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【第58話 幼少期の徹と咲良】

こんにちは。

御覧いただき、ありがとうございます。


舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」


是非、お楽しみ下さい。


 夕暮れのたぬき公園では、ふたりの子供が無邪気に遊んでいた。

 青いスコップと緑色の熊手を小さな赤いバケツに入れて、男の子は夢中になって砂場の山を高くしている。

 女の子もお気に入りのぬいぐるみを汚れも気にせず砂場に持ち込み、一緒になって山を大きくしていた。


 やがて山が完成したらしくそのてっぺんに自分で咥えていたアイスの棒と、女の子からアイスの棒をもう一本受け取り突き刺した。女の子はスコップでくりっくりの目と鼻を描いて作品を完成させた。巨大なうさぎの顔だった。


 2人が満足気にそのうさぎを眺めていると、後ろから白装束の男がやってきて女の子の腕を掴み歩き出した。

 突然の恐怖に男の子は固まっている。


「痛い!」


 その声に男の子はハッとし女の子に駆け寄り、男の手を振りほどこうとする。

「おい何やってんだよ! やめろよ!」


 男は無言で男の子をドンと押し、また女の子を引いて行った。

「やだ! 徹ちゃん! 助けて!」

「咲良ちゃん!」


 今度は勢いよく男に体当たりをして動きを止めようとする。が、所詮は子供の力。

 徹は引きはがされ、そして容赦なくお腹を蹴りつけられた。


「ぐぅ……っ」

 1メートルほど飛ばされ、痛みで呼吸する事も泣くことも出来ずうずくまっている。


「徹ちゃん!」

「邪魔なガキだ」


 男は咲良を放り投げると懐から刃物を取り出し、ゆっくりと徹に近付いていく。

 男が近付いて来る。身体が痛くて一歩も動けない。身体中の空気を吐いても尚「カハッ、カヘッ」と無い空気を絞り出そうとする。

 口は開いて血が混じったよだれがダラダラと流れ出ていた。


「あなたも運命に逆らうのですか?」


 男が刃物を振り上げ徹を突き刺そうとしたその瞬間、咲良が両手をかざした。


 風は止み、音は消え、男は突き刺そうとしたその不安定な姿勢のままピタリと止まっていた。このたぬき公園の時間が止まったのだ。



「……クロさん……私の思い出をお供えします……だから、だからどうか、徹ちゃんを助けて」



 空の歪む音がし始めた。

 男が徐々に動き始めガタガタと震えている。

 咲良の力では、まだ十分に時を止める事が出来なかった。

 きしむ音が大きくなり、ついに咲良が力を使い果たしたその時、再びたぬき公園は静止した。


 公園の入り口にはスーツ姿の女性が両手をかざし立っていた。

 急いでふたりの元に駆け寄る。再び空がギギギギと音を立て歪み始め、男が動き始めた。倒れている徹の無事を確認しケータイを取り出す。




完結するまで毎日18時に更新されますので

楽しみにお待ちいただければ幸いです。


2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。


全部で4部作ありますこのシリーズ。

恐らく全てがラノベ化されると思いますので

そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。


応援の程、よろしくお願い致します。

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