【第55話 絶体絶命】
こんにちは。
御覧いただき、ありがとうございます。
舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」
是非、お楽しみ下さい。
俺と俊介で未来は変えればいい。これ以上辛い運命を、現実を鈴森さんに見せたくない。
走り出そうと角を曲がったその時、大きな影にぬっと覆われた。
見上げると大きな狐の耳をした男が立っている。バキバキの筋肉。不敵な笑み。強そうなヤンキー顔。多分間違いなくこいつは敵だ。
「ばぁー! ビックリしたぁ~? がししししし」
軽く腰を抜かしそうになった俺は、俊介にひょいと腕を掴まれ後ろへ戻された。
「時を乱す者は私が律する」
後ろには同じく狐の耳をした女が、いつの間にか立っていた。挟まれた。逃げ場はない。
「オグマ! ストス!」
オモイが筋肉ムキムキに向かってオグマ。
長い狐のしっぽみたいな髪をした女に向かってストスと名前を呼んだ。顔見知りらしい。
「あれぇ~メガネくん。こんにちはー! 君しか居ないなら、余裕だね」
何故かオモイは人間の俺たちを差し置いて俊介どころか金城の後ろに隠れている。おい、唯一勝てそうなのはお前だぞ。
「時を元の流れに戻せ、貴様らは逃れる事など不可能だ」
「おい! 何かめちゃくちゃ強そうなやつ来たぞ!」
「そうですね! 参りました! 降参です!」
「おい!」
「人間と妖怪じゃ勝ち目なさすぎだろ」
俊介はファイティングポーズを取っている。戦うつもりらしい。すげぇ奴だよ、お前は。
実質ここに男は2人しかいない。あとは怯えたたぬきの妖怪。俺と俊介でこの局面を乗り切るしかない。
「妖怪と呼ぶな人間。我らは妖。貴様らより高貴な存在だ」
「戦闘は避けられませんね。これを」
オモイは勾玉をポケットから取り出し俊介に手渡した。
「それは?」
「我々の妖力をお貸しします! あなた達2人分をいただいてきました。これで闘って勝って下さい! ふぁいと!」
俊介はジッと相手を睨みつけたまま、その勾玉を俺ではなく金城に手渡した。
「ここは俺と彩夏ちゃんで食い止める」
金城もその勾玉を受け取り、ラケットを握りしめストスの前に立ちはだかった。
「はあ? お前はまだいいとして、金城は女だぞ!」
「運命を変えられるのはきっと鈴森さんと、お前だ。ずっとだ、ずっと今日この日からずっと。俺はお前のために何もしてやれなかった。何が起こってるのかも、何をしていいかも分からなかった。でも、今は違う。俺は今、お前の為に戦える」
俊介も金城も、もう俺の方を見ようとしない。
「戦える? がししししし。戦うってのはお互いの力が同等で初めて戦いなんだよ。こいつぁ、ただの虐殺だ」
「やめないか、オグマ。我々は時を律するために力を行使するのだ。下等な人間のようになるな」
めちゃくちゃ狐の2人から殺気を感じる。やばい。これは絶対にヤバい。いくら俊介でもこれは……。
「じゃあ、徹ちゃん行ってらっしゃい!」
「おい! お前らを置いて……」
「友達ってさ!」
金城が俺の言葉を遮った。今までに聞いたことのない、芯の通った声だった。肩が微かに震えている。
「その人の笑顔を見たいって思う事なんでしょ? わたしは徹ちゃんみたいに一発芸も出来ないし、落語も出来ないけど、わたしも……わたしは徹ちゃんの笑顔が見たい!」
俊介と金城はもう覚悟を決めてたんだ。ここに来た時点で。鈴森さんの運命を変えたいって思った時点で。
「ここで行かねぇと、すげぇダサぇぞ」
「分かってるよ! ありがとう。行こう鈴森さん!」
完結するまで毎日18時に更新されますので
楽しみにお待ちいただければ幸いです。
2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。
全部で4部作ありますこのシリーズ。
恐らく全てがラノベ化されると思いますので
そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。
応援の程、よろしくお願い致します。




