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【第54話 美希が生きている時間】

こんにちは。

御覧いただき、ありがとうございます。


舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」


是非、お楽しみ下さい。


 田舎のおじちゃんおばちゃんは無限に喋ってくる。

 おじいちゃんおばあちゃんになってくると、無限会話のスキルに加え、会話の流れフル無視のスキルと、もう何の話か分からなくなるバフを相手に与えてくる。

 ここにもひとり、そんな敵と戦う女性が居た。


「はい、ありがとうございます! また来月お伺いさせていただきますね」

「鈴森さんが来てくれるから助かるわ~、ありがとうね。咲良ちゃんは元気?」

「えぇもーやんちゃでねー、男の子と一緒に泥んこになってますよ」

「いいわね~、うちの孫はやれゲームだ、ケータイ欲しいだ。ね~? 子供が小さいと大変ね」

「毎日大変ですよ~。でも、旦那が面倒みてくれるからすごい助かってるんです」

「あら~! それは羨ましいわね」

「いえいえ、それでは……」


「ウチの旦那なんか……」

「失礼しま~す」

「はーいまた来月~」


 バタン。カチャ。パタパタパタ……。


 勝った。今日もこの終わりの見えない会話に終止符を打ったのだ。

 相手のペースに飲み込まれたら終わりだ。

 いかににこやかに【さよならの挨拶】を繰り出せるか、問題はそこにある。

 相手が話途中でも笑顔と言葉を少しだけ強めに出す。これだけで不毛な会話をこの世界から無くすことが出来るのだ。


「んん~っ、はぁー! 今日も仕事終わった~!」


 そう言って美希は伸びをして堅苦しい上着を脱いだ。

「さてと、咲良を迎えに行こうかな。徹くんと仲良く遊んでるかな~?」

 美希は仕事の疲れをすっかり忘れ、咲良と徹の遊ぶタヌキ公演へと向かっていった。




 俺達がたぬき公園へと急いで向かっていると俊介が急に止まった。


「止まれ!」

「なんだよ」

「あそこ」


 俊介が指をさした先にはスーツを着た女の人が歩いていた。


「っ!」鈴森さんから驚きの息が漏れる。

「おばさん!」

「鈴森さんのお母さんだ。本当に6年前なんだな」

「隠れてください! 見つかると危険です!」


 オモイが言ってた空間が崩壊するとかの話を思い出した。

 いわゆるタイムパラドックスってやつだ。

 具体的にどう危険なのかいまいちピンとこないがオモイの様子を見るからに相当ヤバいらしい。


 俺たちは住宅街の角を曲がって一度隠れた。

 2件隣に鈴森さんのお母さんが居る。この時点では少なくとも生きてる。お母さんが死なない未来になれば、鈴森さんの運命が変わって、きっと笑顔を取り戻してくれる。

 姿を見られないように俺たちは、注意しておばさんの声だけを聞いた。


「もしもし~、うん、今終わったところ~、今日ね~ミートスパゲッティにしたいん……あら、ナイスタイミングじゃない」

 ケータイで誰かと話してる。多分晶のおじさんだ。

「じゃあ、よろしくね。今から帰るわね。うん、愛してる」

 電話を切ったらしく覗いてみるとおばさんが家、つまりたぬき神社の方へ歩き出していた。


 おばさんが角を曲がったところで俺たちは見失わないように後を追う事にした。


「ちょっと待って!」


 金城の声に振り返ると鈴森さんが苦しそうに胸を押さえていた。

 6年前に死んだはずの自分のお母さんがすぐそこに。手を伸ばせば、声をかければ届く距離にいる。辛くないはずがない。


「鈴森さん頑張って。辛いけどせっかくお母さんに会えたんだ。今ここで見失う訳にはいかない」


 鈴森さんは精一杯力強く頷いたが、もう限界だった。

 顔が青ざめ震えている。これから起こるかもしれない未来を想像してるんだ。



「徹ちゃんと俊ちゃんで先に行って! 私、咲良ちゃんと一緒に居るから!」


「ありがとう! 行こう俊介!」




完結するまで毎日18時に更新されますので

楽しみにお待ちいただければ幸いです。


2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。


全部で4部作ありますこのシリーズ。

恐らく全てがラノベ化されると思いますので

そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。


応援の程、よろしくお願い致します。

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