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彗星の時  作者: 燕兄さん
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白大魔導師

飛竜に乗ったサルサ導師は、忌々しげに岩山を睨み付け「まあいい、本命はあっちじゃ」

と言いながら、ケインたちのほうを振り返ると、飛竜は再び大きく羽ばたいて飛び上がった。

今度は、さっきと違い、低空で滑空しケインたちに近づいてきた。

ケイン達に数十メートルの辺りまで来た時、真っ青な空中から爆音が轟き、飛竜の目の前に稲光が立った。突然の出来事に、飛竜はバランスを失い、右に折れそのまま着地してしまった。

「今の雷撃は、、ヤーコン!貴様ではないな!誰だ!・・」

サルサはそう言いながら、はっとして上空を見上げた。

空には、金色に光る甲冑をまとった、サルサの飛竜よりも一回り大きい青い飛竜が旋回している。

「まさか・・、ここは我が『地の国』の領地ぞ!」

ヤーコン達も上空を見上げ驚いていた。

「あ、あれは、『天の国』の王家の飛竜だ。乗っているのは・・・白大魔導師ジュンサイ様だ」

 旋回している青い飛竜には、白い服装で長い白髭をたくわえた老人が乗っている。

「ほっほっ・・サルサ導師よ、久しぶりよのう。元気そうで何よりじゃ。確かにここは『地の国』じゃが、ケイン様をかどわかしたのはヌシらじゃろう。返してもらうのに手段は選ばぬ」

 サルサは憎々しげに見上げると、目の前でなにかの印を結び、杖を振り上げた。

 すると、サルサの飛竜の周りから鋭い槍のような土の塊が幾本も飛び上がり、上空を舞ってるジュンサイの飛竜に向かって飛んでいった。

 ジュンサイはそれを見ると、「フン」と鼻を鳴らして

「ヤーコンよ。ケイン様を頼むぞ」

と言うと、「ハッ」という気合とともに杖を振るった。

ジュンサイの飛竜に迫っていた土の槍は、見えない壁にぶつかったかのように霧散し消え去り、替わりに数本の白い氷の槍が、何もない空中から出来上がってサルサめがけて飛んでいった。

「むう」

今度は、サルサが気合を入れて杖を振った。

飛んできた氷槍は、サルサの少し手前でコースがまがりサルサの飛竜の周りに突き刺さった。

 サルサは、再び印を結ぶとさっきよりも大きく杖を振り上げた。

「これはどうじゃ」

地面から小さな小石が無数に浮かび上がり、一斉にジュンサイに向かって飛んでいった。

石が飛んでいくのを見ながら、サルサは飛竜に指示を出した。

「この隙に、ケインを殺れ」

サルサの命令にサルサの飛竜はすばやく反応し、鋭い爪をケイン達に投げかけた。

 だが、ヤーコンの動きの方が一瞬早く、ケインを動きの止まった走鳥から抱き下ろし、飛竜の爪をかいくぐり地面に臥した。

サルサの飛竜は、再び爪を繰り出した。

 サルサの動きに気が付いたジュンサイは、大きく眼を見開いて「うおっ!」と気合を入れて杖を振るったが小石の襲来に邪魔をされ術を出すのが一瞬遅れた。

 サルサ飛竜の爪は、確実にケインたちの背中に狙いを定め振り下ろされた。ヤーコンはケインの身体に覆いかぶさり、身を挺して守っているが飛竜の爪の大きさに、自分の非力さを痛感していた。 

 その時、黒い影が飛び出し、横から飛竜の爪にぶちあたった。キーンという高周波の音が響き渡り、飛竜の大きな黒い曲がった爪が根元から折れ空中を舞っている。

 いつの間にか、飛竜とケインたちの間に、黒いナイフを構えたシャインが立っていた。

「シャ・シャイン殿」

ヤーコンは、この超戦士に護衛を依頼した幸運に心底感謝しながら立ち上がった。

 シャインはナイフを構えたまま、飛竜と対峙している。小山のような大きさの飛竜にシャインは全く恐れを抱いていないようだ。

「・・お、おのれ~」

サルサは怒りに眼を血ばらせながら杖を振るった。

ゴーという地鳴りとともにサルサの周りの地面が盛り上がり、無数の槍のような形になりシャイン達に襲い掛かった。

 シャインがナイフを構え、防御しようとした時、迫りくる土の槍とシャインの間に白い壁ができ始めた。土の槍はその壁にぶつかり砕けていく。白い壁は、氷でできていた。氷壁だ。

 みるみるうちに氷壁は厚さを増し、さらにサルサと飛竜を丸ごと巨大なドームのような形で包み込み始めた。

「うぬ、ジュンサイめが・・」

 サルサは、さらに強く杖を振って土の槍を増やしたが、氷の壁を打ち破ることができない。

 その様子を見たジュンサイは、飛竜をケイン達の近くに着陸させた。

「ケイン様、ヤーコン、それにそなた、早く乗りなされ。氷の壁なぞサルサには子供だましじゃ。すぐに破って攻撃してくるぞ」

 ケインたち三人は、ジュンサイの言葉に従い、青い飛竜に飛び乗った。

「よいかな。お捕まりくだされ。よし、行け」

 金色に輝く甲冑を身にまとった青い飛竜は、ジュンサイの掛け声に従い、大きく羽ばたき、4人を乗せて飛び上がった。


 飛び上がると同時に、サルサを囲っていたドーム型の氷壁の中で強い衝撃音が響き、白い亀裂が無数に走った。その数秒後には爆音とともに氷が砕け散り、土ぼこりとともにサルサを乗せた斑模様の飛竜が飛び出してきた。

「もう出てきおったか。さすがよのう」

ジュンサイは後ろを振り返りながら言った。

「やはり、『地の国』の領域では、『天の国』の覇道は利きが弱いのう。仕方あるまい。しっかりつかまってくだされ。スピードを上げますじゃ」

 ジュンサイの言葉通り、青い飛竜は羽ばたき方を変え一気に速度を上げた。

 サルサの飛竜もスピードを上げたかに見えたが、飛行速度はジュンサイの飛竜のほうが上のようだ。スタートの数秒の差も大きいようで、見る見るうちに2頭の差が開いていき、ジュンサイたちはサルサを振り切って『天の国』に向かっていった。


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