大和愛人警部登場
風の中に佇む男がいる。男はスマホをを耳に当てた。
「何だって?! 女が?! わかった、待ってろ!!」と男は言ってスマホを遠くに投げ捨てると真夏の海の中に頭から飛び込んだ。男が飛び込んだ時に買ったばかりのブリーフのパンツが脱げて海面に浮き上がってしまった。男は背泳ぎで荒れた海を泳いでいく。泳ぐ度に男の股間が何度も海面から浮き上がるのだが男は全く気付いていなかったし気にもしていなかったし。
「きゃ〜!!」
大都会の真ん中で女の叫び声が轟いた。
「たすけて〜!!」
女は叫んだ。
恐怖に歪んだ顔が悲しい。
「うるさい!! 死にてぇのか!!」
刃渡り10センチのナイフを女の首に当てた男は女の髪を引っ張った。
「痛い!!」
女は首を傾けて叫んだ。
ナイフを持つ男は松素雅弘。現在、無職でアルコール依存症のDV気質な男だ。毎日、この人質の女から金をせびってはパチンコに行ったりギャンブルをしたりするクズ男だ。女の名前はプライバシーのために控えておく。
大都会のお昼休み、ビルが並ぶ憩いの場所で男は女を人質に取って暴れているのだった。サラリーマンやOL、野次馬たちが辺りを取り囲むようにして事の推移を見守っていた。
10人の警察官が現場にいた。警察官の1人がメガホンで松素雅弘に話し掛けた。
「松素、落ち着け。これで何度目だ? いい加減に大人になれよ!」と警察官の木之内太輔は言った。
「うるせーよ!! この女を殺してやる!!」松素雅弘は絶叫して持っているナイフを振り回した。
その時、1台のタクシーが停まった。
「ありがとう。ごくろうさん。釣りはいらんよ」と男はタクシーの運ちゃんに愛想よく言った。
「あっ!! 愛人警部、ご苦労さまです」と警察官の木之内大輔は敬礼をした。
「うむ。ご苦労さん」と男は敬礼をした。
大和愛人。年齢は秘密。名警部である。たくさんの事件を解決してきた伝説的な警部である。常に体温が高いためと被れやすい体質のために全裸で過ごすことを警視庁に特別に許可された腕利きの名警部だ。
サラリーマンやOLたちや野次馬たちは全裸の大和愛人警部を見てどよめいていた。
「俺に任せろ」と大和愛人は言うと無抵抗を示すために両腕を上げてナイフを振り回す松素雅弘に向かって歩いた。
「貴様!! 止まれ!! 何で全裸なんだよ!! バカにしているのか?」と松素雅弘は怒鳴った。
「やめろ!! ナイフをよこすんだ!!」と大和愛人は怒鳴り返した。
「うるさい!!」松素雅弘はナイフを人質の女の首に強く当てた。女は恐怖で気絶しそうになっていた。
「いいか松素雅弘、人間はな皆、ひとりぼっちなんだ。ひとりで生きてひとりで死んでいく。俺を見てみろ。何も持っていないだろう? 人は裸にならなければならないんだよ」と大和愛人は語り掛けた。
突然、大和愛人は強い尿意が出てきた。我慢の限界に達していたが、ここで小便をするのは非常に人間としては恥ずかしい事なので耐えていた。
ビーッビーッビッビッビ
交差点でクラクションが鳴り響いた。
大和愛人はクラクションの音にビックリしちゃって体をビクンとさせると両腕をあげたまま立ちションをした。
「キャー!!」と人質の女は叫んだ。
「貴様、完全にナメているよな!!」と松素雅弘は叫んだ。
「け、警部?!」と木之内大輔警察官は心配そうにと呟いた。
サラリーマンやOL、野次馬たちは信じられない思いで大和愛人警部を見ていた。
「いいか、松素雅弘、女には優しくしないとな。女は大切にしないとさ。お前の行動は許されないんだぞ。女は都合のいい道具でも性のはけ口でもないんだ。お前だって女から生まれてきた人間なんだぞ。女を尊重して対等に扱い人権を認めて思いやりを持って女と付き合っていかないと男じゃないんだぞ」と大和愛人警部は立ちションをしながら説得をした。随分と長い立ちションだった。オシッコが溜まっていたようだった。
「さあ、ナイフを俺によこすんだ!」と大和愛人は右手を差し出しながら松素雅弘に近付いていった。大和愛人警部の玉金が風に揺れていた。夏の風は爽やかだ。
「く、く、来るなよ!!」松素雅弘はナイフを女に当てたまま叫んだ。
大和愛人警部は立ちションをしながら近付いていく。なかなか立ちションが終わらないでいた。立ちションをしながら大和愛人警部はカッコつけた顔をして歩き続けた。大和愛人警部の玉金が風に揺れていた。夏の風が微笑んでいるようだ。
「女を殺してやる!!」と松素雅弘は叫んでナイフを振り上げた。大和愛人警部は立ちションをしたまま空を高く飛んだ。
「な、なに?! 飛んだ!?」と松素雅弘は驚いて空を見上げたが大和愛人警部は既にいなくなり松素雅弘の背後に回って持っていたナイフを素早く取り上げると目からビームを出して松素雅弘を完全に消し去った。
人質は無事に解放された。
大和愛人警部の立ちションは終わった。
周りにいたサラリーマンとOLと野次馬たちは何が起こったのか全く解らないでいた。
「さすが名警部だ」と木之内大輔警察官は呟いた。
大和愛人は手を上げるとタクシーが停まった。
「報告書は君に任せた」と大和愛人警部は木之内大輔警察官に向かって叫んだ。
「はい、解りました」と木之内大輔警察官は敬礼をした。
「運ちゃん、近くに大衆浴場かスーパー銭湯はあるかい?」と大和愛人警部は昔からの知り合いみたいにタクシーの運転手に言った。
「あるにはあるけど入る前から全裸とは気が早すぎるなぁ〜。財布は持ってるの?」とタクシーの運転手は大和愛人警部に向かって言った。
「一旦、嵐が丘警察署に行ってくれ。財布を取りに行く。俺嵐が丘警察署のは大和愛人警部だ」と大和愛人警部は言って木之内大輔警察官を呼んだ。
「木之内くん、話してくれたまえ」と大和愛人警部は言った。
「はい、わかりました。運転手さん、この方は本物の警部です。嵐が丘警察署までよろしくお願いします」と言って敬礼をした。
「わかりました」とタクシーの運転手はニヤニヤしながら返事をした。
「またな」と大和愛人警部は言って木之内大輔警察官にピースをした。
大和愛人警部は窓から手を出して敬礼する警察官たちに手を振った。
つづく