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【第53話 歯車を狂わせる男】

こんにちは。

御覧いただき、ありがとうございます。


舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」


是非、お楽しみ下さい。


 時を同じくして6年前の耶志眞町。

 白装束に身を包んだ男がこの町に降り立った。

 電車で人と乗り合わせる事の方が珍しいので他人に白い目で見られることもなく、彼は堂々と電車で耶志眞(やしま)町へとやってきたのだ。


 改札口で駅員のおじいさんに切符を渡す。

「あぁ市内からですか。お遍路さんですか?」

 駅員のおじさんはにこやかに神崎に話しかけた。

「えぇ、まあそんなところです」

 意外にも神崎は柔らかい表情で言葉を返した。

「たぬき神社に行かれるんですか?」

「たぬき神社?」

「この町じゃ一番有名な神社でね。たぬきの神様なのよ。珍しいでしょ」

「あぁ、そこです。今から行こうと思って」


「あそこは景色もいいのよ。300段くらいある石段を登った先にあるんだけどね、この町が一望出来るから行ってごらん」

「はい、ありがとうございます」


「もう僕は歳だからなかなか行けなくてね。腰を去年やっちゃってね。先生は健康の為に歩けって言うんだけどね~、車があるから車で買い物でもなんでも行っちゃうじゃない?」

「はぁ。あの……」

「腰は大事にしなきゃね。お兄さんも若いんだから……」


――


「じゃあ、気を付けて行ってらっしゃい」

「失礼します」


 35分後、神崎は駅員のおじいさんから解放された。

 敗因は神崎の意外にもあった社交性と、田舎の老人と喋る時にどのタイミングで話を切るかという【思いっきりの良さ】というスキルが無かったことだ。


「もう誰とも喋らない」


 少し陽の傾いた駅のロータリーでポツリと呟いた。

 心機一転。深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。いつもの神崎へと心を戻すのだ。

 この町に降り立ってからずっと、神崎はいい霊力の力をビンビンに感じ取っていた。彼が欲する霊力がここにはある。運命をも支配する力が。

 逸る気持ちと興奮が入り混じる。


「感じる。いぃ~力を感じるよぉぉ。たまらないねぇ。たまらなく君の力が欲しいよぉ~。耶志眞町……か。この町のどこに君は居るの? んふっ、んふっふひひひ」



 にたにたと気持ちを抑えきれず彼は笑い、歩き出した。

 駅から神社までの距離、徒歩30分。



 駅のロータリーにはタクシーが必ず居るなど、それは幻想なのだ。




完結するまで毎日18時に更新されますので

楽しみにお待ちいただければ幸いです。


2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。


全部で4部作ありますこのシリーズ。

恐らく全てがラノベ化されると思いますので

そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。


応援の程、よろしくお願い致します。

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