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平熱基準

「というわけなんだ」と大和愛人警部は素直に過去の秘密を明かした。ソーダ味のかき氷を食らいながらだ。


「うーむ。未来、謎の声、授けよう、またな、か。うーむ。実に不思議だ。視力の方は?」とスペース太郎はワクワク、ドキドキ、キュンキュンしながら言った。


「お陰さんで10.0もある」


「じゅってんぜろだとーっ!?」スペース太郎は立ち上がった。


「だいぶ悪くなったよ。昔は36.5もあった。平熱並みの視力があったんだよ」


「す、す、す、凄いな……」


「見えすぎて困ったもんさ」


「ここに文庫本がある。ちょっと離れるから開いたページを読んでみてくれないか?」とスペース太郎は言って文庫本を持って部屋の隅に移動した。


「どうだ? 読めるか?」


「あゆみはサトシの写真を見ながら濡れていた。溢れ出るほどに濡れていた。呼吸も荒くなり、背中に汗が滲み出てきていた。一筋の汗が太ももを垂れてゆく。あゆみは我慢しきれずに顔を歪ませると熱い吐息が漏れた。胸が高鳴っていくばかりで、あゆみは激しく交歓しながら涙を堪えきれずに体を慰めていった」と大和愛人警部は余裕で声を出して読んでいった。


「マジかよ!! 凄すぎる!! 本当に目が良いんだな!!」スペース太郎は大和愛人警部に駆け寄り握手を交わした。


「目からビームを出したら視力が良くなったと解釈した方がいいな。素晴らしい」とスペース太郎は言って本棚から1冊の本を取り出して読み始めた。


『本来、人間は第三の目があったのだが文明が発達すると共に退化していき消滅してしまったのだよ。もし現代の人間がオープン・マインドならば第三の目を蘇らせる事も可能なのだ。何事も初心忘れるべからずなのだ』とスペース太郎は本を閉じて音読を終えた。


「第三の目とは違うかもしれないがニュアンス的には、かなり近いものがありそうだ。かつて、大和愛人警部には36.5も視力があったとしたならば、何らかの現象が発現したとも思われる。果たして、謎の声による授かりによって目からビームが出るようになったのか? それとも、虐められていた時の追い詰められた心と精神によるバランスが覚醒した事によって出てきたものなのか。大いに研究する価値がある」とスペース太郎は言って大きな虫めがねを懐から取り出し、大和愛人警部の目を覗いた。


「ではスペース太郎さんの話を聞かせてほしい。今、宇宙で、一体、何が起こっているんだ?」と大和愛人警部は言った。


「オフレコで頼む」とスペース太郎は緊張した面持ちで言った。


「ああ、かまわないよ」と大和愛人警部は受け入れた。


スペース太郎は落ち着かずに研究室の中を歩き回るとカーテンを閉めて部屋を暗くした。


「大変な事が起きているんだ」とスペース太郎は唇を震わせて言った。


「大丈夫だ。話してくれ」と大和愛人警部はスペース太郎を落ち着かせるために優しく肩を叩いた。


「実は……」





つづく

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