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立てこもり事件発生

真夏の崖で、ちゃぶ台の前に座る全裸の男が中学の英語の教科書、NEW HORIZONを読んで勉強をしていた。しばらくして読むのを止めると瞬きを繰り返してから本物の遥かなるホライゾンを見つめて目を休めた。


スマホが鳴った。


「はい、もしもし? えっ!! なに!? 3日前から若い女が山奥にあるロッジで拉致されているようだというタレコミがあっただと?! 毎晩、ロッジから悲しい叫び声が聞こえてくるだって?! 警察がロッジの周りを包囲していて突入の準備中に狙撃されてしまい、警察官の一人が意識不明の重体だと?! 重体の警察官は一体誰なんだ? な、なんだって?! 木之内大輔だと?! クソッ!! 今から行く!! どこの山にあるロッジなんだ? なに?! 万皮山まかやまにある万皮ロッジ? よし、わかった!! すぐ行く!!」と大和愛人警部は言ってスマホを遠くに投げ捨てると真夏の海に頭から飛び込んだ。大和愛人警部は背泳ぎで荒れ狂う海を泳いだ。


松元正大まつもとまさひろ! 無駄な抵抗は止めて出てきなさい!」と警察官はメガホンで言った。


万皮ロッジの5号ロッジの窓から松元正大は顔を出して外の様子を眺めていた。松元正大は過去に2度の性犯罪で逮捕されていた。松元正大は職場でもセクハラをしていて過去に5回も会社を首になっていた。性犯罪者は何度も性犯罪を繰り返す。アメリカでは性犯罪者の足首にGPSを永久に装着する義務があるくらいだ。それほどまでに性犯罪は重罪なのであった。


「うるせーよ!! クソ警察ども!! 早く逃走用の車を用意しろ!! 昼飯もだ!!」と松元正大は怒鳴り返すと割れた窓からライフル銃をぶっ放した。弾丸はパトカーのフロントガラスを貫いた。


「た、た、退避せよー!!」とメガホンを持つ警察官が仲間の警察官に叫んだ。警察隊は150人もいた。


万皮ロッジの5号ロッジでは松元正大と拉致された女性、名前は伏せておくが、仮名、えり子と睨み合っていた。


「お願いだから早くここから出して!!」とえり子は悲痛な声で言った。


「ダメだ。オラと付き合ってくれると約束しない限りはダメだ」と松元正大は言った。


「貴方とは付き合えないって何度言ったらわかるのよ! スーパーのレジで働く私に声を掛けてくれるところまでは許せる範囲だったけれど、しつこいアピールをしてきたり連絡先まで教えてくれだなんて、せがんで言ってきてさ、失礼にも程があるわよ! もう早く離してよ!」とえり子は言って窓に近寄ろうとした。


「この野郎! 勝手に動くな!」と松元正大は言うと、えり子の顔をライフル銃で殴った。


「痛い!!」とえり子は言うと口から血が吹き出た。えり子の顎の骨が骨折してしまい口が閉じられなくなってしまった。


「あー、可哀想にな。オラの言うことを聞いていれば綺麗な顔に傷は付かなかったのによ。ははははは。残念」と松元正大は笑いながら言うとえり子の髪の毛にツバを吐いた。


えり子はその場に座り込んでしまった。


山頂にタクシーが停まった。


「運ちゃん、こんな山奥まで本当にどうもありがとう。釣りはいらないよ。ご苦労さん」と大和愛人警部が現場に到着した。


「ああ、大和愛人警部! ご苦労さまです!」と警官隊を率いる川藤肇かわとうはじめは敬礼をしながら言った。


「川藤、お疲れさん」と大和愛人警部は敬礼を返した。


「で、どんな様子なんだ?」


「先ほど、松元正大容疑者がロッジから、こちらに向かってライフル銃を一発発射してきました。幸い、怪我人は出ていません」


「わかった。あとは俺に任せろ」と大和愛人警部は言うと万皮ロッジ5号ロッジに向かって走っていた。


松元正大は窓の外を見た。


全裸の男が走ってきた。


松元正大は目を擦ると、もう一度、全裸の男を確認した。


「な、なんなんだ?! あの野郎は?」


5号ロッジの扉を叩く音がした。


「松元正大、開けろ!!」


「誰だ?!」


「いいから開けろ!!」


「逃走用の車が来たのか?」


「そうだ」


「昼飯もか?」


「ああ、そうだ。早く開けてくれ。松元正大が許可の書類にサインをしてくれたら逃走用の車は渡せるんだ。俺は裸だ。武器は無い」


「分かった待ってろ。おい、開けてやれ。余計な事だけはするなよ。もし、おかしな真似をしたら腹に穴が開くぞ!」と松元正大は言うとえり子の背中にライフル銃を突き付けて扉まで行かせた。


えり子は扉を開けた。


「きゃー!!」とえり子は言って顔を横に向けた。


「お嬢さん、失礼。全裸は隠し事がない自分を誇るためにしているのです。裸の男、ここにあり。裸の男、正義の使者なり」と大和愛人警部は言うとロッジの中に入っていった。


「おい、書類は? 全裸なら書類なんてないだろうが!」


「松元正大、書類は俺の背中に貼ってある。ボールペンか何か書くものはあるのか?」


「ここにある」松元正大は胸ポケットからボールペンを取り出して振った。


「その前にだ。人質を解放してほしいんだ」


「それはできない」


「なぜだ?」


「人質はオラの女だ」


「松元正大、どういう意味だ?」


「違います。私、コイツに付きまとわれていたんです!」とえり子は顎を押さえながら言った。


ドゴーン!!


松元正大は天井に向かってライフル銃を撃った。


えり子は耳を押さえてしゃがみ込んだ。


大和愛人警部は天井に空いた穴を見ていた。


「なるほど。つまり付き合ってもらえないと分かって拉致したという訳か。松元正大、お前はめちゃくちゃダサい奴だな。こんなにダサい奴、初めて見た。見た目からしてダサいしモテない要素がタップリだ」と大和愛人警部は拍手しながら言った。


「なんだとテメェ!!」


「松元正大、自分勝手な男に女がついていくと思っているのが既に間違いの始まりだ」


「な、なんだと?!」


「お前よ、性犯罪者だろ? 性犯罪者は生きている間も死んでからも性犯罪者としてのレッテルを貼られて死後も生き続けるんだ。つまり貴様には永久に死は訪れない」


「だ、だから、な、なんだよ?」


「だから、俺は、早めに、お前を、こうしてやる事が1番最良の選択なんだよ!!!! 大和愛人ビーム!!!!」と大和愛人警部は叫ぶと目からビームを出して松元正大を完全に消し去ってしまった。間違いなく大和愛人は超能力者だと思うよ。


えり子は驚いて松元正大が立っていた場所まで歩み寄った。


「えっ?! アイツ、き、消えたの?!」とえり子はくすぶっている煙と黒焦げの跡を見ながら言った。


「さあ、もう、お嬢さんは自由だよ。美しい世界に向かって走りだそうよ!」と大和愛人は言ってウインクをした。


えり子は頷くと外に出ていった。えり子は待ち構えていた警察官たちに連れられてパトカーに乗ると病院に行ってから嵐が丘警察署まで運ばれていく事になった。


川藤肇指揮官がロッジの中に入ってきた。


「愛人警部、さすがです!」


「ありがとう。川藤、報告書を頼む」


「はい、了解です!」


「ところで、木之内大輔は大丈夫なのか?」


「まだ危ない状態が続いています」


「そうか……」


「でも、愛人警部、大丈夫ですよ。アイツはタフですから」


「そうか……。祈るしかないな」


「そうですね」


「よし、またな」


「はい、愛人警部、お疲れ様でした。ありがとうございました!」


大和愛人警部は万皮ロッジを出ると口笛を鳴らした。


警察隊150人が一斉に大和愛人警部に向かって敬礼をした。


大和愛人警部は敬礼を返すと全速力で走り去っていた。





つづく

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