実験室
「実はな、ものすっごいバカでかい巨大な宇宙船が地球に近付いている。目的は地球を侵略することだと思うんだよね」とスペース太郎は挙動不審に落ち着きなくあっちこっちを見ながら話していた。不安そうな顔が深刻さを物語っていた。
「そんな極端にふざけたバカな話があるわけがない! だが、うーん。まさかな……。俺も前に宇宙人と。だがありえない」大和愛人警部は否定したが心の何処かではさもありなんと思ってもいた。
「あるよ!!」
「あらら。あるのかい?」
「あるんだよ。この狂った世界ではな。あるのさ」
「スペース太郎さん、まずは証拠を見せてみろよ」
「証拠はな、5日ほど前にな、私が開発したスペース盗聴器、満呼堂PGZを使って宇宙を盗聴していたんだ。満呼堂は、満たすから、呼ばれたから、どういたしましての略で満呼堂と言うんだ。この盗聴器は300光年先まで盗聴できる」
「マジかよ。それは凄い」
「凄いだろう。ビビった?」
「ああ、ちょっとだけね」
「では、録音した宇宙人な会話を聞いてもらいたい。宇宙人は日本語を話している」とスペース太郎は言うと、棚にあるラジカセを持ってきてメタルテープを机の引き出しから取り出してラジカセにセットした。
「おい、嘘をこくなよ! 日本語を話す宇宙人などいるわけがない!」と大和愛人は呆れ気味に言った。
「それがさ、いるんだってば。あんた知らないのかい? 日本人の先祖は宇宙人なんだ。800光年先にあるカルバギアンジスティン惑星の住人が日本人の祖先なんだよ。日本人は、唯一、宇宙人の遺伝子を持っている地球人なんだ。先ほど記者会見に来てくれたマンカスティン・チンカスティンという宇宙人は日本人の血もある宇宙人なんだよ」
「まったく知らなかったが、ちょっと話についていけない」
「大和警部、ここまで簡単に秘密を暴露したからには話についてきてほしいところ。では宇宙人の話を聞いて頂こう」とスペース太郎は言ってラジカセの再生ボタンを押した。
『もう少ししたらな、地球を侵略するぞ。我が宇宙軍団、組織はやるからには徹底してやる。まずは先制攻撃で地球、つまり地球を、世界を支配している国、大陸を、一気に完全にボンボコボン爆弾で完全破壊をする!!』
『い、いきなりボンボコボン爆弾は早くないですか?』
『早い方が楽に支配できる』
『で、でも早すぎますよ』
『おい、テメェは逆らうのか? この私に逆らうのか?』
『いやいやいやいや、違います。失礼しました』
『ボンボコボン爆弾をセットしろ!! 今すぐだ!!』
『は、はい』
『もうすぐしたら地球は私のものだ! ふへへへへへ!!』
『ジャム……』
「大和愛人警部、ここで録音は切れてしまった」とスペース太郎は言ってカセットテープを巻き戻して最初から流した。
大和愛人警部は唸った。
唸り続けていた。
『なんか嘘くさい。嘘くさいけど、マジならヤバい。ボンボコボン爆弾ってなんだよ? 日本語は丁寧に話してはいたが、所々に強い方言が、なまりがあったように思う』と大和愛人警部は思っていた。
「スペース太郎さん、いつ宇宙船は地球に来るんだ?」
「たぶん、3〜7日のあいだ」
「な、なんだって!? 時間がない!」
「明日かもしれないし分からない」とスペース太郎は言って頭を抱えた。
「もう一つ、警部に話がある」
「何だ?」
「服が着れないみたいだが、服のかわりにボディーメカを装着してみないか?」とスペース太郎は目を輝かせて言った。
「ボディーメカ?」
「防御力のあるサイボーグみたいな服、サイバー系みたいな服を作ってあげるよ。いつまでも裸だと辛いだろうし、風邪だって引くかもしれないだろう?」とスペース太郎は優しく言い聞かせるように話した。
「そんなことができるなら是非とも頼みたい。本音を言うと、もう金玉を風になびかせて歩きたくはないんだ。これからは髪をなびかせて歩きたいんだよ」と大和愛人警部は寂しそうに言った。
「よし、今から、2時間でボディーメカの服を作ってあげるから、ここで待っていてくれ」とスペース太郎が言って地下室にある実験室に行こうとした。
「うわーっ!!」突然、大和愛人警部は頭を押さえて叫んだ。
「大和さん、大和さん! どうしたんですか大和さん!?」とスペース太郎は血相を変えて大和愛人警部の元に駆け出した。
「うわーっ!!」と大和愛人警部は頭を抱えて叫び続けていた。
つづく




