあろうかというムカデに似たテラテラ光る生き物が、蛇のように鎌首を上げて土埃とともに地中から這い出していた。体側にずらりと並んだ足が規則正しく波打つように動き、かなりの速さで移動している。


 頭部と思われる先端には、眼らしきものは無く、その代わりに無数の鋭い歯を備えた大きな口がぱっくりと開き、火炎のような口の奥から鳥肌が立つような鳴き声を発している。

 少年の周りには松明が焚かれており、その姿が暗闇に浮かび上がるようにセッティングされていた。ムカデの化け物は、その明かりに引き寄せられるようにするすると近づいていき、その不気味な口をさらに大きく開き、鎌首を上げて少年を丸呑みにしようと襲い掛かった。

 「うがあああああ・・」

 少年は、自分の死を覚悟したのか目を閉じ顔を背けた。

 ところが、一瞬、化け物は見えない壁にぶつかったかのように動きが止まり、固まったように動かなくなった。

 次の瞬間、暗闇に一筋の光がきらめき、その輝きは化け物の首の辺りを横切った。 

 いつの間に現れたのか、化け物と少年の間には光る剣を持った男が立っていた。ついさっきまではるか遠くの丘に立っていた黒尽くめの男だった。ほんの数分の間に、鬱蒼としたジャングルを飛び越えて来たらしい。

 その手に持った剣の光色は化け物の首を横切った輝きと同じ色だった。

 男はその光る剣を改めて構え、ムカデの化け物と対峙し直したが、化け物は光が横切った頚部から緑色の体液を噴出させ、禍々しい口をぱっくり開けたままの頭部を地面に落下させた。

 それと同時に、頭部を失った胴体部分は体側の足を盛んに動かしはじめ、猛スピードで出てきた穴に後退し、緑色の体液の筋だけを残しあっという間に見えなくなった。

 残された頭部は、牙だらけの口を力なく空けたまま、男の足元で2・3度痙攣したが、その後動く気配がなくなった。

 男は、それを確認すると、剣の構えを解き少年の方に近寄っていった。そして、少年を石柱に縛りつけている鎖に無造作に光る剣を当てると、子供の腕ほどもある太い鎖は、音も無く切断され、少年の足元にジャランと落ちた。

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