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【第28話 バック・トゥ・ザ・君の笑顔】

こんにちは。

御覧いただき、ありがとうございます。


舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」


是非、お楽しみ下さい。


 砂利を踏む音が近付いて来て、振り返ると鈴森さんが立っていた。

 顔色はさっきよりも少しだけ良く、血の気が戻っていた。


「咲良ちゃん、横になってなきゃダメだよ」


 おじさんがいつもの調子で話しかける。

「ありがとうございます。晶さん」

 さっきのおじさんの話を聞いて「晶さん」って言葉がズンと心に響く。


 鈴森さんはおじさんに、俺たちに心配をかけまいとわざわざここまで来てくれたんだ。

 フラつく足で、ここまで歩いて。


「いいんだよ。なんて言っても僕は咲良ちゃんのお父さんなんだからね」

「皆さんにも、ご心配を……」

 鈴森さんが俺たちに頭を下げて謝ろうとした。



 何となく、俺は鈴森さんに謝らせちゃいけない気がした。



「俺はーーーーーーーー!」

 世界一デカい声で、全ての行動をキャンセルさせた。


「何だよビックリした」

「徹ちゃん?」


 とりあえずでかい声を出してそれを掻き消した。

 不安や悲しみ、色んなことがあるかもしれないけど、俺は鈴森さんにこれ以上謝らせたくない!

 謝る必要なんて無いんだ! そんな謝罪の先に! 鈴森さんの笑顔は無い!


「町田徹はーーーー! 鈴森さ……」


 言え! 言うんだ!


「咲良さんのーーー! 笑顔を全力で取り戻す事を! ここに宣言しまーーーーす!」

「町田くん」


 鈴森さんが少し心配そうに俺を見た。大丈夫。おれれれれはいたって冷静だ!!


「バック・トゥ・ザ・君の笑顔!!」


 俺は鈴森さんを指さして高らかに宣言した。

 君の笑顔を取り戻すって。俺は君の昔を知らないけど、また笑って欲しいって。


「お前すげぇな」

 俊介の諦めにも似た感想は、もはや今の俺の耳には届かない。


「今からーーー! 絶対に面白くないけどーーー! 玉砕覚悟で一発芸しまーーーーーす!!!」

「徹ちゃんちょ」

「おい、お前」


「あの! えっと! この世界の全おじいちゃんをーーー! おばあちゃんにしまぁぁあああす!! はぁああああい!!!」


「……」

「……」

「……」

「……」


 今ここが、世界で一番静寂な場所だろう。



「元からあんまり違いがありませんでしたーーーー!!!」

「ちょ、お前それ」

「徹ちゃん!」

「続きましてーーー!! この世界の全麦茶を!! 醤油に変えまぁぁぁああああす!! はぁああああい!!!」


「……」

「……」

「……」

「……」


 それは海よりも静かで、でも温かい静かな場所。いや、全力の恥ずかしさでやってるから温かいってよりむしろ熱い。



「今麦茶が無いので分かりませんでしたーーー!! でもきっと無理でしたーーー!! 続きましてーーー! 全世界のルイヴィトンを中国産にしまーーーす!!!」

「大丈夫! 徹ちゃん大丈夫だから!」


 金城に半ば強制的にネタを止められた。

 息切れがすごい。頭がくらくらする。

 金城をふと見ると腰から崩れ落ちていた。俊介も足にキているようだ。


 お前らはともかく鈴森さんは!?


 見るとやはりいつもと表情は変わっていなかった。くそ。こんな事なら普段から陽キャラで、皆から笑いを取るキャラでいるべきだった!

「くそぉ……やっぱりダメだったか」

「いやダメってか、晶のおじさん大爆笑してるぞ」


 おじさんの方を見ると、もう声にならない笑い声を出していた。あれは1周回った人の笑いだ。呼吸がうまく出来ていない。

「だ、あれ、ちょ、中国産って……全部パチもんって事……?」

 息も絶え絶えに笑っている。

 その様子を見てまた声を出して笑う金城に俊介。


「ありが……」


 鈴森さんの声が聞こえた様な気がして振り返った。



「ありがとう」



 全ての音が消え、俺には鈴森さんの言葉しか聞こえなかった。

 周りの騒音も、自分の息切れも、全てが静かになって、俺は鈴森さんを吸い込まれるように見ていた。



 俺その時、鈴森さんが一瞬微笑んだ。様に見えた。瞬きをするとすぐいつもの表情に戻っていた。



 また喧騒が戻って来る。



「え? ねぇ! みんな!」

「いや、お前、ヒヒ、麦茶無いのにどうやって、確認しようとしたんだよ」

「ひひひ、おじいちゃんか、おばあちゃんか、分かんない時あるよね。ひひひ」

「ヒーヒヒヒ、爆発しちゃうよ、ルイヴィトン、ヒヒヒ」

 皆爆笑してて俺の声が全く届いてない! 


「え、ちょっと! 今鈴森さんさぁ! ねぇ! 今少しだけ! ねぇ!」


 鈴森さんと俺以外の全員がツボに入り、笑いのループから逃げ出せなくなっていた。笑っている自分にまた笑ってしまう。


「ちょ! マジうるせーーー!!!」


 鈴森さんを笑顔にする大冒険がやっと今始まった!


 気がする。


 俺に何が出来るか分からないけど、やれる事をただ全力でやる! 俺はこの夕陽に誓うぜ!

 余談だが、この日家に帰ってうがいしたら血が出た。




完結するまで毎日18時に更新されますので

楽しみにお待ちいただければ幸いです。


2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。


全部で4部作ありますこのシリーズ。

恐らく全てがラノベ化されると思いますので

そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。


応援の程、よろしくお願い致します。

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