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【第24話 願い事】

こんにちは。

御覧いただき、ありがとうございます。


舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」


是非、お楽しみ下さい。


 うへぇ。


 石段を見上げるといつもこんな声が出る。

 長い・辛い・しんどそう。でもこれを登り切れば鈴森さんに会えるかもしれない!


 って思って……頑張れるのも……中腹……までだな。

 俺は文字通りひぃひぃ言ってる。くそぅ。さっさと先に行く俊介と金城が恨めしい。


「がんばれ~!」


 金城がにこやかに、こちらに手を振っている。

 蝉の声があまりにデカいもんだから、金城の声が小さく聞こえる。こんな夕方までご苦労なこって。



 やっとこさ頂上に着いて、俺たちは参拝のミッションへと向かう。

 早く息を整えないと、こんなダサい姿を鈴森さんに見せる訳にはいかない。


 チャリンチャリーン。


 俊介と金城は財布からお金を取り出し賽銭箱へ投げ込んだ。

 俺の財布には約2千円。こいつらみたいに百円もの大金を入れる訳にはいかない。

 まあ音がすりゃ何円でもいいだろ。俺は1円を投げ入れた。


 カコッ、カッ、チャ……。


 さすがに1円とバレる音がした。少し恥ずかしい。

 5円とか10円とか、今度からは少し重たい硬貨を投げよう。


 ガランガランガラン……。パンッパンッ。

 2人は鈴を盛大に鳴らして、2回拍手した。


 あ、いいな。俺も鈴鳴らしたい。

 俊介にガッと手を掴まれ制止された。なにぃ!? こいつ目を瞑ったまま俺の手を止めやがった!

 無駄に俊介の事をカッコイイと思ってしまう。これがボクシングやってる奴のあれか。あの~、なんかこう、殺気とかを察知する能力! 円!

 仕方がないから俺も2人に続いて手を2回叩き、2人がペコペコするので俺もペコペコした。


 何お願いしようかな。鈴森さんと会えますように?

 いや、ちょっと邪すぎるか? だったら1円じゃ足りなかったか?

 いや、ちょっと待てよ。金の多い少ないで願い事左右すんの? なにそれ? 何か神様らしくねぇじゃん? 貧乏学生が入れる千円と、金持ちが入れる千円じゃ全然違うだろ? 要は気持ちよ。


 なんて事考えてたら、もうとっくに2人は拝み終えて隣には居なかった。


「二礼二拍手だぞ。お参りする時」

「へー」


 実際あんまり興味はなかった。別に知らなくても死なないし。

 あ、ちょっと待てよ。でもこれが鈴森さん家のあれだから、それは勉強しとかないとな。

 うん。二礼二拍手な。大丈夫。もう覚えた。


「ところでお前らは何お願いしたんだよ」

「それ聞くなよな」

 え、普通気にならない? 人のお願いって。

「ふっふっふ~。私はねぇ~……ヒ・ミ・ツ」

「うん、腹立つ! 可愛い女の子がやってたらめたんこ可愛いんだけどな!」

「あー! 差別―!」

「可愛い女の子とお前じゃ【差】があって【別】なんだから当然だろうが!」

「分かんないかね~、この可愛さが」

「一生分かんねぇよ」


「あら、こんにちは」


 美人の声が聞こえる。もう声が美人だ。振り返るとロノさんと子供3人。そしてクロさんが居た。

「「「こんにちは~」」」

「おうお前ら! 神社に参るとは感心感心!」

 子供たちは腕組みをしてふむふむと納得してみせている。


「さあお前らもお参りだ! 5円玉構えい!」

 3人はポッケから5円玉を取り出し天高くかざしてみせた。

「突撃―!」

「「「うわぁあああい!」」」

 3人は一斉に賽銭箱に突撃していく。

「このボケェ!」と青色。

「このアホォ!」と緑色。

「箱置いてりゃ金が入ってくるったぁいいご身分だなぁ!」と赤色。


 クロさんとロノさんも一緒にお参りしている。誰一人ガラガラ鳴らさないし、お辞儀も拍手もしてない。本当に参る気ある?


「この世界の女子高生全てが、俺に惚れますようにー!」


 おいあんた。何願い事してんだよ。

「これでよしっと! おいお前ら!」

「「「はぁあい!」」」

 子供たちが一斉に金城の元に駆け寄ってきた。


「ねぇねぇ、じぃに惚れた?」と青。

「じいの事好き?」と緑。

「YOU付き合っちゃう?」と赤。


「え、あの、ごめんなさい」


「「「「神様の嘘つきー!」」」」

 4人はびぇええんと泣いてみせた。え、何この茶番。


「5円玉入れるんだね。ご縁があるように?」

 金城はすがりついて泣いている3人に聞いた。

「「「お金勿体ないから!」」」


「おいおい」

 そら俊介も呆れるわ。

「神社って二礼二拍手ですよ」

 早速取り入れた知識をひけらかす俺。つい1分前まで知らなかったなんて言えない。


「あ? いいのいいの! 要はここだ、ここ」


 クロさんは誇らしく自分の胸を叩いてみせ、子供たちも胸を叩いてみせる。

 つい1分前まで同じ事考えてた。町で他人と服が被ったくらい恥ずかしい。


「おい町田ぁ」

 クロさんがぬらりと近寄って来る。

「え、あ、はい」

「お前【運命】って信じるか?」

「あ、いや、ちょっと分かんないですね」

「別にどっちが正解とかねぇよ。お前はどう思うんだよ」

「良かったら答えてあげて?」


 ロノさんがはんなりとしている。今日もセクシーだ。

 ロノさんがそこまで言うのなら男として答える以外の選択肢はない。


「まあ運命を感じた事もないですしよく分かんないですけど、でももし運命ってのがあるなら、僕のこの平凡な日常を運命に定めた奴に会ってみたいですね」

「会ったらどうする!? ぶん殴るか?」

 そう言ってクロさんはニヤリと笑った。

「いや、殴るとかはないですけど何でこんな平凡な日常を僕の運命にしたのかなって」

「そうかそうか! わーっしゃっしゃっしゃっしゃ!」

 クロさんは満足そうに笑った。


「少年少女よ! 楽しめ人生を! 楽しい事は正義だ! 逆に言えば、楽しい事しか正義じゃねぇ! わーっしゃっしゃっしゃっしゃ!」

 クロさんのでかい笑い声が神社に響く。

 子供たちも腰に手を当てて一緒に笑っている。

「はぁ……」

 この人の話についていくのは大変だ。


「騒がしいと思ったらクロさん。お帰りになられてたんですね」


 声のする方を振り向くと鈴森さんが制服姿で立っていた。騒がしさ万歳! 掃除の途中だろうか。竹箒を手に持っている。


「「「お姉ちゃん~!!!」」」


 子供たちがすぐさま鈴森さんの元へ駆け寄っていく。子供の特権をフル活用して、鈴森さんの太ももやお、おぱ……胸に頬ずりをしている。

 子供万歳! 大人畜生! 俺は心の中で涙した。


「賑やかって言ってよ咲良ちゃ~ん」

「いつもご迷惑をお掛けしてます」

 この人は鈴森さんとも面識があるのか。本当に顔の広い人だ。

「いえ、大丈夫です」

 鈴森さんの髪は既にぼさぼさにされ、右へ左へ遊ばれている。動じないのが凄い。体幹がしっかりしてるんだな。


「まっ! そーゆー事だ! 人生を謳歌しろよ思春期共! わーっしゃっしゃっしゃっしゃ! おい行くぞチビ共!」

「「「はーい」」」

「お先に失礼いたします」

「競争だぁ!」青。

「よぉ~し!」緑。

「じいを階段から突き落としたら勝ちね!」赤。

「待て待て待て! 死んじまうよ! 死なねぇけどなぁ!」


 クロさん一行は嵐の様に登場し、そして嵐の様に去って行った。




2025/06/08まで毎日18時に更新されますので

楽しみにお待ちいただければ幸いです。


2025/06/08で「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。


全部で4部作ありますこのシリーズ。

恐らく全てがラノベ化されると思いますので

そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。


応援の程、よろしくお願い致します。

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