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スペース太郎の会見

『臨時ニュースです。宇宙科学研究所のスペース太郎所長が緊急事態宣言を発表しました。スペース太郎さんは現在96歳の高齢ですが、かつて月面歩行、火星歩行、水星歩行、木星歩行、金星歩行と5つの星を歩きに歩きまくったという偉大な記録を成し遂げた宇宙飛行士でもあります。あっ、どうやらスペース太郎さんの会見が始まりそうですね。それでは会場にいるリポーターの増山さとしさんに中継をしていますので増山さんに呼び掛けてみます。増山さぁーん?』とアナウンサーの朝井涼太は話した。


『でさでさ、アイツがさ、ウンコしながら寝てんやんの。あははは。バッカだよねぇ〜。めっちゃめちゃ臭かったし。あっはははは』と増山さとしは中継先でスタッフとにこやかに談笑して笑っていた。


『あ~、もぉうっ! た、た、た、大変失礼致しました。どうやら、中継トラブルなのかな? ま、増山リポーターに声が届いていないみたいですね、もう一度、呼び掛けてみますね。増山さーん?』とアナウンサーの朝井涼太は平静を装って言ったが真っ赤な顔は怒りに満ちていた。


『もうさ、アイツを飲みに誘うのは止めよっかなぁ。あはははは。酒は危険だわ。人格を変えるから。あっはっはっは。寝ながらウンコだぜ。参るよな〜。あっはははは』 と増山さとしはディレクターらしい人物の肩を叩きながら爆笑していた。ディレクターも全く中継に気付いてはいなかった。


『ウッソー、小宮が!? バカだね。あはははは』と増山さとしは豪快に笑ってディレクターの肩を叩いていた。


アナウンサーの朝井亮太はブチ切れそうになっていた。


『それはなしだわ。バカだねぇ。おバカだね。あっはははは。アイツは昔からバカだった。あっはははは』と増山さとしは楽しそうに笑っていた。ディレクターもスタッフも愉快に笑っていた。


『おい! 増山!』とアナウンサーの朝井亮太は怒鳴りつけた。


『げっ!! はいはいはーい。こちら増山です。宇宙科学研究所のスペース太郎さんの記者会見があと10分ほどで始まるとのことで会場には大勢のマスコミが詰め掛けています』と増山さとしは慌てて目を血ばしらせて言った。


『はい、ありがとうございました。記者会見が始まりましたら改めて中継します』とアナウンサーの朝井亮太は怒りを滲ませて早く切り上げようとした。


『あっ、スペース太郎さんです! 今、スペース太郎さんが会場に来まして席に着こうとしています』と増山さとしは言うとカメラは真正面からスペース太郎の七分身像を捉えているカメラへと切り替わった。


『えー、お忙しい中、集まってくれて、どうもです。わたくしスペース太郎です』


スペース太郎。常にNASAから熱い視線を浴び続ける日本代表の宇宙飛行士であり宇宙好きのマニアックなイカれた男。謎の宇宙船を誰かから貰って器用に乗りこなす世界最高の宇宙野郎だ。謎の宇宙船とは、つまり、UFOなんじゃないかと世間やNASAから騒がれている。


『えー、実は大変な事が起こりました』とスペース太郎は顔を歪ませて言うと目に涙が溢れてきた。


『えー、地球に危機が、人類に危機が迫っています。ものすごい大きな物体が地球に近づいて来ています』てスペース太郎は一筋の涙を流して言った。


会場はざわめいていた。


『瀬戸内海新聞の記者の足立金次です。一体、何ですか?』と足立金次記者は席を立ち上がって言った。


『えー、ズバリ宇宙船、母船タイプの宇宙船だと思われます』とスペース太郎は冷や汗を噴き出して言った。


会場から失笑や笑い声が響く。


『何がおかしいんだ? この野郎!』と笑われたスペース太郎は怒鳴った。


『どうせ宇宙人やUFOのイカサマたぐいのバカ話なんでしょう? 宇宙人なんているわけないでしょうが。はははは』と誰かが叫ぶと他の記者たちは一斉に笑った。


『今年の選挙は惰眠党だみんとうが完全に負けて真面目党まじめとうが政権を取ったよな? 30年以上も国民を騙し続けてきた惰眠党はな、これで完全に解体になるぞ。話を戻す。真面目党の党首の蒼井ケルアックさんの友達には宇宙人のマンカスティン・チンカスティンという奴がいるんだぞ!』とスペース太郎は強気に話してきた。


『マンカスティン・チンカスティン? そいつはかなり怪しいなー』と先ほどの生意気な記者が言った。


『そう言うと思ったー! 今な、そのマンカスティン・チンカスティンさんが会場に来てくれている。呼ぶぞ。おい、マンカスティン・チンカスティンさーん?』とスペース太郎は言った。


マンカスティン・チンカスティンは少しだけ体を浮かばせて会見場に入ってきた。マンカスティン・チンカスティンは全くの無表情だった。全体的に青く発光しているように見えた。


『こんにちは。はじめまして。マンカスティン・チンカスティンです。宇宙人です』


会場から爆笑の渦が巻く。


『じゃあ宇宙人さんに質問です。あの有名な3メートルの宇宙人を知ってますか?』と生意気な記者は笑いを堪えながら言った。


『はい。今は老化で背が縮みましてね、1メートル78センチの宇宙人です。熊本でラーメン屋の大将をしています。私のいとこなんですよ。熊本に行ったら、是非、ラーメン「宇宙一のラーメン軒」に足を運んでみてくださいね。お薦めは味噌ラーメンなんで宜しくです』とマンカスティン・チンカスティンはペコリンと頭を下げて言った。


『嘘くさっ!』と生意気な記者は言って席に座った。


『とにかく、世界初、宇宙人が居ることを私は証明をした。では本題に入るぞ。巨大な宇宙船が地球に向かっているのは、まず間違いない。このままだと間違いなく地球は、人類は滅ぶ。何とかして地球を守らなければならない。地球軍として世界各国の軍隊を一致団結をして戦いに備えなければならない。ひょっとしたら、負ける可能性は大だと思うが、何もしないで滅ぶより戦って滅んだ方が悔いはない。直ちに準備をしてほしいということを各国の大統領に訴えたいのだ。それと、もう一つ。地球の何処かに隠れている超能力者たちにも助太刀を願いたい。超能力者がいるなら希望の光がある。だがな……』とスペース太郎は言って水を飲むと息を整えた。


『スプーン曲げみたいなアホンダラな超能力はいらん。あんなバッタモンのアホンダラみたいなアホンダラはいらんからな。強い超能力者たちが欲しいんだ』とスペース太郎は力強く訴えた。隣で聞いていたマンカスティン・チンカスティンも頷いていた。


    ◇◇◇◇◇


嵐が丘警察署のテレビの前で、大和愛人警部、早乙女あつ子、服部ジュリランゲーニョ、マスタングのオバさん、デンジャラス炎乃香がスペース太郎の記者会見を見て言葉を失っていた。


「みんな久しぶー、のわっははは。元気してるん? のわっははは!」と扉を開けて若い男が入ってきた。


「ジョニー、静かにしろよ。今、大変な事になっているんだ」と早乙女あつ子は言った。


かぜジョニー。弟と妹と飼っている犬をめちゃめちゃ溺愛している慈悲深い愛を持つ愛の戦士こと風ジョニー。愛の力で敵をぶっ殺すという極端な力を持つぶっ飛んだ男である。悪い奴を直ぐ愛の力で殺すというのが彼の流儀であり能力なのだが、周りの人間は極端な思考回路を持つ風ジョニーに対して誰も深入りはしないように気を付けていて、付かず離れずの関係を保つようにしているようだ。


「大和警部?」


「何だ? ジョニー?」


「可愛い弟と妹に会いたくなってきたので帰っていいですか?」


「うん、帰れ」


風ジョニーは大和愛人警部に頭を下げると、全力疾走で部屋から出ていった。





つづく





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