【第20話 親の心子知らず、奥歯の名前は親知らず】
こんにちは。
御覧いただき、ありがとうございます。
舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」
是非、お楽しみ下さい。
咲良の足取りは軽く、いつもは長く続くこの石段も今日は半分くらいの短さに感じた。
トントントントン……。リズムよく石段を登って行く。
シャッシャッシャーッシャーッ。遠くから竹箒の音が響いてくる。
鳥居をくぐると晶が掃き掃除をしていた。
「おぉ、おかえりなさい。おや!? 咲良さん! 何だか嬉しそうだね!」
「分かりますか?」
自分の顔に手を当てる。
「分かるよ。親だもん」
自慢げに晶は言った。
「晶さん、友達というのは笑顔が見たいものだそうですね」
「おぉ! うん! そうだね! 笑顔が見たいね!」
晶は心底嬉しかった。娘の口から数年ぶりに【友達】という言葉を聞けて、少しだけ嬉しそうな気持ちが滲み出ている咲良を見られて、晶の心は温かくなった。
「僕も、咲良さんの笑顔が見たいよ」
晶はエヘヘと笑った。
「晶さんは私の友達ですか?」
「うん。咲良は純粋だ。純粋過ぎる! とっても良い子! でもそういう事じゃないんだ」
晶はほんの少しだけ胸がキュッとした。
「う~ん。友達っていうか、それよりも前に親だからね」
晶は優しく微笑んだ。ここまで頑張ってこれたんだ。焦ってはいけない。これからさ。これから。晶は自分に言い聞かせた。
「なるほど。難しいですね」
恐ろしいくらい真っ直ぐに育った我が子を見て、晶は心の中で深く頷いていた。
「ま! そう難しく考えなさんな」
ここは時は司る耶志眞神社。時間というものは凄い力を持ってる。きっと時間が解決してくれるさ。山の石が丸くつるつるになるくらい、時間ってのはすごいんだ。晶はそこの神主らしい悟りを開いていた。
「それでは、お風呂にいって来ます」
咲良はスッと家の方に向かって歩き出した。完全に油断している姿を見て、晶は渾身のギャグを咲良にお見舞いすることにした。
「うん! 行っトイレ!」
だっはっはっはっは!
晶は腰を反らして笑った。渾身のオヤジギャグをくらわせてやったのだ。
「面白いっしょ!?」
そこにはいつもの、無表情の咲良が立っていた。
「……トイレには行きませんが?」
「……うん」
咲良は首をかしげ家へと向かった。純粋なものは怖いなと晶は改めて思った。
「まあ、そう簡単には行きませんか」
晶はぼんやりとした月を見上げた。
「子育てって難しいね、美希さん」
エプロンの少しくたびれたクマをひと撫でした。時間というのはすごい。どんな悲しみも、喜びもゆっくり溶かしていく。クマのところにはいっぱいの毛玉があった。
完結するまで毎日18時に更新されますので
楽しみにお待ちいただければ幸いです。
2025/06/08までに「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。
全部で4部作ありますこのシリーズ。
恐らく全てがラノベ化されると思いますので
そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。
応援の程、よろしくお願い致します。




