渋滞
「おい! マスタングのおばさんよ! うるさい!! 黙らっしゃい!!」と大和愛人警部は黒の覆面パトカーに備えられているメガホンで怒鳴り返した。
「な、な、何だと民間人! 何だとコラ!! 何で知ってる!? やったるぞ!! やってもいいのか? この野郎!! 貴様、なにもんだ? 場合によっては殴るぞ!!」とマスタングのおばさんもメガホンで言い返してきた。
「大和だ!」
「何だって!? トマト? こんな時にリコピンかい?」
「大和だっつーの!!」
「えっ!? 港? テメェ密売だな! 薬物の密売で港に行く気だな!! この野郎〜、やったるぞ!!」
「大和だって言ってるだろうが!! 何回言わせんだ!!」
「えっ!? ジェームス・ディーン!? ナメた事ばかり言いやがってよ!! ジェームス・ディーンなわけないだろうが!! よし、今からやるから!!」
「大和だって、大和だって!」
「何!? ジョン・レノン!? テメェ、この野郎!! 今からやるから!!」とマスタングのおばさんは怒鳴り散らすとマスタングから降りて大和愛人警部が乗る覆面パトカーに向かって肩を怒らせて歩いてきた。マスタングのおばさんは覆面パトカーの運転席のドアを開けた。
「テメェこの野郎!! さっきから、あっ!? や、や、や、大和愛人警部じゃないですか!!」とマスタングのおばさんは青ざめた顔をして敬礼をした。
「マスタングのおばさん、お勤め、ご苦労さん!」と大和愛人警部も敬礼を返した。
マスタングのおばさんの後に付いてきた30人の青バイ警官もビビって敬礼をしていた。
「青バイも、お勤めご苦労さん!」と大和愛人警部は言った。
「マスタングのおばさん、この渋滞、一体、何の騒ぎなんだ?」と大和愛人警部は連なる赤いテールランプを見ながら言った。
「なんでも、この先で事件があったようで。しかも、そこの交差点内に停まってるダンプカーの運転手が暴れてるという連絡が嵐が丘警察署に届きましてね」とマスタングのおばさんは言って交差点を指差した。大和愛人警部は交差点を見た。
「この野郎!! 今から地面を叩き割ってマントルを取り出してやるからな!!」と錯乱したダンプカーの運転手は言ってバットを振り回していた。
「マントルだって? 何だアイツは?」と大和愛人警部は呆れた顔をして言った。
「地球は僕らの宇宙船だって話じゃないか!! この野郎!!」と錯乱したダンプカーの運転手は汗まみれのシャツを脱ぎながら言った。
「もう悪い政治家を早くどうにかしろよ!! 警視庁、頑張れ! 悪い奴等を捕まえてくれ! 頑張れ警視庁! 何で俺がお昼の弁当220円で、アイツらは3万円の弁当なんだよ!! 寝てばかりのクセに!! 頭にくるよな!! こっちは朝から晩まで血が出るほど働いてるのによ!! 今からマントルを取り出してな、マントルをアイツらに、ぶつけてやる!!」と錯乱したダンプカーの運転手は怒鳴り散らして言った。
「あのおっさん、何なんだ? マスタングのおばさん、あのイカレポンチの運転手はマスタングのおばさんに任せる」
「殺していいですか?」
「ダメだよ!! マスタングのおばさん、何言ってんだよ!!」
「わかりました。じゃあ、あの運転手を殺しても大丈夫ですか?」
「言い方を変えてもダメだ!! イカレポンチの運転手に抵抗されたら意識不明の一歩手前になるくらいの匙加減でボコボコにしてやれ」と結局、大和愛人警部も恐ろしい事を言った。
「わかりました」とマスタングのおばさんは言って交差点で騒ぐダンプカーの運転手に向かって歩いた。
「青バイたちは、俺もかなり急いでいるから渋滞の道を開けて欲しいんだ」と大和愛人は言うと青バイのリーダー淡路武蔵は「お安い御用です。おいやれ」と言って青バイのメンバーたちに目配せをした。29人の青バイたちはバイクのエンジンを爆音で吹かすと渋滞する車に向かって走り出し、停まっている車を蹴っていき、フロントガラスを金属バットで次々と叩き割っていく。渋滞の車は慌て左右によけていった。大和愛人は青バイたちにお礼を言うと覆面パトカーを走らせた。
一方、マスタングのおばさんと交差点に停まるダンプカーの運転手は睨み合っていた。
つづく




