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第3章 第3話 名刺

テレビ局の役員室、松岡と桐生が並んでモニターを見つめていた。



「面倒なことになってきたな。」


松岡がぼそりと呟く。



画面には、東堂と鐵角の討論が映し出されている。

二人は地方政治の腐敗を議論しながら、新たな政治メディアの可能性について話していた。



「視聴者は熱狂している。鉄角は知事になったばかりで強気だが、東堂はもっと先を見ているな。」


桐生は腕を組みながら、静かに観察していた。



「このままでは大和テレビはただの東堂の道具だ。スポンサーの信頼は戻らず、RePurgeの影響力だけが肥大化していく。」


松岡の声には苛立ちが滲んでいる。



「確かに、東堂は世論を動かす力を持っている。」


桐生はモニターの数字を見て分析する。



「しかし、奴のスタイルには限界がある。視聴者の熱狂は一時的なものだ。」



「限界だと?」


松岡が眉をひそめる。



「メディアは人気商売ですからね。世間が熱を冷ませば、あとはどうなるか。」


桐生はスマホを操作しながら続ける。



「問題はその熱がどこで冷めるか、です。」



松岡は煙草を取り出し、ライターを指で弾いた。




「なら、冷める前に潰すしかないな。」



桐生は何も言わずただ、東堂と鐵角のやり取りをじっと見つめていた。






堀口は、静かなオフィスの中で資料を見つめながら電話をかけている。


「はい、堀口です。ああ、あの件ですが、進展はありましたか?そうですか。それなら、もう少し詰めてみてください。」


堀口は少し肩をすくめながら、資料の上に目を戻す。

電話を切った後、思案しながら座り込む。


「やっと、見つけたぞ。」


机の引き出しを開け、何枚かの資料を取り出す。

その中には、以前のパワハラ問題に関する詳細なメモが含まれている。

大和テレビの中に入り込めたからこそ近づけた。


堀口はメモを見つめ呟く。


「このネタがあれば、追い込む手段が揃う。RePurge。

あの番組は、今やこれ以上ない圧力をかけられる舞台だ。」


堀口がメモを机に戻すと、静かに立ち上がり、部屋の隅にある電話を手に取る。


「今すぐ、情報を整理して、動ける準備をしてくれ、会いに行きたい。情報を引き出す。」


電話の向こうで答える声を聞きながら、堀口は冷静に頷き、電話を切る。


「今がその時だ。」


敵は大きい、使えるものは全て使う。その為にInovexに所属までしたのだ。



「使わせてもらうぞ、東堂。」


堀口は決意の固まった表情でじっと闇を見つめた。






堀口は静かなカフェに座っている。 目の前には、若い男。

彼の表情には、過去の出来事に対する怒りと無念さが滲んでいる。



「君が何を知っているか、正直言って分かっているつもりだ。君が大和テレビを辞めることになったあの時、起こっていた事実を君の口から聞かせてくれないか?」


堀口は彼に断りボイスレコーダーのスイッチを入れる。



「彼女を庇ったことで、俺はターゲットにされた。あの男が俺をおもちゃにした。

上司に言ったって誰も聞く耳を持ってくれなかった。だから、辞めた。でもそのせいで、彼女は、」



堀口は静かに首を振る。



「君のせいじゃない。絶対に。その考え方は止めるんだ、君が、壊れてしまう。」



男は顔を上げ、堀口を見つめる。



「俺が壊れるって?いや、もう壊れてるんだよ、俺は。あんな現実を見せられて、ただ消えていった彼女を思い出すだけで苦しくてたまらない。

でも、何もしなかったわけじゃない。あれから俺も動いて、あのパワハラ野郎に少しでも痛い目を見せられればと思ってたんだ。」



堀口は頷く。



「その痛みを共有する相手が必要だろう?君の今持っている情報、その全てを俺に託してくれないか、君が、そして彼女が受けたものの報いを与えてやらねばならない。」


今度は男がゆっくりと頭を振る。



「ダメなんだ。俺は思ってた。って言っただろう?勝てないんだよ俺やアンタじゃ。」



「どういうことだ?君に何があった?」


堀口は怪訝な表情を浮かべ、項垂れる男に問いかけた。







玲奈は慎重に足を進めた。

此処は大和テレビの社内ではない。仕事で何度か使ったことはあるが、こうして私的な目的で来たことはない場所だ。ホテルの廊下を歩くたび、ふかふかの絨毯が沈み込む。


その感触が、少し楽しい。いけないと玲奈は気を引き締める。



なぜ、こんな場所に呼び出した?



胸の内に警戒心を抱えながら、玲奈は部屋の扉をノックした。



すぐに開かれた扉の向こうで、男が薄く笑う。



「桐山玲奈さん、ようこそ」



松岡英二。

大和テレビの旧経営陣にして、東堂を排除しようとする張本人。 その彼が、玲奈をわざわざここに呼び出した。



「松岡さんが、直接お話を?」


玲奈は警戒を隠しながら、礼儀正しく応じる。松岡は微笑を崩さぬまま、ソファを示す。



「まあ、座りたまえ。敵意はないよ」



敵意はない?


何を言っている、この男は東堂社長を潰そうとしている人間だ。



しかし、玲奈は躊躇いながらも席に着く。逃げ出すか?有り得ない、それならわざわざ来ていない。


虎の子を得るためには虎の穴ってやつよ。玲奈は決心する。


情報を取るには、こちらも相応の姿勢が必要なのだ。



松岡は指を組み、穏やかに言った。



「君は優秀だ。RePurgeの顔になりつつある。だからこそ、私は君に選択肢を提示しようと思ってね」



玲奈は眉を寄せた。


「選択肢?」



「そう。君はこのまま東堂勝吾に付き従い、道を共にするのか。それとも、より安定した未来を選ぶのか」



玲奈は喉の奥で笑った。


「安定した未来?つまり、松岡取締役の側につけと?」



「言い方は任せるよ。ただ、君は賢いから分かっていると思うが。東堂勝吾の未来は、そう明るいものでは無い。」


松岡は静かに言葉を継ぐ。



「視聴率は確かに回復傾向にある。しかし、スポンサーが戻らない。企業は数字だけではなく、信用で動く。東堂のやり方は過激すぎるんだ。」



玲奈は無言で松岡の目を見た。 松岡は淡々と続ける。



「君は報道に関わる者として、どう思う?テレビというのは、報道というのは、理想や正義だけで成り立つものか?」



玲奈は言葉が出ない。 松岡の言葉は、一部では正しい。


東堂の改革は、視聴率を持ち直し、大和テレビに新たな価値を生み出した。 だが、現実としてスポンサーは戻ってきていない。経営は厳しい状況のままだ。



「だから、変えると?あなたたちが東堂社長に押し付けた椅子をあなたたちの都合で奪うと言うんですか?」



玲奈が静かに問うと、松岡はゆっくりと煙草を指に挟み、微笑した。



「私は、東堂の全てを否定するわけではないよ。彼には彼の功績がある。だが、組織は理想では動かない。維持するためには現実的な選択が必要だ」



玲奈は目を細めた。


「それが安定した今まで通りの大和テレビなんですか?」



松岡は薄く笑う。


「分かっているじゃないか。そして、君にも席がある」



玲奈はわずかに息を呑んだ。


「私に?」



「そうだ。君は今、東堂勝吾の側でRePurgeを動かしている。


しかし、彼がいなくなった後も、報道の世界で君の才能を生かせる道はある。むしろ、今のままでは君自身も危うい立場になるかもしれない」



玲奈は拳を握る。


恐怖には抗える、苦しみも耐えて見せる。

でもこれはダメだ、正論はするりと心を侵食する。



松岡の言葉には、明確な根拠がある。東堂の改革は先鋭的で、敵も多い。その未来は、確かに不安定だ。



玲奈は、唇を噛んだ。



「私は、、」



ここで、どう答えるのが最善か? 東堂のために、どう動くのが正解か?


答えを探し終えた玲奈は深呼吸し、松岡の目を見据えた。



「お話は興味深いですね。松岡さんの提案、もう少し詳しく聞かせていただけますか?それと1つお願いがあります。」



松岡の目が、ほんの少し細まる。


「ふむ、君は賢いな」



玲奈は、笑わなかった。 東堂のために、敵を知る。 そのためなら、舞台にあがって見せようじゃない。







社長室の広いソファに対面で腰掛ける東堂と沢木真帆。



「概ね想定通りといったところか。」



「そうですね、しかし当初の予定ではもう少しスポンサーの回復が進んでいた筈で。」


歯切れ悪く真帆が答える。



「少し煽り過ぎたか?しかし、そう腰抜けばかりでもないだろう。世の中には跳ね返りもいるものだ。」


そう言って意に介さぬ様子の表情の東堂。



だが真帆はやはり不安である。


東堂は強い、しかし強すぎるものは他者からの反発もまた強い。強く打てば強く響く、物の道理である。そして、東堂は強すぎるのだ。


恐らくこれまでのメディア界で誰も味わったことのない強さで皆を打ったのだ。今はまだ響いている段階かもしれない。しかし必ず来る。


全ての方向からの反射が、今まで味わったことのない強さで来るのだ。


それは東堂がそう仕向けたから。分かっている。

恐らく東堂はその全てを受け止める覚悟と信念で戦っている。そしてそれに打ち勝つ自信もあるのだろう。だから私はそれを支えれば良い。


わかっているからこそ、東堂が戦いやすいように場を整えるのが自分の、Inovexの在り方なのだから。



「それは理解しています。だからこそ、慎重にしかし、迅速に体制を整える必要があります。動きましょう。」



その時、ドアのノック音が響く。



東堂が呟く。



「沢木、お前のお待ちかねだ。」



「?、どうぞ。」



東堂のつぶやきに疑問符を浮かべながら。


そして、誰も繋ぐなと言っておくべきだったかと後悔しつつ真帆が返事を返す。



ドアが開き、アキラとエリカチンが入ってくる。


アキラはいつものように軽いノリで、エリカチンは涼やかに微笑んでいる。



「お邪魔しまーす、東堂社長、真帆さん!今日、なんと、アポ取ってきました!」



「当たり前です。」


真帆が冷たくアキラに返す。




エリカチンもアキラに続き優雅に入室してくる。


この間のラフすぎる姿とは一変フォーマルなスーツを身にまとった彼女は颯爽と舞う。


アキラに続いて部屋に入ると、彼女は軽く頭を下げ、言葉を紡いだ。



「失礼いたします、東堂社長、そして真帆さん。桜井恵梨香と申します。本日はお時間をいただき、ありがとうございます。」


その声には、自然な落ち着きと優雅さが滲んでおり、室内の空気を一瞬で変えるような存在感を放った。



「どうぞ、お手柔らかにお願いしますわ。」


立ち上がって出迎える東堂を静かに待って、エリカチンは微笑みながら、きちんとした動作で名刺入れを取り出す。静かに東堂に向かって名刺を差し出すその仕草は、まるで舞台上の演技のように優雅で美しい。



「こちらが私の名刺でございます、東堂社長。以後良しなに。」


東堂はその名刺を受け取り、ひとしきり見つめてから、やんわりと微笑んだ。



「ありがとうございます。」


と、名刺を丁寧に両手で受け取る。



「桜井さん、確かにお噂はかねがね拝聴していましたが、こうしてお会いできる機会に恵まれるとは思っていませんでした。」


と東堂が言うと、エリカチンは微かに微笑んだ。



「私も光栄です。時代の革命家にお会いできた喜びは何物にも代えられませんわ。」


と彼女は答える。少しの間が空き、双方は名刺を受け取る手を見つめながら、ほんの少しの間を置いて名刺交換が終わる。



「あなたは良いんですか?」


真帆がアキラにそっと問う。




既にソファにふんぞり返ったアキラは二人を眺めながら言う。



「俺名刺もってねーし、ま俺が名刺だよね。」



名刺交換が終わると、エリカチンは軽く微笑みながら真帆に視線を向ける。



「それでは、真帆さん。」


真帆も穏やかに微笑み、名刺入れから自分の名刺を取り出してエリカチンに差し出す。



「失礼いたします。」


エリカチンはその名刺を受け取り、優雅にそれを見つめると、静かに頷いた。



「ありがとうございます。お互いに素晴らしい道を歩んでいけることを楽しみにしておりますわ。」



「こちらこそ、今後ともよろしくお願い申し上げます。」


その言葉とともに、二人は軽くお辞儀を交わし、名刺交換は静かに終わった。



「さてと、アキラ?」


先程の上品な感じを一変させたエリカチンがアキラに声を掛ける。



「名刺くらい持ってきたらどうなの?」



アキラはソファにふんぞり返ったまま、少しばかり驚いた顔でエリカチンを見上げる。



「お?まさかの?」



エリカチンはその答えに、さらに上品な微笑みを浮かべつつも、ちょっとだけ呆れたように肩をすくめる。




「あんたも30歳超えてビジネスシーン出ることも増えるでしょ。こういうのは大事よ」


その時、東堂がニヤリと微笑みながら声をかける。



「アキラ、名刺は渡してこその名刺だぞ。君がいくら名刺そのものだと言おうが、それが通用する相手ばかりじゃない。」



アキラは一瞬、東堂に目を向けてから、肩をすくめて無邪気に言う。



「まあ、名刺もってなくても、東堂社長の目を通ったんだから、オレには事足りてるってことでしょ?」



「これは、、」


言葉に詰まる東堂。



「あら、やるわねアキラ、東堂社長から一本とれるなんて。」


エリカチンもアキラの屁理屈に笑い出す。



真帆も苦笑しながらそのやり取りを見守り、社長室の空気はフォーマルから即座にカジュアルへと切り替わる。



エリカチンが微笑みながら、真帆に向かって話し始める。



「実はね真帆さん、私、スポンサーを紹介できるかもしれませんの。」



真帆は少し驚きつつも、すぐ冷静に反応する。桜井恵梨香、彼女の人脈ならばとてつもない金鉱だろう。20代で会社を興し、まだあまりこの国に馴染みのなかったM&Aを利用し時代を駆け抜けた「IT時代の才媛」


そして、我が大和テレビとも因縁浅からぬ彼女の持つ金脈。

しかし、なぜ彼女がウチを助ける?真帆は、エリカチンと呼ばれる彼女が今の若い、そうアキラのような世代の、真帆もそうなのだが、彼らが持つマスコット的イメージを信用してはいない。


それでも今はこの提案、乗るべきだろう。

そう思った。



「本当ですか?それはありがたいですね。どんな方々でしょうか?」


エリカチンは少し考え込み、そして穏やかに言う。



「私のネットワークの中には、少し特殊なご縁を持った方々がいらっしゃいます。企業のトップや投資家も何人かお知り合いですし、少しリスクを取ってでも面白い案件を支援してくれる方がいらっしゃいます。」



「それなら、是非ご紹介いただけると助かります。」


真帆が少しホッとした表情を浮かべる。エリカチンのあげる名前を聞きながら真帆はそれぞれの情報を思い出す。


特に問題がある人間はいないように思う。もちろん後でそれぞれ照会は掛けるのだが、それでも今対面で話している相手がこちらに悪意はない可能性が高いと知れるのは真帆にとって非常に喜ばしいことだった。



「もちろん、紹介はお手伝いできますわ。お互いの利益になる形で進められれば、それが一番ですから。」


エリカチンはそう言いながら、真帆に視線を合わせ、にっこりと笑う。



その後もエリカチンと真帆がスポンサーの件で打ち合わせや段取りを進めている向かいで、東堂とアキラは視聴者企画バラエティの進捗やアキラの番組の構成、企画の確認などを行い時間が過ぎていった。



「あら、もうこんなお時間に、東堂社長、真帆さん今日は大変有意義なお時間を頂き大変楽しかったですわ。又今度はこちらからお誘いしてもよろしいでしょうか?」



真帆とコスメの話で盛り上がっていたエリカチンは時計を確認すると退出の挨拶をする。



「勿論です、せっかくのご来訪ですが、私があまり桜井様のお相手が出来ませんでしたので心苦しく思っておりました。


是非ともお誘いお待ちしております。本日は沢木のお相手有難う御座います。」



深々と頭を下げ礼を述べる東堂、隣で沢木真帆も礼をする。




「かえるねーまた飯行こうねー。のが絶対コスパ良いじゃんね。」


アキラが軽口をたたく。



「あんたは!ちょっと本気でビジネスマナー叩きこんでやろうかしら。東堂社長協力してくださる?」



「喜んで。」



これは藪蛇だとアキラはそそくさと逃げ出す。



真帆はその背を追いかけるエリカチンの背中を見送りながらもう一度礼をした。



「どうだった?」


東堂がその真帆の背に問いかける。



「怖いですね、あの優秀さ底が見えません。」



「まあ、アキラとはまた違う天才だからな。よく神木さんが褒めてたよ。

お前なんでああじゃないんだ!ってよく叱られた。」



東堂のその言葉に真帆は驚く。


東堂の口から直接神木聖徳の名を聞くことすら初めてなのに、褒めていた?エリカチンを。

叱られた?東堂が?


そして思い当たる。真帆が先程いた空間は自分を除くそれぞれが時代を先導する天才達だったことを。



「社長。」



「どうした?」



「少し風にあたってきます。」


真帆は自分が天才共の熱気に充てられて、のぼせているのだといまさらながら自覚した。






それから数日、真帆は自分のデスクでふとした瞬間、感じる達成感に驚いていた。



エリカチンが紹介してくれたスポンサーたちが、次々とプロジェクトに協力する意思を示してくれたのだ。


最初のうちは半信半疑で何度も確認したが、実際に動き出したその規模とスピードには心から驚かされる。新しいスポンサーのネットワークが広がるごとに、戻らないスポンサーに四苦八苦していた自分を振り返る。



格の違い。



こんなこと思いたくもない。努力や経験ではない、才能、格。そういった理不尽なものが世の中にはある。


それに傷つくほど若くはないけれど、達観できるほど老成もしていない。



「ままならないなあ。」



真帆は一人溢す。



「そんなに契約とってため息吐かれたら部下の方々が可哀そうですよ。」



田中が真帆にお茶を差し出す。



「ありがとうございます。」



一息入れようかと、田中の淹れてくれたお茶を一口すする。渋い。



なんだろうこの男、田中。真帆と大して年齢も変わらないのに無性に爺臭いのだ。


第一番茶ってなんだ、普通コーヒーだろう、いや淹れといてもらってその言い草はあんまりだが。


ああ、でもこの男なら、この同い年とは思えない老成した男なら真帆の気持ちを説明してくれるかもしれない。



なんか説明好きそうだし。



「別に、仕事が駄目で溢してたんじゃないんですよ、寧ろ逆で。」



「何か失礼なことを考えてからの、その発言な気がして仕方ないですが、それは貴方の責任じゃないでしょう。寧ろ今のあなたの周りは特殊過ぎるのです。私なら耐えられませんよ。」



「特殊?」


真帆は田中に問い返す。



1すら聞く前に10応えるのは止めて欲しい。最近自分の周りはこんなのばっかりだ。



「特殊でしょう、今あなたの周囲は、タイプはそれぞれですが才能の塊だ。彼らは総じて速い。」



「速い。」


真帆は自分が馬鹿になった気がしている。



「沢木さん、あなたは十分優秀な方だ。ロジカルに物事を組み立て業務へあたってらっしゃると自分には見受けられます。」



「あ、どうも。」



「ですがあのタイプの方々は往々にして論理をすっ飛ばして正解を持ってくるのですよ。正直我々、まともな一般人には甚だ対応に苦慮する相手です。だから、あなたはよくやっている。まあ、そういうことですよ。」



あ、眼鏡クイってやった。


田中は真帆に軽く一言告げてから、さっさと部屋を出て行く。



よくやってるか。速いのか。

確かにそんな感じだ、だからと言って置いて行かれると私の仕事はいらなくなる。



そういう訳にはいかないのよねえ、と真帆は気合を入れ直す。 沢木真帆の日常である。



いつもお読み頂き有難う御座います。

明日から投稿時間を21:10にしてみようかと思います。

暫くやってみて意味なさそうでしたら戻しますもしアドバイス等ありましたら宜しくお願いしますm(__)m

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