愛ある大和愛人警部
大和愛人警部と早乙女あつ子はキャバクラ『パック』の店長、中村喜代太郎の計らいにより個室へと案内されて大和愛人警部と早乙女あつ子の二人だけにしてくれた。
「大和愛人警部、何故、ここへ来たんですか?」早乙女あつ子は動揺していた。
「早乙女の働きぶりが心配でな。早乙女のキレやすい性格を思えば、早乙女が、どこまで自分で耐えて抑えて堪えてキャバ嬢としての仕事に専念できるのかが大事になってくる。無茶はしていないかと気になってな。案の定、職人の手作りによる高級皮使用のムチを荒れ狂ったように振り回して、サディスティックな顔つきになっていた」と大和愛人警部は言ってパイプ椅子に座った。
「す、すみません」
「早乙女、セクシャルハラスメントされて辛い思いをしたのは分かる。だがな、先ほども言ったが冷静にいこうじゃないか。相手は単なるバカだ。バカを相手にムキになるとバカな相手と同じレベルになるということだ。早乙女はバカにはなりたくないだろう? バカはバカだからバカになるとバカみたいになってしまうのでバカ誕生みたいで恥ずかしいだろう?」
「は、はい」
「早乙女、絶対にバカを相手にするなということさ。どんなに嫌な事を言われても侮辱されたり差別されたり傷つけられてもバカを無視するんだ。いいかい? バカがセクシャルハラスメントをする。バカが戦争をするんだ。頭の悪すぎるバカの中の本家本元のバカが戦争をするんだ。戦争反対。ラブ&ピース」
「は、はい」
「早乙女、自分を俯瞰してみる力を身につけろ。それが出来るだけで飛躍できるからバッチグーだ」
「は、はい。わかりました」
「ところで早乙女」
「なんですか?」
「もの凄くムチさばきがうまくなったよなぁー!」大和愛人警部はニコニコしながら褒めた。
「とんでもないです」
「いやいや凄いムチさばきだったよ。俺はムチさばきが出来ないからアレだけクオリティーの高いムチさばきを見せられたら感服しちゃうなー」
「ありがとうございます!」
「よし、早乙女、準備万端だ。今から大事な話をしたいが、一旦、嵐が丘警察署に戻るぞ」
「大和愛人警部、了解しました」
キャバクラ『パック』を出た大和愛人警部と早乙女あつ子は小雨が降る中をしばらく無言で歩いて大きな通りに出ると停めてあったパトカーに乗り込んだ。運転は警察官の高木聡だった。
パトカー内でも3人は無言だった。だんだんと小雨が強くなってきた。ワイパーの動きを見つめる大和愛人警部。黙って窓の外を見つめる早乙女あつ子。
嵐が丘警察署。
大和愛人警部と早乙女あつ子は嵐が丘警察署の3階にある『特別室』にノックをしてから入っていた。
『特別室』には牛島チョコミントがいた。牛島チョコミントは緻密な分析をしてから捜査をする分析のエキスパートの男だ。チョコミントが好きな母親に命名されたから名前がチョコミントだそうだ。
牛島チョコミントは黙って座っていた。全身から怒りのようなピリピリしたオーラを発していた。黄緑、いや、泥まみれの葉っぱみたいな汚い緑のオーラ、椎茸が入ったゲロみたいな色のオーラとも言えようか。
大和愛人警部と早乙女あつ子も椅子に座ると大和愛人警部が話し出した。
「早乙女、明日の午後3時に、Deliciousアルマジロマンションの509号室に住む高木裕太という男の部屋に言ってキャバ嬢の面接をしてこい」と大和愛人警部は言った。
「面接の約束はできているんですか?」と早乙女あつ子は心配そうに聞いた。
「いや。ここで密かに俺が計画した作戦に従ってもらいたい」と大和愛人警部は言って『特別室』に設置されている自動販売機で牛乳パックを買った。大和愛人警部は牛乳を飲んだ。喉仏が激しく上下に動いていく。
『さ、作戦ですか!?』と早乙女あつ子は言って大和愛人警部が奢ってくれた牛乳パックを受け取った。
つづく




