【第50話 6年前の耶志眞町】
こんにちは。
御覧いただき、ありがとうございます。
舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」
是非、お楽しみ下さい。
俺は眩い光に包まれて目を閉じた。
瞼を閉じても光が皮膚を貫通してきて眼球を刺激する。
重力を感じなくなり身体が浮く感覚がする。かと言って落ちている訳でもなく何とも言い難い気持ちの悪い感覚がする。
ほんの一瞬だった。
足が地面を捉えたと思うと、すぐに重力を感じた。町の音がゆっくりと耳に入って来て、目を開けると神社ではなく、商店街から少し離れた住宅街の景色が広がっていた。
脳みそが全然全くもってついていかない。どうゆう事だ? 何が起こった? 金城と俊介、それに鈴森さんとオモイも居る。一人じゃないのを確認し少し安心する。
オモイも居るから俺たちはクロさんの力で意図的に場所を移動させられた事だけは何となく分かる。
「ここは6年前の耶志眞町です」
そうか。俺たちは、俺は鈴森さんの運命を変えたいって思って、それでクロさんが時を戻せる耶志眞町の神で、それを信じたらアトロっていうキツネの神様が来て、時を律する神はクロさんと仲が悪くて喧嘩して、で何か巻き込ま れて過去に飛ばされて今ここは6年前の耶志眞町か。
そうか。分かったぞ。
考えても全然分からないって事が分かったぞ。
「確かに潰れたはずのタバコ屋があったり、新しいアパートがなかったりするな」
「耶志眞町とよく似てるけど少し違う。昔の耶志眞町」
何だお前ら。飲み込み早すぎか。せめて冷静と情熱の間くらいで居ろよ。俺が普通じゃない?
「何で6年前なんだよ」
「咲良さんのお母様が亡くなられる当日です」
喉がきゅっと締まる。
そうか、この運命を変えなきゃいけないんだ。
鈴森さんの表情は変わらないけど俺には分かる。
「鈴森さん大丈夫。みんながついてる」
こんな言葉しかかけてあげられないけど、俺はひとりじゃない。きっと大丈夫。
俊介はいつでも冷静で、金城は優しく笑顔で支えて、ふたりとも本当に頼りになる。
一方俺は、言葉にも出来ず、行動にも移せず、引きつった笑顔で雰囲気を暗くしないことに精一杯だった。
くそったれ、もっとうまく笑えろよ。こんな時くらい。
「大丈夫だよ、咲良ちゃん」
「ありがとうございます」
そう言って鈴森さんはきちっと頭を下げた。膝の上に置かれた手は少しだけ震えていた。
「俺たちはどうしたらいい? どうしたら運命を変えられるんだよ」
「それは僕にも分からないんです」
おいおい何だよそりゃ。オモイが知らなかったら誰が分かるっつーんだよ。
「するべき事は分かりませんが、やってはいけない事は分かります。それをまず皆さんにお教えします」
「何をしちゃダメなんですか?」
「この時系列に干渉し過ぎると時空の歪む音がしますので気を付けて下さい。例えば過去の自分に出会ってしまう事。これは大変危険です。万が一、過去の自分や関係者に出会ってしまった場合、絶対に自分が誰かという事を認識されないでください。空間が崩壊します」
「じゃあどうやって運命変えたらいいんだよ。鈴森さんにも俺たちにも誰にも会わずに運命変える方法なんてあんのかよ!」
「徹ちゃん」
「落ち着けよ」
「通常であればその運命の始まりとなる時間へ飛び、些細な所から運命の歯車を少しずつ変えていくんです。それなのに……」
「来た時間は、事件の当日」
「この日しかねぇって事か」
2人とも冷静に見えるけど、不安なのは俺と同じ。俺が運命変えたいって願ったんだ。そう思ったんだ。俺がしっかりしなきゃ。
「とにかく行こうぜ。何していいかも分かんねぇし時間もねぇ」
「でも、どこに行けばいいの? それすら分からないんじゃ」
「じゃあどうしろっつーんだよ。ここに居たって始まんねぇだろ」
「落ち着けよ」
「落ち着ける訳ねぇだろ」
「徹」
それだけ言って俊介は真っ直ぐに俺を見た。
完結するまで毎日18時に更新されますので
楽しみにお待ちいただければ幸いです。
2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。
全部で4部作ありますこのシリーズ。
恐らく全てがラノベ化されると思いますので
そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。
応援の程、よろしくお願い致します。




