【第17話 卒業しても地元で会えんだろ?】
御覧いただき、ありがとうございます。
舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」
是非、お楽しみ下さい。
「俺はもう帰るよ」
俊介がバッグを拾う。
「えぇー! 今日は神社行かないの?」
「俺は減量中で試合を前にしたボクサーでもあり、いち受験生でもあるんだぞ」
「真面目だね~俊ちゃんは」
そう。俊介は俺らと一緒に居るのが不思議なくらいに優等生なのだ。子供の頃から一緒に遊んできたはずだぞ? Why?
「なあ、徹はちゃんと将来の事考えてんのか?」
「将来? なんだその漠然としたもの。今日の夕飯の事くらいしか考えてねぇよ」
俊介が少し呆れて言った。
「彩夏ちゃんは俺たちと遊んでっけど、その分見えない所で努力してんだよ」
確かに金城も成績は上から数えた方が断然早い。いや、だからってそれを俺に求められても困る。俺だって家に帰ったら動画見たり、アニメを見たりすこぶる忙しいのだ。
「俺らもいつかは卒業しちまう。大学に行くか就職するかは知らねぇけどバラバラになっちまう。俺は嫌なんだよ。このままお前に何も……」
急角度な真面目雰囲気に耐えきれなくなった俺は俊介の言葉を遮った。
「何だよ。卒業なんてまだ先だから心配すんなって! それに卒業したってまた地元で会えるんだからさ。そんな寂しがんなよ」
「ぬるい事言ってんなよ」
俊介がいつにもなく真剣なトーンで俺を刺した。正直ビビった。なんだよ。俺が何したんだよ。何にもしてないんだよ。
「俊ちゃん」
金城が少し心配そうに俊介に話しかける。
「分かった。悪かった」
俊介はスッといつもの俊介に戻った。
「お前、少しは彩夏ちゃんと勉強しろ。じゃあな」
そう言って俺の肩を叩き颯爽と去っていった。
カナカナカナカナカナカナ……。
「んだよ、あいつ。急に真面目かよー!」
虚しいツッコミがヒグラシの鳴き声に溶けていく。
「ってなあ金城!」
「うん……」
「なんだよ金城。どうしたんだよ」
と、いつものノリで話しかける。どうかしてるのは俺の方だ。
「徹ちゃんはさ、大学行きたいって思ってる?」
「大学ねぇ……」
正直大学って言われても全然ピンと来ない。卒業だってまだまだ先の事過ぎて実感わかないのに。とりあえず大学に行くって謎の風習もよく俺には分からない。
俊介に説教された理由は分かる。ただ将来何がしたいのか何も決まってないのにどこに行けってんだよ。【将来の夢探し大学】なんてあるならそこに行くけど、きっとそんな奴はバイクで日本1周した方が早い。
「私はね、大学に行きたいって思ってるよ。だから徹ちゃんも……」
「なに? 俺も勉強して一応大学行けって? お前は母親か!」
「いや、うん。ごめんね」
ダメだ。全然笑わねぇ。し、俺も笑えねぇ。
「そろそろ帰るね。じゃあね徹ちゃん! ちゃんと勉強しろよ~!」
そう言って金城は俺の肩をパシンと叩き去っていった。
「じゃあ……な……」
カナカナカナカナカナカナ……。
いつもの金城。を演じてる金城。いつもの俺。を演じてた俺。
「分かってるよ。俺が今何をしなきゃいけないかくらい」
やりたい事を探さなきゃいけない事も。何となく大学くらい出とかないと、何となく社会的信用もなくて、何となくいい会社に入れなくて、何となく給料も低い事くらい。何だよ「何となく」って。
やりたい事探したいよ、見つけたいよ俺だって。何の目標もなくただ働き続けるの? 40年くらい生きていく為だけに生きるなんてそんなのは漠然と嫌で、かと言って、やりたい事を探すのも違う気がするんだよな。
そんなのはさ、生きてりゃ自然とこんな事したい! って気持ちが向いてくるもんだと思ってたよ。でも現実は家に帰って漫画見たりアニメ見たりしてただ過ぎていく日常。そんな中で、俺は何を大切に生きていけばいいんだよ。
そもそも生きるってなんだ? 俺は何の為に生きてるの? 俺は俺のこの視界と脳みそで生きててこの世界の主人公みたいな気がしてるけど、皆もそうなの? 俺が死んだらこの世界はどうなるの?
あ、ダメだ。深みにはまった。これは夜の天井に吸い込まれそうな、あの感じだ。俺は誰なんだろう? そして何がしたくて今ここに居るんだろう?
「なーにやってんだか……」
当てもなく無意味に、そして無意識に。そう無意識に歩き回っていると思わぬところに辿り着いた。
完結するまで毎日18時に更新されますので
楽しみにお待ちいただければ幸いです。
2025/06/08で「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。
全部で4部作ありますこのシリーズ。
恐らく全てがラノベ化されると思いますので
そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。
応援の程、よろしくお願い致します。




