【第41話 狸の神様】
こんにちは。
御覧いただき、ありがとうございます。
舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」
是非、お楽しみ下さい。
「神様~!?」
山の上に位置する神社は普段、人の声を掻き消すほどに蝉の合唱が響いていた。
しかし、その合唱を掻き消す程に俺たちの声が響き渡った。
「そう! 俺! たぬきの神様!」
クロさんは賽銭箱に足を掛けてドヤ顔してみせた。
青と緑と赤の男の子も、それぞれクロさんを真似してドヤっている。足が賽銭箱に届いてないぞ。
「いや、いきなりそんな言われても」
むしろ「私は神様です」って言われて「はい、そうですか」って納得する人間なんて存在するのか?
ロノさんに足をどけるように注意され、バツの悪そうに賽銭箱から足を降ろしながらクロさんは言った。
「お前らが俺を信じない事には話が進まねぇんだよ」
「神様って、このたぬき神社の神様ですか?」
金城が赤の頭を撫でながら質問した。自分が子供って事を理解した上でその特権をフル活用してやがる。スケベなガキだ。
「そうだ」
「お師匠さん、成人の儀式も済んでいないのに難しいですよ」
「私は信じられます。クロさんはこの町をずっと守ってきて下さったんですね」
「咲良……お前も随分大きくなったな」
「今まで……沢山ありがとうございます」
「感謝されんのはありがたいが全部終わってからにしな」
え? なに? どゆこと?
俺たちを残して鈴森さんとクロさんの中だけで話が進んでるんだけど。
金城はずっとはてな顔してるし、俊介はずっと黙りこくっている。そらそうだ。明らかに情報過多だ。
理解は出来てないが、とりあえず話の内容を一度整理してみよう。
まずクロさん達はたぬき。うん、まあいいとしよう。
そしてクロさんは神様。もう意味が分からない。
そして神様だから何百年、何千年と生きていてこの耶志眞町をずっと見守って来た土地神様なんだそうだ。
何か他にも言っていた気がするが、そもそもの前提に引っ掛かり過ぎて全然話が入ってこない。
「ちょっと待ってください。鈴森さんは信じられるかもしれないけど僕たちはまだ……。だってどう見たって人間じゃないですか」
まあ確かに? 袴履いて着物姿でインナーはパーカーだしシルバーアクセをジャラジャラ付けてて明らかに違和感はあるけど、変人と言われて信じる人は居ても、神様って言われて信じる人はいないだろ。
「じゃあお前さん「人間」ってなんだ?」
「え」
「お前さんを人間って証明するもんはなんだ」
この人は変に見えて何か深い感じの難しい質問をする人だ。
哲学が好きなのか?
「そんなの見たまんまじゃないですか」
「そう。外見だ。見た目が人間に「似てる」から人間だって勝手に認識してんだ。所詮はそんくらいのもんなんだよ」
「見た目なんて」
「何でもいいじゃん」
「大事なことはなんだよ」
ゲシッ。いてっ。
「あなた達は誰も上がってこないように見張ってなさい」
「は~い!」
ロノさんの言う事は素直に聞くんだな。
3人は元気よく石段を降りて行った。
「馬鹿だけど可愛い3匹だろ?」
賽銭箱前の階段にドカッと座りクロさんが言った。「はい」と素直に答えられないのが困ったものだ。さっきも去り際にローキックくらったし。
「あいつらは親がいねぇんだ」
「え」
てっきりクロさんとロノさんが親なんだとばかり思っていた。
「都市開発で野を追われ、親を失ったたぬきは人間界に順応するか死ぬしかないの」
ロノさんはすぅと静かに3人、あ、いや。もし神様でたぬきでって事が本当なら3匹が消えていた方向を見据えていた。
「若いのがこの先の未来を創る。あいつらには人間を恨まずに生きて欲しい」
「野生動物の多くが人間の事を良く思っていませんからね」
海からの風がひと吹き俺たちを涼しくした。
一瞬だけふたりの言葉から歴史のような、背負ってきたものが見えた気がした。
本当にそんな昔から、こんな道路もマンションもない時代から生きているとしたら、ふたりはどれだけのたぬきが死ぬのを見てきたのだろうか。人間のせいで。
「さて時間がねぇ! 頭の良い奴に喋らせるか。はあっ!」
クロさんはおもむろに立ち上がり手のひらを身体の前で合わせた。身体から変な紫色した煙みたいなのが出てる。
あ、すごい。これがオーラってやつ? 俺にも見えましたよ! 江原さん!
「メーティスの庇護を受けし四つ足よ、知識の泉より今湧き出でよ! オモイ!」
ぼわん。
間違いなくぼわんって音した。あの忍者とか消える時のやつ。
当たり前の様にもくもくとした煙がいきなり出て来て神社は急に煙たくなった。
「お呼びですか、クロさん?」
煙の中から声がする。
完結するまで毎日18時に更新されますので
楽しみにお待ちいただければ幸いです。
2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。
全部で4部作ありますこのシリーズ。
恐らく全てがラノベ化されると思いますので
そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。
応援の程、よろしくお願い致します。




