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停滞するな、前に行くんだ

早乙女あつ子が担当した客の松山が「体がもげる」と訴え続けたので早乙女あつ子はタクシーを呼ぶことにした。早乙女あつ子はタクシーが来る前にお店の支払いを求めたが「すみれちゃん、悪いけど付けといて」と松山が無理なことを言ってきたので、ブチ切れた早乙女あつ子は隠し持っていた愛用のムチでタクシーが来ると思われる時間の約10分間の間、休みなくムチでシバき倒した。周りにいたキャバ嬢やお客様は何らかのイベントと勘違いして拍手喝采を送りながらスマホで撮影していた。松山は泣きながら止めてと叫んだがお客様やキャバ嬢たちが「もっとやれ!」と言ってきた。早乙女あつ子は無表情でムチを振り回していた。だが、いくら待ってもタクシーは来なかった。早乙女あつ子はタクシー会社に送迎の電話をしているフリをしただけだったのだ。支払いを済ませない客は客ではない。難民を装う不良外人と同じ悪い輩と変わらないのだ。悪い奴は懲らしめて追い出せばいいというのが早乙女あつ子の考え方だった。早乙女あつ子はあらゆるテクニックを披露しながら松山にムチを振り落としていく。次第に早乙女あつ子の中で何かが変化してきた。つまりだ、ムチを振り落とすテクニックに進化が現れてきたのだ。華麗なムチテクニックに魅了されるキャバ嬢たちとお客様たち。早乙女あつ子は新たな技をドンドン出していく。松山は「体がもげる!」と言って泣いていた。「泣いても無駄だよ! この糞豚野郎のゲス野郎!」と早乙女あつ子は叫び返してムチを力一杯に振り落とす。


「あん!」と泣きながら松山は叫ぶ。


「よくも私にセクハラをしたよね。慰謝料を払いな。慰謝料は500万円だよ!」と早乙女あつ子は叫んだ。


「払えません!あん!あん!」とムチで打たれ続けている松山は拒否を示した。


「ここのお店の支払いは?」と早乙女あつ子は怒鳴ってからムチを振り落とした。


「あん!あん!痛い!あん!」


「この野郎、聞いてるのかい?」と早乙女あつ子は怒鳴ってムチを激しく振り回した。


「痛い!体がもげます!」と松山は泣き叫んだ。


「そんなの知らんよ! 店の支払いと私への慰謝料だよ!払うのかい?」


ビシッ

ビシッ

ビシッ


「あん!痛い!体がもげたら責任取れますか?」


「もげるまで振り落としてやろうか?」


「止めて止めて!でもこのままだと体がもげます!」


「チッ、わかったよ」と早乙女あつ子は言って素早く松山の手足をロープで縛ると松山の顔をビンタしだした。


「痛い痛い」松山は泣きながら言っていた。


「店の支払い、慰謝料。払うか払わないかの話なんだよ! 払うのかい?」


「お店は今すぐに支払います。慰謝料は。ちょっとムリです」


「アンタね、私の胸を触りたいだとか、私の母親の胸まで話に出してきたよね? ナメとんのかい! 払いな!! 待ってやるから払いな!! 500万だよ!」


「500万円じゃなくて5000円にマケてくれません?」


「こ、この野郎!!」


早乙女あつ子は松山の頭にビール瓶を振り落とそうとした。


「早乙女、止めろ!!」


大和愛人警部がビール瓶を素手で取り押さえた。


「あっ、や、大和愛人警部! お疲れ様です!」慌てて早乙女あつ子は敬礼をした。


「早乙女、ヤリ過ぎだ! だが気持ちはわかる」大和愛人警部は優しく言った。


「大和警部、この男、私のオッパイに執着していてムカついています。店の支払いはしないわ、私への慰謝料も支払わないわとなれば、体がもげるまでムチを使うしかありません!」と早乙女あつ子は大和愛人警部に訴えた。


「早乙女、わかる。だが、こんなことで、いちいち傷つくな。早乙女はプロフェッショナルなんだぞ。プロフェッショナルは冷静でなければプロフェッショナルではないのだ。プロフェッショナルなら常に毅然としていろ。何を言われても相手にせず、我関せずだ。プロフェッショナルは常に未来を見ているものなんだ。こんな一時的な不快感のために早乙女のプロフェッショナル精神を停滞させてはならんよ。早乙女は昔からムチを振り回す女王様だろう? 女王様なら女王様らしく毅然としろ! それが女王様のプロフェッショナルであり本職の方のプロフェッショナルでもあるのだ」と大和愛人警部は言った。


話を聞いていたキャバ嬢No.1のエリコは泣いていた。犯人はヤスじゃないと世間に訴え始めた零細企業の社長、山本珍太も感銘を受けて泣いていた。





つづく

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