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彗星の時  作者: 燕兄さん
13/22

見慣れないメイド

 「ふー、疲れるなー」

 ケインは、そう言いながらソファーに座り込んだ。

大広間で朝から執り行われていた「15歳誕生の儀」が終わり、やっとの思いで自室に引き上げてきたところだった。

 様々な出来事が起きた旅の疲れがまだ抜けぬまま、予定通りに行われた儀式に強制的に参加しさせられ、若いケインでもさすがに疲れの色は隠せない。

 深々とソファーに沈み込んでいるとドアをノックし入ってくる者がいた。

 ヤーコンだった。

「いかがですかな。ケイン様」

「ああ、ヤーコン導師。丁度良いところへ。ちょっと疲れが取れる覇道を教えてくれませんか」

「ふふ・・大変でございますな」

そう言うとヤーコンは手に持った杖の先端をケインの方に向け、クルリと回すとぶつぶつ小声で呪文を唱えた。

「どうでしょう」

「ああ、なんか身体が軽くなったような気がします。ありがとうございます。やっぱり覇道はすごいなぁ。これって何番くらいなんですか」

「これは、ケイン殿でもご存知のはず。基本中の基本、覇道3番、相手に気を送るというやつですよ。肉体も魂も元気になります。世の中には様々な力があるのです。ですが、全ての力の根源は、大自然の森羅万象の力、宇宙の力が全ての基になっているのです」

「ふーん、するとあの戦鉄牛もそうなのかな」

「確かに、あの超古代の化物は違うような気もしますが、この世に存在しているということは、やはり基は同じだと思いますね」

「あれ、ところでシャインさんはどこに行ったの」

「我々の命の恩人ですから粗末には扱ってないはずです。とりあえず客間にいるはずですが」

「これからどうするのかな」

「あれだけの戦士ですから、ぜひ身近にいてほしいところですが、記憶が戻った時どうなるか不安なところはあります」

その時、ドアがノックされ外から女性の声が聞こえてきた。

「お飲み物をお持ちしました」

「どうぞ」

ケインは気軽に返事をしメイドを招き入れたが、ヤーコンの脳裏に一瞬不安がよぎった。

(いつもの小姓じゃないのか)

入ってきたのはメイドの格好をした少女が一人で、トレーにガラスのデキャンターとグラスを載せて持っていた。

「失礼します。ケイン様」

「ああ、あれ、君見かけない子だね」

近づくメイドを見てケインが尋ねた。

不安が大きくなったヤーコンは、メイドとケインの間に入り、さりげなくメイドの接近を防ごうとした。

「後は、私がやるから下がってよい」

ヤーコンが、メイドからトレーを受け取ろうと手を伸ばすと、メイドは大きな眼をヤーコンに向けて言った。

「いえ・私が・・」

言い終わる前に、メイドの周りに小さな稲妻が光ると、瞬く間にメイドの姿が消え失せた。

次の瞬間ケインの目の前の空中に「パリパリ」と小さな稲光が起きると、その場所に銀色の人型の物体が突然現れた。

人の形はしているものの、全身銀色でのっぺりしており、顔の辺りには丸い穴が二つ開いているだけ、腕も手がなく代わりに刀のようなものが光っている。

 その顔の眼と思われる二つの穴が赤く光り、ケインの方を見つめると、刀の腕を大きく振り下ろした。

「!!!」

一瞬の出来事で、ヤーコンもケインも身じろぎもできず、防ぐこともできなかった。

 銀色の人型が振り下ろした刀は、確実にケインを切り裂くと思われた寸前、軌道が大きくはずれケインが座っているソファーに深々と突き刺さった。

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