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【第4話 俺の友達はお前らだけ】

こんにちは。

御覧いただき、ありがとうございます。


舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」


是非、お楽しみ下さい。

 暇だ。ひたすら暇だ。おにぎりなんてとうの昔に食べ終わった。とっととボール追いかけて相手ぶん殴ってさっさと来いよ。



 俺はいつもの待ち合わせ場所で寝そべっていた。屋根付きのバス停が俺たちの集合場所だ。屋根付きでただでさえ日陰なのに傍には木が生えていて更なる日陰と気持ちのいい風を作り出している。春になればなかなかの迫力ある桜の木も隣にあったのだが、一昨年の台風で倒れてしまって今は切り株になっている。その横の少し深緑に生した地蔵が俺たちの秘密基地を温かく見守っている。


 耳を澄まさなくても蝉の声ばかりが響いてくる。バスは2時間に1回だけ顔を見せる。ここでたむろし過ぎてもはや運転手のおっちゃんとは顔見知りだ。名を鈴木という。


「おう、元気か?」


 誰が降りる訳でもなく乗る訳でもなく、ドアをプシューッと開けて話しかけてくる。鈴木さんは俺の暇を1分ほど持ってプシューッと去っていった。再び聞こえてくる蝉の大合唱。何で俺の人生はこんなに暇で平凡で退屈なんだ。かと言ってボールを追いかけたり誰かをぶん殴りたいとは思わないけどな。そもそもお金を払ってまで疲れたくないし、怒られたくないし、1コか2コしか変わらない先輩とやらにヘコヘコもしたくない。土日も放課後も返上して汗と泥にまみれるの? 誰得なん?



 少し遠くに俊介の姿が見えた。学生鞄とグローブ袋を引っ提げて、暑さで揺らぐ道を涼しそうに歩いてくる。


「徹、お待たせ」

 少しは走って来いってんだ。

「暑さで死んだらどうするんだ」

「葬式に行くかな」

「そりゃそうだ」


 そーゆー事を言ってんじゃないよあたしゃ。部活でいい汗を流したのか風呂上りのようにさっぱりしてやがる。こっちゃあ汗でドロドロだぞ。


「お前も大変だな、夏休みにまで学校だなんて」

「お前と一緒にすんな。俺は部活、お前は補習」

「似たようなもんだろうが。学校に行って何かしなきゃいけないっていう時間拘束を受けてる点では」

「どこも似てないだろ。俺は好きで部活やってんの。お前は好きで補習してんのか?」


 よくもまあそんなスラスラと俺の屁理屈につっこめるもんだ。

「普通な、部活をやる奴は頭が悪い。頭のいい奴は部活をやらないってそーゆー世の中の理ってものがあるだろ? しかし俊介てめぇはちげぇ。運動部でその頭の良さってなんだ? お前チートか? アカウントバンされろ! 凍結されて、今までの課金が全部無駄になれ!」

「蝉よりうるせぇ」

「お待たせー!」


 バス停の入り口から差し込む光を遮り、金城が勢いよく登場した。テニスラケットを肩にかけ、少し息を弾ませている。部活終わりに走ってここまで来たのか。


「毎日何食ったらそんなに元気なんだよ」

「納豆!」

「俺も食ってるよ! おせぇんだよ金城」

「金城って呼ぶな! 彩夏って可愛い名前があるでしょ?」


 何故だか金城は昔から苗字で呼ばれるのがあまり好きではないらしい。【金にまみれた城、金城】故に嫌悪しているらしいが、いやそれはお前の匙加減だろ。


 昔修学旅行の時、金色をしたお城のキーホルダーをプレゼントしてやったらグーで殴られたっけ。その金のお城は今や所々金のメッキが剥げて「金と銀の城」として金城の学生鞄に括り付けられている。


「ねぇ、今日久しぶりにたぬき神社でだべって帰らない!?」

「おお、めっちゃ久しぶりだな」

 俊介がそれに同意する。


 久しぶりにそのワードが俺たちの中で話題に出た。たぬき神社は耶志眞町の海沿いにある丘というか山というか何とも微妙な高さに位置する神社だ。子供の頃はちょくちょくそこで遊んでいたらしいが、いつしか行かなくなった。長く続く石段を登って行かなければならず、平坦な場所でたむろに最適な場所をみつけた俺たちはすっかりバス停に居着いてしまったって話だ。


「じゃあアイスでも買って行こうよ」金城の買い食いの提案に乗る事にした。1日100円使えるのなら安いガリガリしたアイスくらい買えるだろ。


「おう、暑くて死にそうだ」

「徹ちゃんが死んだらお葬式に行ってあげるよ」

「お前だけは来んな」

「何であたしだけ返しが違うのよ!」


 金城がぶん殴ってくるのをひらりと躱す。ふっ、女のひょろっちぃパンチが俺に当たるかよ。あばよぉ!


 金城が俺に一発入れようと後を追ってくる。金城は足が速い。さすが普段からボールを追いかけているだけはある。俺も本気で走らなければ重い一発をくらうことになる。人の居るコンビニまで逃げ切れば俺の勝ちだ。その為にあるのだ。こども110番の家とは。


「ちょっと待てよ」

 イケメン俳優の台詞に酷似した台詞を吐き、俊介が俺たちを追いかけた。




2025/06/08まで毎日18時に更新されますので

楽しみにお待ちいただければ幸いです。


2025/06/08で「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。


全部で4部作ありますこのシリーズ。

恐らく全てがラノベ化されると思いますので

そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。


応援の程、よろしくお願い致します。

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