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【第35話 芸人を目指す徹】

こんにちは。

御覧いただき、ありがとうございます。


舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」


是非、お楽しみ下さい。



 夏休みも半ばを少し過ぎた頃。

 俺はやっとこさ補習の地獄から抜け出すことが出来た。

 消しゴムのカスを賽の河原の石積みがごとく、ただ無心にひたすらに徳を積んでいたら、いつの間にか終わっていた。

 これが諸行無常というやつか(違う)


 補習が終わると、と言うか補習期間中も俺は落語を暗記し稽古を重ねていた。

 俺が落語という最終的に究極の結論に至るまでには様々な、それはもう紆余曲折あったのさ。聞いてくれ。



 兎にも角にも俺は鈴森さんを笑わせたかった。

 笑顔が見たいって気持ちはあの日から途切れる事無く、むしろどんどん加速していった。

 ただ陰キャの俺にはそんな大層な人を笑わせるスキルなんてこれっぽちもない。

 ので、大手の動画投稿サイトで沢山の芸人さんのコントや漫才を見ては、それを紙に書き出した。

 間の秒数や手の置き位置、表情、声の高さも測った。その時のお客さんの空気感など全てを事細かく記載した。


 自分が腹よじれる程笑ったネタは、実際に暗記して練習もした。

 俺たちはあの日からまたちょくちょく会う様になって、勉強をしたり、俊介の試合を一緒に観に行ったりしていた。

 隙あらばそのネタの一部を会話に織り交ぜていた。


 何なら全部やったっていい! いつだって笑わせる覚悟だ!


 そう思っていた。思っていたがふと気付いた。


 相方が居ない事に。

 何と言う事でしょう。


 今までコントとか漫才も全部ピン芸人じゃなかった。早速俊介に電話をかける。


「なあ俊介。試合終わりで疲れてるとこ申し訳ないんだけどさ」

「うん、なんだよ改まって」

「俺と一緒にコントしよう」


 ブツッ……。


 秒で切られた。試合終わりで気が立ってるのだろうか。

 さすが殴り合いの戦いをしてきた男は違うぜ。

 また誘うのは後日にしよう。

 気を撮り直し俺は、別の相方候補へと電話をかける。


 プルプルプルプル。


「徹ちゃん、どうしたの?」

「真面目な話なんだ、聞いてくれ」

「え、なに?」

「俺とコンビ組んでくれないか、漫才の」

「え、ま……何それ面白そう!」

 電話越しに明るい笑い声が聞こえてくる。

 金城は楽しい事とか珍しい物に目がないからな。

「そうだろう。よし第一関門突破だ」

「第一関門?」

「あぁ、金城のそのままの見た目じゃインパクトがない。俺は真っ赤なスーツを着る。だからお前は100㎏くらいまで太ってくれないだろ……」


 ブツッ……。


 切りやがったちくしょう。なんだよ。

 せめて見た目だけでも面白くなってくれってんだよ。


 こうしてコンビを組むことを諦め、最高のピンを目指し始めた訳だが、お昼にやっている落語の師匠たちが座布団の上で大喜利をする老舗番組を観てハッとした。


 落語は日本人が昔から愛し・愛され、そして現代もその姿を残し続けられているお笑いじゃないか。

 長く続くのにはそれなりの理由がある。

 100年続くお醤油屋さん。150年続く和菓子店。そこには愛される秘訣があるのだ。

 落語には人を笑わせる普遍的な魅力が隠されている。



 目が開いた瞬間だった。




完結するまで毎日18時に更新されますので

楽しみにお待ちいただければ幸いです。


2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。


全部で4部作ありますこのシリーズ。

恐らく全てがラノベ化されると思いますので

そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。


応援の程、よろしくお願い致します。

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