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【第34話 チャラ男VSうぶな娘】

こんにちは。

御覧いただき、ありがとうございます。


舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」


是非、お楽しみ下さい。


 男の子が近づいてくる。お花畑の緊張がピークに達した。


 どんっ。


 赤はイケメン俳優ばりの顔をして壁ドンをした。

 いや、正確には壁まで遠いもんだから空中に壁ドンをしたのだ。

 空中に壁ドンした人を、そこに居る全員が初めて見た。

 そして何故か音がした。


「俺ら夏の間だけ遊びに来てんだけど、この町の子?」


 赤はイケメン俳優が配信の時に作る声の様に、優しく女の子を包みこんだ。

 彼も別に女の子に対して経験があるとかそんなことはないが、怖いもの知らずなのと、あと単純に性欲は強そうだった。


「そうかな~」

 お花畑は、のけぞったまま天井の染みを数えていた。

 彼女の両手を掴み下に引っ張ると、彼女の顔がぐんっと下を向いた。男の子と目が合う。

彼は跪いてにっこりと微笑んだ。


「一緒に遊ぶとしたら何がいい? 隠れんぼとか?」

「そうかな~」

「いいじゃん! 俺隠れるの得意だよ! どろんって!」


 どろん。よく忍者もので聞く効果音が聞こえた。

 ゲームコーナーが少し煙たくなる。

 そこに彼の姿はなかった。声のみがどこからか聞こえて来る。

 ギャルと赤リボンもバスから立ち上がりキョロキョロ見渡した。


「どう? すごくない!?」

少しエコーがかった声がゲームコーナーに響く。

「そうかな~」

反応がいまいちの様だ。

「分かった! おままごとの方がいいんでしょ!?」

後ろから姿を現し話しかける。

「そうかな~」


 お花畑ちゃんは先ほどから微動だにしていない。正面に回り込んで彼女の顔にグッと近付いてみる。

 目の前に目があるのに彼女の目と目が合わない。

 焦点が合ってない。瞳孔が開ききってるけど大丈夫なのか?


「……もしかして「そうかな~」しか言ってない?」

「そうかな~」

 跪き彼女の右手にキスをしてこう言った。

「俺の事好き?」

「そうかな~」


 今度は彼女の左側に回り込み耳にふっと息を吹きかけてみる。微動だにしない。そのまま耳元で囁いてみる。

「俺の事嫌い?」

「そうかな~」


 最終奥義を使ってみる。必ず彼女を反応させてみせる!


 もはや彼の目的は違うものにすり替わっていた。

 彼女の後ろに回り込み股の間から顔をずいと出した。


「俺ら君らの事ナンパしてんだけど、遊ばない!? YESかはいで答えて!」

「そうk……」

「お疲れ様でしたー!」


 男は引き際が肝心だってじぃが言ってた。

 赤は涙をぐっと堪え仲間の元へ帰っていた。


「おい! どうだったんだよ!?」

「ぶっ壊れたCDみてぇな女だった」

 どかっと座り込み、彼は背中を向けたままこちらを見ない。

 微かに肩が震えていた。



 瞳孔が開ききって笑顔のまま生前硬直したお花畑がカクカクして戻って来た。


「ちゃけばどうだった!?」

「ねぇ遊んでくれるって!? ねぇ!?」

 彼女達に肩を揺さぶられやっとお花畑は現世に帰って来た。


「はっ! すみません。緊張で何を喋ったか覚えてませんわ」

「そんな……」

 赤リボンは肩を落とした。

「そんな狐につままれたみたいな顔すんなって」

 ギャルが慰める。

「その冗談笑えない!」

 肩に置かれた手を振り払って言った。


 店の外から町内の放送が聞こえる。


「「「「「「まさか!」」」」」」


 6人は一斉にゲームコーナーと洋服売り場の間を抜け、屋上駐車場へと飛び出した。


 真っ赤に沈む夕陽が同じ位の背格好から差し込む。



 ~夕焼け小焼けの赤とんぼ~♪



 18時を知らせるチャイムだ。

 この音が鳴ったら何があろうと、何をしていようと家に帰らなければならないのだ。

 残酷なものだ。

 このチャイムが鳴る度に「子供」という成長過程を恨む。門限なんかない、自由な世界へ早く羽ばたきたかった。


「チャイムさぁあぁあああん!」


 ギャルの叫びが夕陽に溶けていった。

 いつもは叫べばこだまするこの町も、今だけはチャイムが無情にも掻き消してしまう。


「帰らなきゃね……」

 青がどこに掛けるでもない言葉を吐いた。

「あたしの馬鹿あたしの馬鹿あたしの馬鹿……」

 もう彼女の膝小僧は青黒くなっていることだろう。

「まあまた次があるよ」青の肩に手を置く緑。

「帰りましょう。アトロ様に怒られちゃいますから」

「帰ろうぜ、いつか会うその日まで」


 男の子達は店内に戻る前に後ろ髪を引かれた。

 振り返ると屋上駐車場の坂道を下る3人の後ろ姿が見えた。

 夕陽に照らされた彼女達の髪が綺麗で輝いていて、そよ風が彼女達の匂いを運んできて、少し胸が苦しくなった。

 振り返ってはもらえない。その悲しみを抱え店内へと向かった。


 坂道を下りながら、彼女達は後ろ髪を引かれた。

 振り返ると店内へ帰っていく背中が見えた。

 肩を組み合ったり背中を叩き合っている。オレンジ色の背中が何故が大きく逞しく、無駄にかっこよかった。何で男子って何でもない事に全力で、馬鹿で……あんなに惹かれるのだろう。

 きっと振り返ってはくれない。それは自分たちのせいだって事くらい分かってる。


 こんな何でもないただの青春の1ページ。

 畳の日焼けの跡のように、くっきりと心に残るのだろう。

 でもそれは家具をどかしてみて初めて気付くのだ。こんなにも心に残っていたのかと。


 ちなみにこの後、ついでに試食して帰ったら3人はクロさんにどちゃくそ怒られた。




完結するまで毎日18時に更新されますので

楽しみにお待ちいただければ幸いです。


2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。


全部で4部作ありますこのシリーズ。

恐らく全てがラノベ化されると思いますので

そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。


応援の程、よろしくお願い致します。

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