宇宙の果てからこんにちは!
「ぐわわわわーっ!!」大和愛人警部は頭を抑えたまま、床に倒れてしまった。見た感じの大和愛人は瀕死の重傷、断末魔の叫び、トチ狂ったイカレポンチの裸族のようにも見えた。いつもクールで毅然としていて我が道を行く裸ん坊の大和愛人警部が、ここまで悲壮に満ちた姿を晒すというのは、おそらく、まずあるまい。まさに最大級の危機を迎えているようだった。危うし、大和愛人警部。本日をもって最終回となってしまうのか?
「おい! 大丈夫かよ? しっかりしろ! 救急車を呼ぶからな!」とスペース太郎は言ってスマホを出した。
「しまった!! 充電が1%しかないやい!!」とスペース太郎は叫ぶと充電器を探したが見当たらなかった。
「またかよ!! ちきしょうめ!! 充電器め!! いつも黙って何処かへ消えやがるぅ!!」と、毎回、自分の整理整頓が出来ないせいで行方不明になる充電器に対して文句を言った。
「大和さん、とりあえず、待っててくれ! 今から近所にある消防署までひとっ走りしてくる! 諦めるなよ、頑張れよ!!」とスペース太郎は言って裸足のまま外に飛び出していった。
「うわわわわわーっ!!」と大和愛人は床をのたうち回って叫び続けていた。顔面蒼白で呼吸も荒い。額から汗が溢れて身体も震えていて体温の低下もありそうだった。急激な病によるものならば命にも関わってくる。今、大和愛人は意識が混濁しているようにも見えた。
『久しぶりだけど喋り過ぎは良くないぜ』と大和愛人の耳元なのか、脳に直接コミットしてきたのか解らない声が響いてきた。
「だ、誰だ!? この耳鳴りと頭痛を止めてくれ!!」と大和愛人は叫んだ。
『ごめん。ちょっとテレパシーの出力を上げ過ぎだよね。ごめんごめん。なんせ無の世界からダイレクトに語りかけているからさ』
「お前は何を言っているんだ!? 誰だ? おばけか? おばけなんていないさ! おばけなんて嘘っぱちさ!」
『おばけとは心外だな。ちゃんとしたマンだよ。男さ』
「まずは名乗れ!!」
『俺かい? 俺はキャプテン・ラクトン・BLUE・龍神・メロンクリームソーダ・ミルクだ。宇宙の果てからこんにちは!』
「知らない。誰だよ? ナメてんのか?」
『俺は宇宙の平和を守るスーパーヒーローなんだけどもね、今ね、宇宙の果てに閉じ込められちゃってんの』
「まったく理解不能。早く消えてくれ!!」
『まあまあ穏やかにいこうぜ。俺は50世紀の未来に生きている。君は21世紀の世界に生きているんだろう?』
「50世紀? 君の話がわからん」
『信じてほしい。手短に話すよ。大和愛人は俺の御先祖様なんだ』
「!? !? !? はっ!?」
『とりあえず、また連絡するよ』
「待て待て!! 俺が5歳の頃に聞いた不思議な声の正体はお前なのか?」
『うん、そうだよ。時間の行方は思考の果てを頼り反発し合っているんだ。だからこそ、時間なんてものは存在しないんだよ。場所もね。じゃあまたな』
「ちょい待て!!」
ここで大和愛人の頭に聞こえてきた不思議な声が消えた。消えたと同時に頭痛や耳鳴り、吐き気も収まってしまった。
大和愛人は不穏なものを感じてしまい途方に暮れてしまった。
つづく




