刺客
よく見ると銀の人型の腕に黒い刃のナイフが刺さっている。どこからか飛んできたそのナイフのおかげでケインは命拾いをしたようだ。
銀の人型は、刀がソファーに刺さったまま、赤い目をドアの方に向けた。どうやら黒いナイフはドアの方から飛んできたらしい。
ケイン達もつられてドアの方を見た。ドアは半開きになっていて一瞬黒い影が見えたような気がしたが次の瞬間、空中を飛んで銀の人型に蹴りかかっていくシャインの姿が見えた。
シャインの蹴りが届く直前、銀の人型は、小さな稲妻と供にふっと消え、ほぼ同時に部屋の隅にメイドの少女が現れた。腕には黒いナイフが刺さっている。
ひらりと着地したシャインは、すぐその姿に気がつき低い声で言った。
「次元転移型偵察アンドロイド、JK521sか」
さらに、ソファーで血の気が失せた顔色のまま、あっけに取られているケインや、棒立ちしているヤーコンに向かって早口で言った。
「ヤツは危険だ。気を抜くな」
「は、はい・・」
部屋の隅に現れたメイドは、腕に刺さった黒いナイフを抜き床に捨てながらシャインを見つめつぶやいた。
「第二ターゲット発見。・・あれは、人間ではない。半有機サイボーグPX2008型SPタイプと判別可能」
シャインは再び、眼にも止まらぬ速さで床を蹴り、メイドに向かって突進していった。が、シャインのパンチが当たる直前にまたしても姿を消し、反対側の壁際に今度は銀色の人型で現れた。
しかし、シャインはその動きが予測できていたかのように、一瞬も躊躇することなく一連の動きでナイフを拾い上げると、翻って銀の人型に向かって飛び跳ねた。
銀の人型は、シャインの位置とスピード、それにケインの位置を計算したのか、刀型の腕を真横に構え、小さな稲光を発生させ始めた。
シャインはそれを見ると、空中をものすごい勢いで銀の人型に飛びながら左手を握りしめ、手の甲を銀の人型の方に向けた。
すると、手の甲が赤く光り、周囲にキーンをいう耳障りな音が響いたと同時に、銀の人型は稲光が消え固まったように動かなくなった。
シャインは左手をそのままに部屋の端から端に飛び、1秒もかからずに銀の人型に迫った。
銀の人型は頭部と思われる赤い眼の付いた面をシャインが迫りくる方向に向けた。もし人間のような顔があったとしたら、驚愕の表情になっていたのかもしれない。
だがシャインは、ためらうことなく黒いナイフを赤い眼の間に深々と差し込んだ。一瞬金属と金属が擦り合うような高周波の音が響いたが、シャインの勢いに押されそのまま後ろの壁に叩きつけられ、切れた操り人形のように床に投げ出された。
シャインは、倒れた銀の人型の傍で左手の赤光を向けたまま立っていたが、銀の人型の赤い目の輝きが消えたのを確認すると、手を下ろし数歩後ろによろめいた。
ほんの数分、いや数十秒間の戦いに呆然としていたヤーコンがシャインの異常に気がつき、シャインに駆け寄って後ろから支えた。
「だ、大丈夫ですか?シャイン殿」
「あ、ああ、次元ロック装置を作動させるのはかなりエネルギーを使うから、一時的に一部機能不全が起きただけだ。しばらく経てば回復する」
「・・・そ、そうですか。直るんですね、それは良かった」
ヤーコンはシャインの言うことがいまいち理解できなかったがとりあえず納得し、改めて床の銀色の刺客を見た。
「・・しかし、これはいったいなんですか。人なんですか?」
「いや、これは、人間ではない。次元転移、、、つまり空間を飛び越えてあらゆる所に出現できる機能を持ったアンドロイド、・・機械だ。主に戦闘時の偵察によく使われる」
「・・・機械、つまりあの戦鉄牛と同じ種類のものですか」
「そうだ。だが、もうほとんど戦えるほどエネルギーが残っていなかったようだから助かった。フルチャージだったらどうだったか」
「戦鉄牛と同じということは、・・・これは『地の国』からの差し向けですか!」
「・・・・そうかもしれない」
三人が呆然と銀色のアンドロイドを見下ろしていると、開けっ放しになったドアから一人の魔導師の若者が飛び込んできた。




