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【第62話 神々の争い】

こんにちは。

御覧いただき、ありがとうございます。


舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」


是非、お楽しみ下さい。


「結局こうなんのか、やだねぇ」

 クロは退屈そうにしゃがみ込んで、刀を地面に刺しくるくると回して言った。

「時を戻す力と律する力。相反する二つの神が仲良く交わるなど不可」

 アトロはクロに正対し刀を突きつけ真っ直ぐにクロを見据えていた。


「そんなもんかねぇ、俺は俺もお前も変わらねぇ気がするがな」

「さて、ケリを着けますか」

 口元のストールを下へずらす。

「何百年も続いた戦いに今日ケリがつくって本気で思ってんのか?」

 刀を肩に担ぎ、気怠そうにアトロの方へ歩み寄る。

「そんな恐れ多い。ただ……歪んだ事実は律さなければなりません」


 一気に戦いの緊張感が増す。

 にじり寄るふたり。アトロが先行で斬りかかる。


 クロはそれを避け刀を構え攻撃に転じる。クロの一手は力強く荒々しい。

 それに反しアトロの太刀筋は美しく無駄のない鮮やかなものだった。性格からなにまで相いれないふたりの神が戦いを始めた。

 さすが神と言ったところか、ふたりの刀捌きは恐ろしく早く、互いにこなれた戦いをしている様に見えるのだが、正確に相手を捉えその軌道に刀を持ってくる。

 そして無駄なくそれを刀でいなし、または弾き、攻撃に転じる。お互いに力も技も完全に拮抗している。


 狸の置物を壊され、人々の信仰心が弱まった事で徐々に押され始めるクロ。

 刀を受けながら1歩また1歩後ろへ下がってゆく。その勝機をアトロは見逃さない。

 脚に腕に胴体に、右から左から刀を素早く身体の後ろで持ち替え予測不能な方向から斬りかかって来る。


 クロはその連撃を受け止め、半歩後ろへ下がり刀を振り上げた。胴体ががら空きになる。そこへアトロが斬り込んで来る。

 と、待ち構えていた右手で腹をポンとひとつ腹を叩いた。アトロの時が止まる。

 動かなくなったアトロの横をすれ違い様に斬る。

 パチンと指を鳴らすと再び時が動き出した。アトロの胴体に斬撃が走る。


「くっ……」

「へっ!」


 クロが憎たらしく笑う。

 アトロは冷静に刀を構え直しストールを後ろへ流した。ふたりの刀がギラリと光った。


 クロが攻撃を仕掛ける。いくら神とは言え一撃入れたのだ。手負いの今、畳みかける他ない。

 クロの力強い太刀筋をうまくいなしてゆくアトロ。今度はアトロが1歩、また1歩後ろへと追いやられる。


「っらぁ!」


 クロは渾身の力で斬り上げた。

 流石のアトロもいなす事の出来ない力だ。

 アトロの刀が弾かれた。その瞬間を狙い再びクロは時を止めた。隙だらけの状態でアトロは動かなくなった。

 クロは走り込んで跳び上った。刀で防御されてもその刀をへし折り、そのままアトロを叩き斬る勢いだ。この一撃で勝敗を決めるつもりだ。落下速度の加わったクロの刀が、アトロへとまさに届こうとしたその瞬間。


「律っ!」


 アトロはクロの妖力に抗い己の術を掛けた。

 落下していたはずのクロが再び空へ戻り、最高点に達したクロは放物線を描いて後ろ向きに落下してゆく。まるで逆再生を見ているかのようだ。


 アトロの力は時を律する力。クロが本来の流れに逆らい止めた時を律し、元に戻しているのだ。


 クロは腹を叩いて時を止める寸前まで時間を律された。

 右手を振り上げ時を止めようとした時、目に飛び込んできたのは今まさに斬り上げて後ろへ追いやったはずのアトロが、地面すれすれの低い姿勢で斬りかかって来る姿だった。


 その瞬間クロは理解する。時を止め攻撃しようとしたが律された事実を。


 だが、それが理解出来たところで既に防ぎようがなかった。

 アトロとすれ違い様に深く脇腹を斬られる。黒の着物でも血が滲んで色が濃くなっていくのが分かる。


 アトロはこちらに背を向け血振りをした。

 何をするにも余裕でスマートで鼻に着く野郎だとクロは思った。鼻で笑い飛ばし唾を地面に吐き捨てた。

 ここはお前の神社だぞ。


 アトロが横目でクロを流し見る。狐目だからか鋭い眼光がクロと火花を散らす。

 アトロも実はたぎっているのだ、この宿敵との戦いに。


 両者同時に斬りかかる。

 先ほどよりも格段に速度が上がっている。

 神として1歩たりとも退けぬ戦いなのだ。

 時を戻す事で人間を導く存在であるクロ。

 物事を正しくあるがままに進める事で人間を導く存在のアトロ。


 自分たちの今まで救ってきた人間、行いの数だけ負ける訳にはいなかない。この神はこうして1000年以上の時を過ごしてきたのだ。


 クロが回転斬りでアトロの首を狙うと、アトロは姿勢を低くし脚斬りをしてきた。

 その脚斬りを避けその回転の勢いのまま脚を狙う。姿勢を低くしたクロの上をアトロの刀が通り過ぎる。アトロが今度は首を狙ってきていた。クロは姿勢の低い状態から跳び上り斬りかかった。

 さっき程の威力は無いがスピードも威力も十二分に増す。その強さは刀でいなす事の出来ない威力だ。


 切っ先がアトロへと伸びる。あと少しで届こうとしたその時、アトロは受けるでもなく、いなすでもなく、クロの切っ先から刀を這わせ懐へ飛び込んできた。刀を振る空間もない程密着しているが器用に刀をたたみクロの腹を斬った。


 自分の向かって行った威力もありアトロの刃が肉に食い込んでいく。すぐに反転し反撃しようと刀を構えるも既にアトロは刀を振り上げていた。


 肩口から深くクロを斬りつけた。


 勝負あった。

 斬られたところから血が噴き出した。クロは後ろへ数歩下がりそのまま地面へと倒れ込んだ。




完結するまで毎日18時に更新されますので

楽しみにお待ちいただければ幸いです。


2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。


全部で4部作ありますこのシリーズ。

恐らく全てがラノベ化されると思いますので

そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。


応援の程、よろしくお願い致します。

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