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パック

「早乙女、仕事の話があるんだ」と大和愛人警部は言って椅子に座った。


「なんでしょうか?」早乙女あつ子はイカの塩辛を食べながら言った。


駄性党だせいとうの党首、松元雅広まつもとまさひろ議員を知ってるか?」と大和愛人は言って鼻くそをほじった。


「確か、変態で変質者で性犯罪者疑惑のある頭が腐った議員ですよね?」と早乙女あつ子は軽蔑の眼差しを浮かべて言った。


「そうだ。少し付け加えるならば、ヤリチンの腐れ外道のゲス野郎だ」と大和愛人は言って軽蔑の眼差し浮かべた。二人して軽蔑の眼差しで見つめ合っていた。辺りはヒンヤリとしていた。軽蔑した空気感が漂っていたと言ってもいい。


「そいつがどうかしましたか?」と早乙女あつ子は言ってとうもろこしを食べた。


「Deliciousアルマジロマンションというマンションの509号室に住む高木裕太という名前の男の部屋で、キャバクラ『いちごソーダ』という店が営業されている。複数の10代のセーラー服の女子高生がキャバ嬢として働かされているとのタレコミを受けた。松元雅広議員が通い詰めている」と大和愛人警部は軽蔑的な声音で話した。


「また面倒くさい話だなぁ〜。また、あの馬鹿野郎の登場ですか。松元雅広は面倒くせーな。本当にしつこいし、馬鹿丸出しだよね」と早乙女あつ子は軽蔑的な話し方をして言った。辺りは軽蔑的な空気に包まれてピリピリとしていた。


「そこでた。早乙女あつ子に頼みたい。潜入捜査としてキャバ嬢になってキャバクラ『いちごソーダ』に勤務してもらいたい」と大和愛人警部は言って両方の鼻の穴に指を入れて奥に詰まった鼻くそを取ろうと必死になっていた。大和愛人の顔は気の抜けた顔をしていたが真剣に鼻くそをほじっていた。頑張れ大和愛人警部! 大和魂で鼻くそを取れ。


「わ、私がですか!? 何で私なんですか? 他に頼める人はいないんですかね?」と早乙女あつ子は言って再びイカの塩辛を食べた。


「早乙女はめちゃめちゃ美人だろう? 美人の早乙女にしか頼めない。ブスには無理な話だ。ちなみに差別ではない。区別だ」


「いや〜、めちゃめちゃ面倒くせーな」と早乙女あつ子は心の声をハッキリと口にした。


「任せたぞ」と大和愛人は言った。


「いやいや、キャバ嬢なんてできないです」


「これは正義の命令だ!」


「大和警部、わ、わかりました」


「とりあえず、知り合いがいる、キャバクラ『パック』に話をつけてみるから、そこでキャバ嬢としての知識と振る舞い、仕事に対するマナーやルールの基本を学んできてほしいんだ。キャバクラ『パック』は、今日、1日だけの研修と仕事だと思ってくれ」と大和愛人警部は言って机の前にある黒電話のダイヤルを回して電話を掛けた。


「もしもし?」


「はい、ありがとうございます。キャバクラ『パック』で御座います」


中村喜代太郎なかむらきよたろうか?」


「あっ、大和愛人警部でしたか?」


「そうだ。早速だが、喜代太郎、今夜、キャバクラ『パック』に1日だけ働かせてほしい者がいるんだ。警察の捜査に必要な任務なんだ。キャバ嬢としての基本や全ての極意を教えてやってほしい。3時間ほどキャバ嬢として勤務させてやってくれないか?」と大和愛人警部は話しながら、イカの塩辛を食べている早乙女あつ子を見ていた。


「わかりました。で、相手の名前は?」と中村喜代太郎は言った。


「早乙女あつ子だ。では、午後8時に、そちらに伺うからよろしく頼むよ」と大和愛人警部は言って黒電話を切った。


「私にキャバ嬢なんかできやすかねー。SМ嬢ならできますがね。ハイスクールの頃からムチを振り回して暴れていましたからね」と早乙女あつ子は言って梅のおにぎりを食べ出した。


「早乙女、ムチを持ったキャバ嬢として今日は出勤しろ。万が一、危険な目に合ったら得意のムチさばきで相手をヤッちまえ!」と大和愛人警部は言って、ムチを振り回して調教する真似を始めた。


「このメス豚! 私を女王様、もしくは愛の女神様とお呼び!!」と大和愛人警部は言ってムチを振り回わす真似をした。


「大和警部、ムチさばきが違います。こうやるんです」と早乙女あつ子は言ってカバンから黒光りした高級なムチを取り出すと距離を開けてムチを激しく振り回し始めた。ビュンという空気を切り裂く音にムチ使いとしてのキャリアと技術を感じる。まさにムチ職人のレベルであり高度な技術を持つムチ界のムチ女王的なハイレベルなムチ使いだった。


「この野郎!! 脂汗野郎!! リストラ野郎めが!! お前みたいなクズ人間は早くクソして寝やがれ!! このインキンタムシ野郎!! お前みたいなゴミクズは今すぐにこうして成敗してやるからね!! 死ね、ちんカス野郎!!」と早乙女あつ子は本気のスイッチが入ってしまったために、腹から出る野太い声と共に華麗なムチさばきを披露した。ビュンビュンビュンと空気が切れる音、激しくムチを床に叩きつけて、バチンコ、バチンコと大きな音が響き渡る。


早乙女あつ子はバック転をしてから天井に頭が付くほどジャンブしてからムチを振り下ろした。


タイミング悪くムチは大和愛人警部の背中に直撃してしまった。


「いやーめちゃくちゃ痛い!! 背中が、めちゃめちゃ凄んごく痛いよー!!」と大和愛人警部は叫んだ。


「あっ、大和警部! ごめんなさい!」と早乙女あつ子は言ってムチを放り投げて大和愛人警部のもとに駆け寄った。 


「早乙女! ごめんで済むなら警察は要らない!! フッ、なんてね。なんてね。冗談さ。ははははは。大丈夫だよ。ピーィ、ピーィ、ピーィ」と大和愛人警部は優しく言って口笛でエーデルワイスを吹いた。


「エーデルワ〜イス、エーデルワ〜イス」と早乙女あつ子は口笛に合わせて熱唱した。





つづく



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