【第25話 友達になりたいよ】
こんにちは。
御覧いただき、ありがとうございます。
舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」
是非、お楽しみ下さい。
クロさん一行が去り、台風の後の静けさが神社に残る。
意図せず。そう、俺は意図せず、鈴森さんとまた会える事が出来た。
お参りのおかげか? だったら毎日お参りするのにな。
あ、そしたらそもそも毎日会えそうだな。いかんいかん。そんなのストーカーじゃないか。
「鈴森さん、こんにちは」
金城が鈴森さんへ話しかける。
俺も話しかけたい! けどそんな勇気はない!
俊介がさっきから肘でぐいぐいする。分かってるよ! ちょっと頑張ってみるから待ってろ!
「あの! 鈴森さんこんにちは! 今何してますか!?」
「境内を掃除しています」
「だと思った!」
「落ち着け」
俺は見れば分かる事を質問してまた恥ずかしい思い出を重ね塗りした。漆の器だったらいい感じだ。
「鈴森さん、今日は巫女服じゃないんだね」
「はい、巫女服は1日を神社の為に費やす時に着る様にしています。基本的には学校から帰ってそのままお掃除したりしますから」
学校が終わってからお家のお手伝いをしてるのか。すこぶるいい子じゃないか。
不釣り合い。
鈴森さんの魅力を発見する度にそう思って縮こまってしまう。
「そうだ! またせっかく会ったんだし、お喋りして帰ろうよ! 鈴森さんも大丈夫?」
ナイスアイディアだ金城! いいぞ! もっとやれ!
「はい、構いませんが」
プゥプゥプォーン!
金城さん。あなた最高です。ありがとうございます。
俊介が俺をまたぐいぐい押してくる。
ちょちょちょ待てって。いきなり隣は無理だよ。あ、ほら! 金城が隣に座ったし!
「私たち、小学校の頃ほとんど同じクラスだったんだよ」
ほら話し始めちゃった! とりあえず俊介座れ!
こうして俺は俊介を先に座らせてその隣に、鈴森さんから遠い方の隣に座った。
いやお前、いきなり隣は無理だよ。
知ってるか? 女子の隣には選ばれし者しか着席を許されてないんだぞ。席替えであからさまに外れ引いたみたいな顔をされた、俺の気持ちがお前らに分かるか!?
「まあ2クラスしかなかったしね」
「へーそうなんだ!」
よし! 何とか会話に入ったぞ!
「お前は初めてみたいに聞いてんじゃねぇよ。当事者だろ」
「おう! すまん! 忘れた!」
俺の話はいいの! 今鈴森さんのターンだろ!?
「私たちは6年間ずっと同じクラスだったんだけど、鈴森さんとも6年生の時以外は全部同じクラスだったんだよ!」
なななんと! 鈴森さんとそんなにも長い時間一緒だったのか! 一体俺は何を見てきたんだ!
自分の目玉をえぐり抜きたい気持ちになった。この役立たずの目玉め!
「金城さん、霧崎さん、町田さん」
うぉ! 急に俺に話を振られた。ビクっとしたぁ~。
「なに?」
「私たちは……お友達だったのでしょうか?」
「うん。友達だったよ」
そんな事スマートに言えるお前が羨ましいよ、俊介。
「私たち、よくここで遊んでたんだよ」
「おう! らしいよ!」
どむっ。俊介のパンチが俺の胸に沈んだ。
お前の弱パンチは俺にとっての強パンチなんだよ。仕方ないじゃん。覚えてないけどさ、俺も会話に参加させてくれよ!
「そうですか」
鈴森さんの表情が少し曇った。様に見えた。
「やっぱり覚えてないんだね」
金城も少し寂しそうな顔をした。
「すみません。少し子供の頃の記憶が曖昧で」
「謝る事ないよ」
「そうだよ。覚えてないのはこいつも一緒なんだし」
馬鹿野郎! 余計な事言ってんじゃねぇ!
ぱすっ。
どむっ!
パンチしたらパンチし返された。
痛い。
共通点がある。嬉しい。
「私ね……咲良ちゃんが急に皆とよそよそしくなって、名前で呼んでくれなくなって、それでね……寂しかったんだ。嫌われちゃったのかなって思って」
「そうだったんですか。すみません」
「だからね! また前みたいに咲良ちゃんって呼んでいい? またお友達になろうよ!」
「俺も。友達になろう」
「僕も友達になりたいです!」
俺はここぞとばかりに名乗り出た。このビックウェーブを逃す訳にはいかない。
「お前はもうなってるだろ」
「いや、そうなんだけどさあ! 俺だってまた友達になりたいよ!」
だって俺だけこの流れで友達になれないの寂しいじゃん! いや、最初に友達になったのは俺だよ!? でもさあ!
「徹ちゃんに、俊ちゃんに、彩夏ちゃんってまた呼んでよ」
「ありがとうございます。すごく嬉しいです。けど……」
鈴森さんは立ち上がって、少し俺達から離れた。
「けど……?」
「こんな時、どんな顔をしていいのか。どんな言葉を発していいのか分からないんです」
少し寂しそうな背中。表情は見えないけど伝わってくる。
「え?」
「私は、皆さんの事を愛称で呼ぶ事が出来ないんです」
「わたしたちの事嫌いになっちゃった?」
「嫌いじゃないです! 私は、皆さんの事が、す、す……」
振り返った鈴森さんの顔色は、どんどん血の気がなくなっていった。
「鈴森さん、大丈夫?」
俊介が鈴森さんに声をかけたその時。鈴森さんは苦しそうに地面へ座り込んだ。
呼吸が激しく乱れ息を吸うのが辛そうに喉が鳴っている。真っ白な肌が更に白くなっていく。
鈴森さんはその場に座り込むように倒れた。
2025/06/08まで毎日18時に更新されますので
楽しみにお待ちいただければ幸いです。
2025/06/08で「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。
全部で4部作ありますこのシリーズ。
恐らく全てがラノベ化されると思いますので
そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。
応援の程、よろしくお願い致します。




