【第70話 笑顔を奪いし者】
こんにちは。
御覧いただき、ありがとうございます。
舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」
是非、お楽しみ下さい。
「ど定番の入り方しましたね」
黒シャツのインテリ眼鏡が分かりやすくゴマを擦りながら現れる。
「なんだ、お前らか」
「もっと興味を示して!」
「この人たち、たぬき神社を潰そうとしたり、悪い人たち」
俺たちも一度見た事がある。
県議会議員が何の用かこんな廃れた小さな耶志眞町にまでわざわざ足を運び、いばり散らかしているともっぱらの噂だ。
「ピンポーン! どうも、悪い人でーす! そして今からこの耶志眞町は俺のものになりまーす!」
見るからに色々と悪そうな奴は、あっさりと自分が悪者だと認めた。
どんだけ馬鹿なんだよ。呆れている俺たちを他所に、クロさんとロノさんは顔色を変えていた。
「なんだ、この霊力は」
「お呼びしろ」
「先生! お願いします!」
先生と呼ばれた男が、呼ばれた方向とは全然違う草むらから姿を現した。
「うおっ!」
ホラー映画みたいに顔色は紫色で不気味に笑っている。
そんな大の大人が草むらから出てきたら普通にビビる。
「うぅううん。久しぶりの耶志眞町。運命ってあるものですねぇ。ずっと来たかったんだよぉ? 引き寄せられるがままに。これが僕の天命だよぉおおお」
服に枝とか葉っぱをつけてゴロゴロと地面を転がり、鼻を擦りつけて匂いを嗅ぎまわっている。
それがさもいい匂いかの様にうっとりと顔をとろけさせて。
「え? これ大丈夫? 昼間っからキマってるみたいだけど」
俺も同じ事を思った。
「九条さん」
「おぉお! クイックテンション!」
さっきまで転がっていたのに、今度は姿勢正しく直立し、九条の方を見ていた。
「お支払は即日現金で大丈夫ですか?」
「木下!」
「はい!」
木下が封筒を神崎に手渡す。
人目もはばからず神崎が封筒の中身を確認する。
札束が出てきてそれをバラバラッとめくり数えている。大金だ。束になってる1万円札を初めて見た。
むしろ1万円札なんて正月しか見ないぞ。
何とか立ち上がろうとしているクロさんとロノさんを横目に俺たちは単純にドン引きしていた。
確かにヤバそうな奴ではあるけど、今まで戦ってきたアトロさんとかと比べるとそんなにヤバいのだろうか。
「ぶらぼぉおおおお。ううぅん。やはりこの町はいい匂いがしますねぇ~、霊力の美味しそうな人の匂いが……」
くるくると空を仰ぎながら回るそいつはよたよたとこっちへ不可抗力的に近付いてきた。
それに合わせて数歩後ろへ下がる。と、こっちを見てピタリと回るのを止めた。じっとこちらを見つめている。
「おや! き、君は! さ、さささ探しましたよぉ! ずっとずっと君の事を考えていましたぁ! ずっとずっと! この6年間! ずっと!」
「え……」
明らかに咲良ちゃんの方を指さして笑っている。
この服。それにその台詞。
「まさか!」
「おぉおおお神よ、運命よ! 感謝します! またこうして出会えるとは! わたしが世を正してみせましょう!」
胸元から何かを取り出し天高く掲げた。
よく見るとそれは過去で拾い上げていた、ひよこのぬいぐるみだった。ひよこはすっかり黒く汚れていた。
感動の涙を流している。
こいつだ。こいつが咲良ちゃんのお母さんを。笑顔を奪ったんだ。こいつさえ居なければ!
「てめぇか!」
「ふんっ」
俺は神崎に掴みかかろうとしたが、何故か急に動けなくなった。足も地面から離れない。振り上げた拳もいくら力を入れても前にでない。
あいつがゆっくりと近付いて来る。
「ただの人間には興味がないんですよぉお」
そう言って手を払うと俺はその方向に吹き飛ばされた。こいつもチカラを使えるのか。
「徹くん!」
俊介と金城が俺と咲良ちゃんの前に立ちはだかった。
そんなボロボロの体じゃ無理だ。と言いたいものの、チカラを正面から受けた俺は息を吸うのも精一杯だった。
クロさんは立って鳥居の方を見ている。何で今助けてくれないんだよ。
「気が変わりましたよぉ、九条さんんん。お金なんていらないから、この子だけ僕が貰ってもよろろろしいでしょうか」
貰った封筒を木下に放り投げる。目がぐるんぐるんと回り、涎を垂らし始めた。
「え、うん好きにして、そして早くして」
九条も木下もドン引きしている。
「やった! やったやったやった!」
「こいつ狂ってる!」
「じゃあまずは、皆さんを皆殺しにしまぁああああぁす」
手を振りかざし、空気がびりびりと響き始めたその時。柔らかい声がその緊張感を解いた。
「おや、みなさんお揃いで……ふむふむ、それは大変でしたね。でも皆さん無事で何より」
完結するまで毎日18時に更新されますので
楽しみにお待ちいただければ幸いです。
2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。
全部で4部作ありますこのシリーズ。
恐らく全てがラノベ化されると思いますので
そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。
応援の程、よろしくお願い致します。




