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第27話「迫る死神」

車椅子に腰掛けるヘルグレロは感心していた。分断させた部隊の中で少女は一人で大量の死者と対峙していたはずだからだ。


「中々やるではないか、お主には相当の数の死者を配置したはずだが。ははは、これは楽しめそうだ。」


「それはどうも。カナン、動けますか?」


「・・・しばらくは無理そう。蓮とブライスは?」


「分かりません。ですが、先ほどから戦闘音が響いていますので恐らくは無事でしょう。」


淡々と冷静に話すセキ。死者の返り血は浴びているが、少女の身体には傷一つない。そしてカナンは戦闘に割いていた意識を集中させ、蓮が無事であることを確認する。


「──さてと。」


セキは改めて目の前の敵を見定めた。純金の骸骨の背後に広がる神秘的な宇宙、彼を囲うような軌道を描く小さな恒星。


「気を付けてセキ。あいつは───」


「大丈夫ですよカナン、直前まで見させていただきましたから。」


幸か不幸か、最初の攻撃をカナンが被弾したことでセキにはある程度の分析ができていた。それはカナンのもとに駆け付けるのが寸前で間に合わなかったのが皮肉にも功を奏したのだ。


「ほう、ならば覚悟は良いな、黒夜の娘よ。」


ヘルグレロは再びカタカタと笑いだし、同時に三つの星を指で押し出して軌道から外させた。二人の少女の方に向かって一直線に加速する恒星。


「───マズいっ!!」


反射的に恐れを感じて身構えるカナン。最初と比べても単純計算で三倍の数だ。その威力も効果範囲も桁違いだろう。


しかしセキは冷静に迫りくる星々を見つめ、それらが限界点を突破して寿命を終える瞬間を見極めた。


「───っ。」


そして少女は手に浮かべてた黒箱を展開させて無数の盾を作り出し、迫りくる星々に向けて防壁を張った。


限界を迎えた恒星はセキの盾と触れて大爆発する。膨大な量のエネルギーの崩壊と発散。それらをセキの盾は正面から受け止め、とてつもない威力の衝撃を吸収した。


爆風に揺らされるセキの黒い髪。その表情は変わらずに落ち着いて見えるが、内心では相当の焦りを感じていた。


「ははは、見事見事。まさか全て防がれるとは。」


「・・・まぁ、余裕だね。」


表面上は虚勢を張るが、少女には全くの余裕はない。なぜなら彼女が想定していたよりも、星の爆発の威力が凄まじいもので、黒夜の箱(ノクスアルカ)の耐久的にも紙一重の状態だった。


(三つなら何とか防げる。それ以上は・・・)


少女の中で不安と焦りが徐々に増幅していく。いかなる時でも冷静な思考ができるゆえの恐れ。セキは久しく忘れていた感情を思い出す。


「───迷うな。」


セキは声に出して燻る感情を排除する。そして余計な思考で鈍る前に決着をつけることを選択した。


展開していた黒箱を手元に戻し、無数の刃に変形させて斬撃を飛ばす。


「ははは、よく出来た玩具だな。」


セキの攻撃を前にヘルグレロは笑いながら手を払う動作をし、高速で迫る鋭い刃を容易く弾いた。


「・・・ちっ。」


「次はワタシの番だな。どれ、今度は少し火力を上げてみよう。」


カタカタと不敵に笑う骸骨は指を強く弾いた。


「なっ!?」


驚くセキの目の前に広がるのは無数の星々。その全てが純金の骸骨から解き放たれて走り出した。


「───っ!!!!」


容赦なく連鎖して爆発し続ける星々。セキは必死に盾を展開するが追い付かない。設置が遅れた部分から吹き飛ばされて減り続ける防壁。徐々にその身に迫る衝撃。


(───ダメだ!!)


セキはこのままでは確実に押し切られることを悟り、

展開していた黒箱を手元に戻し、カナンを守る盾を除いて、残りの部分を槍に変えて特攻する。その急な切り替えに驚いたヘルグレロに僅かな隙が生まれる。その刹那の時間を利用して、セキは迷わず一気に加速した。


「ははは。そうくるか。」


愚かな選択だと嘲笑う骸骨。しかし少女は諦めて自暴自棄になった訳ではない。これほどの爆発の威力なのだから、使用者自身も巻き込む恐れがある距離では使えないと判断したのだ。


だが全速力で走るセキ自身が理解していた。追い詰められた獲物の取る行動など、捕食者からすれば予測の範疇である事など。それを越えることなど不可能であると。


「無謀な賭けだったな。」


一瞬の間にセキの刃はヘルグレロの喉元まで迫ったが、それは車椅子から動かない骸骨には想定済みであった。そして悪魔の様に笑う純金の骸骨は躊躇なく己の目の前で小さな星を爆発させた。






「───ぐっ、ぼ。」


コンクリートの分厚い壁を突き破って建物の中まで吹き飛ばされたセキ。崩落した瓦礫に押し潰され、その口からは大量の血を吐き出した。


「はぁ・・・はぁ・・・うっ。」


爆発の瞬間に槍を盾に変形させたが間に合わず、その衝撃を生身で受けてしまった。その結果としてはこの有り様。


潰された内臓が猛烈に痛みを訴え、粉砕された骨は立ち上がる力を奪った。そして止まらない出血による意識の混濁、激しい倦怠感と襲いくる寒気。自身のエネルギーを消費して治そうとするが、あまりの傷の深さには応急処置すら時間がかかる。


「───っ。」


真っ赤な血を吐き続けながら、何とか身体を動かして瓦礫の中を抜け出すと、廃墟の中には車椅子のガラガラと動く音が響いて近づいてくる。


それは少女に終わりを与える死神の足音だ。



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