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彗星の時  作者: 燕兄さん
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案内人

「お待ちしておりました。ケイン様」

 扉と同じような銀色の服装をした色白の女だったが、覇道で作り出した影法師のようなはかない感じがした。

「・・え、っと」

「私は、この『操りの間』の案内人でございます。先程の走査線、、扉の放った光でございますが、、での最終サーチにより、ケイン様がマスターの条件を満たしていると判定いたしました。ここから先は私がご案内いたします」

「なぜ僕の名前を知っているの」

「この塔、、ケイン様達が王宮と呼んでいるこの施設は、『操りの間』のメインAI[イオノスⅣ]で一括管理されており、大まかな出来事・情報は全て把握されております。もちろんケイン様が795年ぶりにマスターの条件を満たす可能性が高い男子としてお産まれになったこともデータとして残っております」

「え、、じゃあ君は僕より随分年上ってこと?そんな風には見えないけど。それにマスターって何?」

女は、ふっと微笑んだような表情になり語りかけた。

「私は、[イオノスⅣ]が作った案内用ホログラムです。実体はありません。この先様々な疑問がわいてくるかと思いますが、とりあえず私の指示に従ってくださいませ。後ほど[イオノスⅣ]との高レイヤ接続があります。その時点で全ての疑問が解決されるはずですので。では、こちらへお進みください」

 女がそう言うと、目の前に立ちはだかっていた銀色の扉が音もなく左右に開き、新たな空間への道が伸びていった。


「おお、なんだあの女性は、どこから出てきたのだ」

 ガラス窓から一部始終が見えるジュンサイは、年甲斐もなく興奮していた。

「何かをしゃべっているようだが何も聞こえない。なんだろう。。おぉ、扉が、開いた」

ヤーコンもまた興奮している。

 だが、ガラス越しに見ているだけの二人にとっては、何もできない。

「ああ、ケイン様が扉の中に入っていかれる・・」


 ケインが次の部屋に入ると、再び銀色の扉は音もなく閉まった。

 ケインは、案内人に促されるまま次の部屋に歩み行った。そこは部屋というよりも通路のようなもので、目の前には長い階段が上方に向かって続いていた。

「一段目の光っているところに進み、手すりにおつかまりください」

自ら案内人と名乗った女が、静かに言った。

 ケインは一瞬ためらったが、意を決したようにつばを飲み込むと、白くぼんやり光っている一段目の階段の上に立った。

「では、まいりましょう」

 女は、ケインが階段の横にある手すりを掴んだのを確認すると、やさしく微笑みながら視線を前の方に向けた。

 その女の動作に呼応するかのように、ケインの身体は音もなく何のショックもなく移動し始めた。かなりのスピードで動いているようだが、よく注意しないと判らないくらい静かだった。ぼんやり見える壁と、わずかな空気の流れで自分は運ばれているんだなと確認できるが、案内人の女が足も動かさずに傍らにいるおかげで、周囲の景色の方が動いているように錯覚してしまう。

 しばらく進むとまた銀色に光る扉が近づいてきて、その前で止まった。ケインの来訪を知っていたかのように静かに扉が左右に開く。

「中へお入りください」

 案内人に促されるまま、ケインは部屋の中に歩を進めた。

 やはり薄暗い感じのする広い部屋だったが、壁一面に色鮮やかな光りが点滅していた。

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