【第67話 見ていることしか出来ない過去】
こんにちは。
御覧いただき、ありがとうございます。
舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」
是非、お楽しみ下さい。
「痛い!」
その声に反応して子供の俺がその男に掴みかかった。
「やだ! 徹ちゃん! 助けて!」
咲良ちゃんが俺に助けを求めている。
「咲良ちゃん!」
俺は勢いよく男に体当たりをして動きを止めようとするが容赦なくお腹を蹴りつけられた。
「ぐぅ……っ」
1メートルほど飛ばされ、痛みで呼吸する事も、泣くことも出来ずうずくまっていた。
この光景を俺は知ってる。
見た事がある。
夢だ。
幾度となくこの景色を俺は夢で見て来た。
一緒に笑い合って遊んでた女の子。砂の感触、血の味。あの夢はこれだったのか。俺の中から消えずに残った思い出の欠片が、俺にこの景色を見せていたのか。
「徹ちゃん!」
「邪魔なガキだ」
男が刃物を振り上げ男の子を突き刺そうとしたその瞬間、幼い咲良ちゃんが時を止めた。男も幼い俺も時が止まっている。
「時を止めてる……」
「それで思い出を引き換えに……だから私、町田くんの事分からなかったんだ」
「……クロさん……私の思い出をお供えします……だから、だからどうか、徹ちゃんを助けて」
幼い頃の咲良ちゃんが懸命に時を止めて、俺を助けようとしてくれている。
次第に空の歪む音がし始めた。男が徐々に動き始めガタガタと震えている。
きしむ音が大きくなり、ついに力を使い果たしたその時。再びたぬき公園は静止した。
公園の入り口には咲良ちゃんのお母さんが両手をかざし立っていた。
急いでふたりの元に駆け寄る。
走る最中に空がギギギギと音を立て歪み始めた。俺の無事を確認しケータイを取り出す。
空の異様な音が次第に大きくなっていく。
男の振り上げた刃物がガタガタと震え始め、そして時が動き出した。
男の持っていた刃物が勢いよくおばさんに突き刺さった。
「ひ、ひひひ誰だお前は、いつの間に」
「たぬき公園で傷害事件です。小さな男の子と女の子が刃物を持った男に」
「くそぉ!」
おばさんは殴り飛ばされ、地面に伏せた。
男は一目散に逃げようとしたがピタリと止まった。力を使い果たし呆然としている女の子をぐるりと振り返り、足元に転がるひよこのぬいぐるみを拾い去っていった。
地面に伏せていたおばさんが這って女の子に近付いていく。お腹からは鮮血が流れズルズルとその痕跡を残していく。
ここまではさっき見た過去だ。
おばさんの死は変えられない。
でも、咲良ちゃんの運命を変えるんだ。咲良ちゃんに笑っていて欲しいから!
「行こう、咲良ちゃん。伝えなきゃ!」
完結するまで毎日18時に更新されますので
楽しみにお待ちいただければ幸いです。
2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。
全部で4部作ありますこのシリーズ。
恐らく全てがラノベ化されると思いますので
そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。
応援の程、よろしくお願い致します。




