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【第31話 異性との遭遇】

こんにちは。

御覧いただき、ありがとうございます。


舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」


是非、お楽しみ下さい。


 スーパーの2階。洋服売り場の一角にその場所はあった。

 静まり返っている店内に響くゲームのピコピコ音。

 誰も居ない、誰もプレイしない各ゲームのOPだけが永遠とリピートされ、誰も入れない100円を開店から閉店まで懇願し続ける。


「100円を、入れてね」


 そんな電子音が静かに響くゲームコーナー。

 田舎だから土地があり余っているのか、このスーパーには誰も利用しない屋上駐車場も完備されており、2階の誰が買うのか分からないセンスの服を1000円で売ってる洋服店と、その対岸のゲームコーナーの間を抜けて通ると駐車場に出る。



 ここのゲームコーナーは青・緑・赤色の子供たちのたまり場だった。

 クーラーの効いた室内でダラダラと時間を潰す。

 小さめのメダルゲーム機の下を覗けば大体メダルが10枚くらいは落ちているものだ。そのメダルをかき集め1枚1枚ゆっくりと丁寧に時間をかけて的確なポイントへ落としていく。


「おい馬鹿! 重なっちゃったじゃん!」

 と赤色の男の子がしっぽをピンと立てる。

「えへへ~。大丈夫だよ~」

 と呑気な緑色の男の子がしっぽをフリフリとさせて言う。

「も~、仲良くしろよな~」

 と困り顔の青色男の子のしっぽはしょんぼりと下を向いている。


 これだけで1時間は余裕で潰せる、彼らにとって最高の娯楽。代わり番こに座ってメダルを落としていく。

「腹減ったな」と赤。

「そうだね~」と緑。

「まだ時間まで少しあるね」と青。


 彼らのルーティーンはとても規則正しく計算されたものだった。

 まず正午。お昼の混雑時を狙って彼らは入店してくる。お母様方やその子供たちでごった返す店内。

 お昼時にはそんなお母様方をターゲットとした試食が開催されるのだ。子供にせがまれて買ってしまう人も少なくないだろう。

 その子供に紛れてウインナーをかっさらい、牛バラ肉(黄金の味)をかっさらい、ホットケーキを食べるのだ。試食だけでデザートまで楽しめてしまうゴールデンタイム。ちなみにちゃんとお昼ご飯は食べてきている。


 2周目だって間髪入れず果敢に向かって行く。

 彼らはまた違う男の子の容姿になり、またしても熱々のお肉を口に頬張るのであった。


 時間との勝負。


 そう、お母様方もさっさと買い物を済ませ、家でご飯を作り食べさせなければならない。彼らだってのんびりはしていられない。


 それを最低でも4周した後、2階のゲームコーナーでくつろぐのである。

 次の狙い目は17時~18時の間。今日はアメリカンドッグを積み上げて売っていたから間違いなく試食に並ぶことだろう。



「異変調べろって言われてもな~」

 と赤が、ゲームセンターにある少し横長の椅子に寝そべって気怠そうに言った。

「こんな平和なのにね~」

 と、緑がボールプールの中から顔を覗かせた。

「サボってたら怒られるかなあ?」

 と青が磁石を持ってパチンコ台の前で何かに集中しながら言った。

 そんな3人の平和を打ち砕く声が、静かな2階フロアに響き渡る。


「この服センスやべぇ!」

「どのタイミングで着ればいいのよ」

「謎だね~」


 可愛らしい女の子達の声が聞こえる。


 3人の背筋がひゅうっと伸びた。

 いつもは暇そうなレジのおばちゃん達の話し声しか聞こえない場所で、女子の声が聞こえたのだ。


 3人に緊張が走る。


 すぐさま赤色の所へ緑色と青色が集合する。

 ゲーム機の陰からそっと声のする方を伺うも洋服が邪魔で見えない。くそ、もう少ししたら身長だってうんと伸びるのに!

 徐々に可愛らしい黄色い声が近づいてくる。高鳴ってゆく心拍数。


「妖気調べろって言われてもな~」

「そんなの分からないわよ」

「私たちまだ子供だも~ん」


 ハンガーラックの間から女の子3人の姿を確認した。

 ギャルっぽくてちょっと大人びた女の子と、大きなリボンと艶のある長い黒髪の女の子。ゆるふわっとした天使の様な笑顔の女の子が間から見えて思わず息を飲んだ。

 いや、むしろ声が出た。あまりの可愛さに。


「ああ!」


 その声で振り向く彼女達。

 彼女達もまた彼らの姿を確認した。

 静かな雰囲気を持ち合わせた怯えた仔犬系男の子。ふにふにした優しそうな笑顔の男の子。ちょっとわんぱくで駆けっこの速そうな男の子と。

 彼女達も息を飲み。そして声が出た。


「あぁ!」

「妖気発見!」

「異変発見!」


 男の子達はたまらずボールプールにダイブした。

 バカーンッ。ボールが飛び散る。


 女の子達はすかさず小さいバスに乗車した。

 ドコーンッ。バスが揺れる。


 彼ら、そして彼女らの様に町を転々とする者にとって、同世代の異性は希少な存在であった。


 小さいバスの中で女子たちはキャイキャイと作戦会議を始めた。


「男子じゃん男子! パネェ!」と、興奮ギャル。

「だ、だだ男子なんて興味ないわよ!」と、取り乱し赤リボン。

「そうかな~?」と、赤リボン覗き込みお花畑。


 一方男子たちもボールプールから顔を出し、揺れるバスを見ながら作戦会議をしていた。

「そろそろ秋だから繁殖したいよな!」とやんちゃな赤。

「どの子と繁殖したいの~?」と呑気な緑。

「お前らは表現が直接的なんだよ!」とビビる青。


 耶志眞(やしま)町スーパーの2階、洋服売り場隣のゲームコーナーにて3対3のナンパ大会が開催されたのである。


「ちょ、どうする? やっぱナンパ!?」と、ギャル。

「ナンパなんかした事ないわよ!」と、赤リボン。

「あの子達かっこいいよね~」と、お花畑。


「おーい! こんにちは!」


 女子チームがバスを揺らしながら興奮していると赤コーデの男の子が突然声を掛けてきた。

 一瞬静まり返る店内。両者見つめ合ったまましばしの時が流れる。



 そして思い出したかのように突如として両者の時が動き出す。思わぬ事態にまたバスは激しく揺れ、ボールプールに荒波が出来る。


「エグいギラついてんじゃん! マジ釣り堀!」とギャル。

「照れてるね~」と、のんびり緑。

「ちょっと! 声かけてきたじゃないの!」とツンデレの赤。

「何いきなり声かけてんだよ!」と、臆病な青。

「行って来なよ~」と呑気なお花畑。

 取り乱す青と女の子達を見て、ケラケラと赤は笑っている。


「ほら行ってこいよ!」

 そう言って赤は青をボールプールから押し出した。

「あんたが行って来なさいよ!」

 そう言って半ギレで赤リボンはギャルを押し出した。


 転びそうになりながら2人はボールプールとバスのちょうど中間までやって来た。ハッと目が合うギャルと青。バッとお互い背を向け姿勢や服装を正す。


 がんばれ~。しっかりね! などと両チームの無責任な声援が聞こえて来る。




完結するまで毎日18時に更新されますので

楽しみにお待ちいただければ幸いです。


2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。


全部で4部作ありますこのシリーズ。

恐らく全てがラノベ化されると思いますので

そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。


応援の程、よろしくお願い致します。

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