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【第27話 咲良の秘密】

こんにちは。

御覧いただき、ありがとうございます。


舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」


是非、お楽しみ下さい。


「咲良ちゃん大丈夫なんですか?」

 金城がおじさんへ駆け寄った。

「うん。まぁちょっと心が渋滞しちゃっただけだよ。今はもう落ち着いてるよ」


 良かった。さすがおじさんだな。大人としての余裕もあるし、安心出来る。

 こーゆー時の父ちゃんってすごいもんな。


「咲良ちゃん、どうしちゃったんですか?」

「あぁ、そうだね。それを君たちには聞いて欲しくてね。少し話してもいいかい?」

「お願いします」


 俺達は真剣におじさんの言葉に耳を傾けた。


「咲良はね、感情を表に出すことを止めてしまったんだ。お母さんを事故で亡くしたショックから」


 え、お母さんを。

 確かに鈴森さんのお母さんはまだこの神社で会えてなかった。何してる人なのかなと思ってたら、まさか亡くなってたなんて。

 そしてそのショックで感情が出せなくなってしまった。鈴森さんの表情の奥にある悲しみはそれだったのか。


 おじさんは更に言葉を続けた。


「ショックが大きいから咲良には事故死した事にしてあるんだけどね、実は美希さんは何らかの事件に巻き込まれて殺されたんだ」

「殺された?」

「そんな事って……」


 急な展開に頭がついていかない。そもそもこんな平和な町で、そんな事件があっただなんて実感が沸かない。


「美希さんは巫女の中でも大きな力を使える方でね。神通力って言えば分かりやすいかな」

「聞いた事はありますけど」


「このたぬき神社の神様に最も近い存在だったんだ。でも、その力を目当てに良くない連中がよくここに来るようになってね。それで咲良を守る為に巫女を辞めて普通に働く様になったんだ。それから徐々に力は弱まっていったんだけど、それでも母さんの力を欲しがる人間が居たんだろうね。それで……」


「いくら子供の頃とは言え、そんな大事件記憶にないな」

「僕が町の人に頼んで隠してたんだ。咲良には、お母さんが殺されたなんてとても言えなかった」

「それは咲良さんが小5の時ですか?」

「そうだね。まだ咲良は11歳だった」

「覚えてる。咲良ちゃんが忌引きで学校休んでた時期があった」


「ちょうど徹もその頃……」


 呼ばれた気がして俊介の方を振り返ると何かを考え込んでいた。

「だから……愛称で呼ぶ事が出来ない」

 俊介はひとつの答えに辿り着いた。


 子供の頃に鈴森さんはそんな辛い思いをしていたのか。

 勢いで友達になって下さいって言ったけど、俺に何が出来るんだろう。その辛い過去を知りもしなかったし、両親だって健在だ。

 そんな俺が、鈴森さんを、鈴森さんの悲しみを理解したり、受け止める事は出来るのか。


「咲良はね、恐いんだよ。自分の愛する人が、大切な人が居なくなる事が。だから誰にも心を開かなくなってしまった。誰とも仲良くならなければ辛くはないから」

 そう言って、おじさんは少しだけ寂しそうに笑って見せた。


 だから、だから自分の父ちゃんの事も晶さんって呼んでるのか。

 そう呼ぶ事しか出来ないのか。失う時の悲しみを知っているから。


「だから……金城さんって」

「でもね! だからと言って君たちには、咲良の友達をやめて欲しくないんだ」

「やめません! だって……わたしたちあんなに仲良しだったのに……」


 俺も完全に同意だ。子供の頃の記憶はないけど、俺達は改めて友達になったんだ。もうそんな悲しい思いはさせたくない。


「そうだね。分かってる。ありがとう。でもね、咲良と仲良くする事でまた発作が起きたら……って思うと、不安にはならないかい?」

「でも……」

「僕はね、怖くなっちゃったんだ」


 少し明るく振舞ってみせたおじさんは、神社から一望出来る耶志眞(やしま)町を眺めて言った。


「実の娘を愛する事が。僕が愛する事で咲良が傷付くのなら、僕は娘を愛する事を止めようって思ったんだ。

でも、自分の娘を「ねぇ」とか「あのさ」でしか呼べないなんてさ、自分から離れた癖にすごく咲良が遠くに行っちゃった気がしてね。

……でもね、僕はしばらくしてやっと気付いたんだ。僕が愛情を無くしちゃいけないって。

だって僕は……僕が咲良の父親なんだからって。それからはすごくちょっとした変化だけど、間の取り方とか、歩き方とか、そうそう! 扉を閉める音なんかでも、咲良の気持ちが少しずつ分かる様になったんだ」


 金城はおじさんの話を聞いて泣いていた。

 俺はまだまだ親の辛さとか大変さとか全然分かんないけど、おじさんが鈴森さんの為に一生懸命頑張って来た事は分かる。

 俺には……今のおじさんにかける言葉が見当たらない。


「だからね! だからこれからも、咲良の友達で居てやってください」


 そう言っておじさんは深々と頭を下げた。

 そこに父親としての覚悟とか、鈴森さんへの想いとか、おじさんの悲しみとか、そんな俺には分からないようなものがいっぱい詰まってた。喉がキュッと締まる。


「そんな、おじさんやめてよ!」

「そうですよ! 僕らはずっと友達だったし、一緒に育った仲じゃないですか」

おじさんは顔を上げると、目に少し涙を浮かべて笑っていた。


「おじさん!」


 気付いたらめちゃくちゃでっかい声で、おじさんを呼んでいた。


 このどうしようもない、何て形容していいか分からない感情を、ただ声のボリュームにだけ乗せた。俺は記憶もないから何も出来ないし、そんな悲しい事経験した事もないから分かんないけど、でもそれでも!

 俺にも何か出来る事はあるはずだ! 俺は鈴森さんの為に何かがしたいんだ!


「俺、子供の頃の記憶があんまり無くって、正直咲良さんの事も覚えてませんでした。でも! でも今は。咲良さんの笑顔が見たいって、そう思ってます!」


「おぉ……やっぱり徹くんだったんだね。うんうん! そうだね! 笑顔が見たいね! みんな! ありがとう!」


 晶のおじさんは俺らの肩をバシンバシン叩いてきた。

 痛い。

 けど、今はそれが嬉しい。俺は俺に出来る事を、精一杯鈴森さんの為にやりたい。




完結するまで毎日18時に更新されますので


楽しみにお待ちいただければ幸いです。




2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。




全部で4部作ありますこのシリーズ。


恐らく全てがラノベ化されると思いますので


そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。




応援の程、よろしくお願い致します。

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