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風に向かって走れ

「開けろ! この野郎! 早く開けないと殺すぞ!」トレイン・ジャックの男は操縦席に座る運転士に向かって叫んだ。


「ヒィィィー」と若い運転士は悲鳴を上げると電車を完全に停車させて両手で耳を押さえた。若い運転士は信じられない思いだった。『昨日、28歳の誕生日だったのによ。なんでこんな目に合うんだよ。仕事なんか休めば良かった。彼女に祝ってもらった時間に戻りたい』と若い運転士は涙を流しながら電車を停めたのだった。


トレイン・ジャックは運転士席の扉のガラスをライフル銃で叩き割った。


「あー、やめてください! 立ち入り禁止なんです!」と運転士は哀願口調で言うとトレイン・ジャックは運転士の顔を強く殴って気絶させた。


「やっと電車を運転できる日がきたんだ。この電車はオレのものだ。運転士を目指して受験したのによ、免許を不合格にして落としたアイツらを許さん! この電車と共に死んでやる!」とトレイン・ジャックは言って立ち上がると車掌の代わりにアナウンスをした。


「本日、電車『すみれ』に御乗車頂きまして誠に誠にありがとうございやす。終点は、あの世〜、あの世〜。わたくしとお客様とで、一緒に、あの世に向かいま〜す」とトレイン・ジャックは言って運転席に座り直し電車を発車させようとした。


「トレイン・ジャックよ!! 無駄な抵抗は止めて直ぐに運転席から出てこい!!」と大和愛人警部がトレインジャックの背後に付いて言った。


「わっ! き、き、貴様は誰だ!?」とトレイン・ジャックは心臓を鷲掴みにされたようで声を詰まらせて叫んだ。


「嵐が丘警察署の大和愛人警部だ!! 逮捕する!!」


トレイン・ジャックは振り返って仰け反った。


「警部だと? おい、なんでだよ!! なんで裸なんだよ!? ナメてんの!?」


「裸だからなんだ? 裸の何処か悪い? 裸をナメんな!!」


「服着れよ!!」


「悔しかったら、お前こそ、服脱げよ!! 服も脱げないくせに偉そうにするな!! 裸の自分に謝れや!! 裸になれない自分に謝れや!! 裸の心を傷つけて痛い目に合わせて束縛して悲しい思いをさせている自分の心に対して素直に謝ってみれや!!」と大和愛人警部は怒鳴りつけた。


『なんか、コイツ怖い。ちょっと会話にならないタイプかもしれない。ヤバい奴だわ。マジもんのヤバい奴だわ』とトレイン・ジャックの男は思った。


トレイン・ジャックはライフル銃を大和愛人警部に向けて引き金を引こうとした。大和愛人警部は油断していたためにライフル銃を振り払えずにいた。このままだと被弾してしまう。大和愛人警部は急いでバック転をして1車両目の扉前に近付いた。


その時だった。


「貴方様が噂の全裸丸出しの大和愛人警部だっけ? ちょっとだけしゃがんでよ!!」という声が聞こえてきた。


大和愛人警部は声のする方向に目を向けた。


赤いハイレグビキニを着た若い男が大きなブーメランを手にして立っていた。


「誰だ!?」と大和愛人警部は赤いハイレグビキニを着た若い男に言った。


「話は後でよ」と赤いハイレグビキニを着た若い男は言うとトレイン・ジャックに向かってブーメランを投げた。時速177キロの速さでブーメランは飛んでいきトレイン・ジャックの右腕を引き裂いて床に右腕は落ちた。


「ギャーーー!!」とトレイン・ジャックは叫ぶと痛さのあまりに気絶して仰向けに倒れてしまった。大和愛人警部は急いでトレイン・ジャックの傍に行くと運転席の窓を割ってからトレイン・ジャックをおんぶした。


「赤いハイレグビキニの男よ、ありがとう。君は何者だ?」


「わたし? わたしは、今度、嵐が丘警察署の捜査一課に勤める事になりました、服部ジュリランゲーニョです。元忍者です。服部半蔵の血筋を受け継ぐ者でもあるわ。大和愛人警部、宜しくお願いします」と服部ジュリランゲーニョは敬礼しながら言った。


「なぜ、ここにいる?」と大和愛人は言った。


「たまたま偶然、この電車に乗って嵐が丘に行く事になりまして。運悪くもトレイン・ジャックに鉢合わせしちゃいました」と服部ジュリランゲーニョは敬礼したまま言った。


「なぜ、赤いハイレグビキニなんだ?」


「お言葉ですが、大和愛人警部は何で全裸なんですか?」


「俺はアレルギー体質で服を着れないんだよ。服を着ると体中が腫れ上がるんだ。気絶もして意識も混濁してしまうんだよ」


「あらー。可哀想に。私は赤いハイレグビキニを着ると頭がスッキリして仕事がしやすくなるんです。赤いハイレグビキニを着ると体が燃えるの。燃える気持ちを維持するために赤いハイレグビキニを着ています」


「よし、赤いハイレグビキニの使用は俺が許可する。ただし着るためには条件がある」と大和愛人警部は強めの口調で言った。


「条件? 何かしら?」と服部ジュリランゲーニョは緊張した面持ちで言った。


「赤い防弾レオタードに変えること。後、股間からハミ出している陰毛を剃れ」


「赤い防弾レオタードですか? 分かりました。赤い防弾レオタードに変えますが、大和愛人警部はアンダーヘアーを解禁しているじゃないですか」と服部ジュリランゲーニョは戸惑いながら言った。


「俺は全裸だからアンダーヘアーを出しているだけだ」と大和愛人警部は言った。


「う〜ん、何か納得できないけども……。分かりました。陰毛を剃ります。オシャレにカットした陰毛じゃダメですか?」と服部ジュリランゲーニョは頼み込むような声で言った。


「ダメだ」

 

「はいわかりました」と服部ジュリランゲーニョは言って敬礼した。


「服部ジュリランゲーニョよ、嵐が丘警察署に着いたら報告書を頼む」


「はいわかりました」と服部ジュリランゲーニョは言って改めて敬礼をし直した。


「じゃあ先に行く」と大和愛人警部は言うとトレイン・ジャックをおんぶして運転士の席の割れた窓からジャンプして飛び降り、そのまま走り去っていった。





つづく






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