【第74話 後世に伝わる田中の偉業】
こんにちは。
御覧いただき、ありがとうございます。
舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」
是非、お楽しみ下さい。
うざったい始業式も終わり、俺たちはいつもの様に学校へと通う日々だ。
あぁ夏が恋しい。
この前まで追試をひとりで受けて、神社に行ったり、妖怪、いや妖と戦ってたのが嘘みたいだ。
せっかく覚えた古典に分類される内の200の落語も今ではすっかり忘れてしまって、机の引き出しには勢いで買った扇子が悲しそうに埃をかぶっている。
使わない技術なんてそんなもんだ。時が経過すれば廃れていく。
そう言えば中学校の頃、掃除時間に箒で野球してたらクラスに飾ってあったパイナップルの苗をへし折った事があったっけ。あれはクラス対抗の数学テストで優勝した時に学年主任の国語の先生から貰ったもので気まずかった。国語の先生に謝りに行かされると(俺は貰ったものだしいいんじゃね?って担任に言ったらめちゃくちゃ怒られた)、その先生は「形あるものいつか壊れるさ」って言って怒りもしなかったし、それ以上何も言わなかった。
当時の俺は訳分かんなかったけど、先生。今なら分かるぜ。
ま、全然関係ない話なんだけどね。
夏服の半袖から、中間服の半袖か長袖か半袖にベストか長袖にチョッキを着るのが学校の決まりになり学校内は色んな着こなしで溢れていた。
朝少し寒いから俺は半袖にベストだ。
「早く行こうぜ」
石段を駆け上がるともう汗ばんでくる。
秋とは言え運動するにはまだ少し暑い。
「お前、夏が終わったらすぐ元気かよ」
「おう! 俺は秋と春が好きだ! 汗をかくのも運動も大っ嫌いだ!」
「偉そうに言うな」
「秋は蝉爆弾が多くて嫌なんだよね」
金城が怪訝そうにぼやいた。
「蝉爆弾?」
「死んだ蝉だと思って近くを通ると、めちゃくちゃ元気に動くアレよ」
「あぁ」
「俺は家の前で死んでたら庭から帰るぜ」
他愛もない秋話をしながら、俺たちは足早に神社へと向かっていた。今日はどうしても伝えたい事があるからだ。
神社からシャー、シャーと竹箒の音が聞こえて来た。
俊介と金城には内緒だが、俺は竹箒の音で晶のおっちゃんか、咲良ちゃんかを聞き分ける事が出来る。
が、キモイから言ってない。ちなみに咲良ちゃんはシャー、シャー。で、晶のおっちゃんがシャッシャッだ。
最後の2段をすっ飛ばし、神社の鳥居に着いた。
奥ではやっぱり咲良ちゃんが巫女服姿で掃き掃除をしていた。
「咲良ちゃん!」
「徹くん! 彩夏ちゃん! 俊くん! こんにちは!」
「ねぇねぇ! 今日すげぇの発見した!」
急いでリュックの中をガサゴソとかき回す。今日は持ち帰らない教科書が入っているから少し重い。
「本当にすごいよ」
「納得しちゃった」
「ジャーン!」
「歴史の教科書?」
咲良ちゃんが俺たちの高校で使ってる歴史の教科書を不思議そうに眺めた。
すぐにページを開ける様に挟んでおいた歴史の小テスト15点満点中4点のしおりを、咲良ちゃんにバレないようにポケットにねじ込む。
「ここ読んでみて」
「後に、今の警察の原型となる仕組み作りを伝え、江戸時代の治安維持に貢献した……田中紀彦!?」
「またこの絵がちょっと似ててマジ面白いんだよね」
教科書には田中の浮世絵チックな当時の誰かが描いた絵と共に説明が載っていた。と言うか、田中は江戸時代に行ってたし、歴史に名を残す様な事をしていた。
「すごい……ちゃんと警察官してたんだね」
「何なら世界一の警察官だったかもな」
「紀彦にぃちゃんらしいね」
俺たちもまた日常に戻っていた。
6年前の日常に。
こんな日々がずっと続いたらな。なんて、そんな子供じみた事を考える。
ま、もう少し、今だけは考えたっていいか。
完結するまで毎日18時に更新されますので
楽しみにお待ちいただければ幸いです。
2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。
全部で4部作ありますこのシリーズ。
恐らく全てがラノベ化されると思いますので
そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。
応援の程、よろしくお願い致します。




