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【第33話 ツンデレとロールキャベツ男子】

こんにちは。

御覧いただき、ありがとうございます。


舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」


是非、お楽しみ下さい。


「こんにちは」

 緑の男の子が満面の柔らかい笑顔で話しかける。


 赤リボンの顔の温度が一気に3℃くらい上昇する。

 緑の男の子はぽわぽわしてる様に見えて、やる事は結構イケメンだった。

 赤リボンはその場をずんずんと離れ、腕を組んで背を向けた。


「こ、こんにちは」


 か細い声で挨拶を返した。きっとそれが今の彼女の精一杯だった。

「君たち可愛いからお友達になりたいって」

「っ!?」


 こいついつの間に!?

 再び回り込まれていた。おっとりした性格に見せといてめちゃくちゃ肉食系男子だった。

 すごいグイグイ来る。これが噂のロールキャベツ系男子だろうか。伝説上の存在ではなかったのか。実在するとこんなにも破壊力があるのかと、赤リボンは内心大興奮だった。

 しかしそれを決して表に出すことはないのだ。滲み出ることはあるけど。


「は!? ちょ、何言ってんのよ!」


 それを楽しそうに赤。それを羨ましそうに青が見ている。


 再び赤面させられた赤リボンはまた背を向けて違う方向へ歩いて行ってしまった。

 と言っても完全に逃げる訳でもなく、5歩くらいでちょっと追いかければまた声を掛けられる距離感なのが可愛い。あざとい。計算し尽くされている。

 案の定後ろからポテポテと足音が近付いてくる。次第に大きくなるその音に胸が弾む。


「ひゃっ」


 赤リボンは緑に突如振り向かせられ、両手を握られた。全身の毛が逆立つ。熱いミルクを舐めた時のジジの様に。


「君たち可愛いって言ってるよ?」


 その笑顔はズルい。

 そんな素直な笑顔を私に向けないで!

 その手を振り払う。

 彼の体温が、触れた手の甲にまだじんわりと残っている。

 今度は3歩だけ彼から離れる。

 彼女は手の甲を揉みながらその慣れない温度を馴染ませようとしていた。


「そ、……あ、あんたはどうなのよ?」

「何がぁ?」


 後ろから間の抜けた柔らかい声が聞こえる。

 もうこの声を聞いただけで彼の笑顔が想像出来る。

 これはもうアレだ。完全にアレしちゃってる。


「だから!」


 勇気を持って振り返った。やっぱり彼はニコニコしてこちらを見ていた。

 スカートの裾をギュッと握りしめ胸の動悸を抑えようとする。

 ダメ。このままじゃ声が震えちゃう。


「あんたは……私の事どう思ってんのよ」

 彼女は心を振り絞り男の子に質問した。


【勇気】人はそれをそう呼ぶ。


 緑がゆっくりと目を見たままこちらに近付いて来る。

 思わず目を伏せてしまう。

 そして覗き込まれる。視界が彼でいっぱいになる。


「可愛いと思ってるよ?」


 これ程までにストレートに愛情を伝えられることが、伝えることがあるだろうか。

 見ているこっちが恥ずかしい。

 青春のキャパオーバーだ。

 完全に彼女のコップからは青春が溢れ出していた。


「っ! ば、馬鹿じゃないの!」


 そう言って彼を遠ざけてしまう

 素直になれない自分が恥ずかしい。悔しい。


「そっか。残念~」


 彼の悲しそうな声を初めて聞き、思わず振り返る。彼の背中が見えた。

 これまで何度背を向けても彼は私を覗き込んでくれたのに。

 遠ざかる足音。小さくなってゆく背中。私の恋。

 このままじゃダメだ。大人の女性になるんだから。素直な、立派なレディに。


「ちょっと待ちなさいよ!」

「なにぃ?」


 彼は振り返って立ち止まってくれた。あとは私。



 ててーれてれれ、ててーれてれれ、てれれれれ~……。



 いつもはヘビロテで聞こえる店内の雑音も、今は自分の鼓動だけが響いていた。

 両陣営、固唾を飲んで見守る。


「あ、その……別に仲良くなってあげてもいいわよ」


 きっといびつな笑顔をしていたと思う。

 初めでだったから。

 人生で初めて、勇気を持って素直になったのだ。

 素直になるのは、こんなにも恥ずかしくて、苦しくて、自分が傷付いてしまうんじゃないかって不安になる。

でも大丈夫。その懸命さが、何よりも可愛い。

 ほら、胸を張って。君は今、人生でとっても大切な、素敵な一歩を踏み出したのだから。


 赤リボンの心には詩人の「きむ」が居た。


「うん。分かったー!」


 緑のサスペンダー姿がスタスタと遠ざかって行った。


 え? ちょま、え? 今私何も喋ってない? そんなレベルで彼は素っ気なくボールプールへとてくてく帰って行った。


「それだけ!?」


 彼女の精一杯の勇気は、たった一言で済まされてしまった。

 そこに掛けた気持ちはどれだけ大きくても、100%伝わることはない。


「馬鹿って言われた~」

 少し残念そうに緑は仲間に報告した。

「お前がおっとりしてるからだぞ!」

 そう言って赤が緑の肩をこづいた。

 えへへ~と何故か緑は笑っている。

「いや、お前は頑張ったよ」

 青は自分に出来なかった偉業を目の前に関心していた。


 目と口をまん丸と開いたまま彼女は立ち尽くしていた。

 すかさず2人が駆け寄り救出する。


「ゲッティングしたのか!? なあ!?」

「どうだった~」

 赤リボンは、仲間の所に帰って来た安堵と自責の念により膝から崩れ落ちた。


「あたしの馬鹿あたしの馬鹿あたしの馬鹿……」

 念仏の様にブツブツと唱え続けている。


「ちょ、マジENDってんね! とりま次ね!」

 我関せずだったお花畑も無論戦場へと駆り出された。

「私男の人と喋った事ないけど大丈夫かな~」

 言い終わる前に背中を押され土俵入りを果たした。

「おねしゃす!」

 背中をバシンッと叩かれた。彼女なりの気合入れで応援してくれたのだろう。普通に背中は痛かった。


「ラスト! お前の手にかかってるぞ!」

 青が赤を拝んでいる。

 何だかんだ青も女の子と仲良くなりたいのである。

 そうだよね。小学生くらいの頃って女子と仲良くしてると冷やかしてくる男子とか居たけど、結局は君も女子と仲良くしたいんだもんね。そんなこと言いながら君もいつかは彼女が出来て結婚するんだよって、上から見てる神様は思っていたよ。


「任しとけってんだ」


 屈伸と背伸びを終えた赤は、ボールプールからズンズンと歩いて行った。

 ボールプールを囲っている網から出る時、なんだかプロレスラーがリングに上がる時みたいだな~って、残された2人は思った。


 悠長に背中をさすっているとズンズンと男の子がこちらへ向かって歩いてくる。緊張で身長がどんどん伸びていく。背筋が伸び切ってついにはのけぞり始めた。



 生命を賭けた、最終決戦の始まりである。





完結するまで毎日18時に更新されますので

楽しみにお待ちいただければ幸いです。


2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。


全部で4部作ありますこのシリーズ。

恐らく全てがラノベ化されると思いますので

そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。


応援の程、よろしくお願い致します。

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