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【第11話 嵐の後の静けさは密閉性がすごい】

こんにちは。

御覧いただき、ありがとうございます。


舞台原作「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」


是非、お楽しみ下さい。


 玄関は再び静寂を取り返した。夏の虫がりんりん鳴いている。晶はほっと胸を撫で下ろし、彼らの去っていった方から咲良へと視線を戻した。


「咲良。もう大丈夫だよ」

「……」

「さく……」


 晶が振り返るとそこには両手でしっかりと耳を塞いだ咲良がただこちらを見つめていた。


「咲良? もう大丈夫だよ?」

「……」

返事も反応も無い。


「あっ! あれか! お父さん耳を塞ぎなさいって言ったからか! いい子! 我が子すんごいいい子!」

 目と口を大きく開き、晶は「だっはっはっ」と笑った。

「……」


 ちりりり……。

 虫の音が妙に鮮明に聞こえる。


「え? すごい密閉性だね。父がこんなにも嬉しそうに目の前で話しているのに、少しは疑問には思わないのかい? もうだってほら、2人が帰ったのだって見てたよね? もしも~し?」


 ちりりりりり……。


「うん! お父さん寂しい!」

 晶がジェスチャーで耳から手を外す仕草をしてみせる。


「……」

「うん! 無反応! そっか! 目の情報しかないなら文字だ!」


 晶は電話横のメモ帳に「咲良、もう大丈夫だよ」と書いて見せた。

「……」


こくっと一度頷き、曇りなき眼で再び晶を見据えた。両手を耳に添えたまま。


「え、嘘? これもダメ? もう咲良は一生耳が聞こえないの? 父のせいで? 辛い。辛すぎる。私が耳を塞いでって言ったばっかりに、咲良の聴覚を奪ってしまった! もう……もう耳を塞がなくていいというのに……」


 膝から崩れ落ち晶は今にも泣きだしそうだ。ふと咲良を見ると両手はぴったりと体の横に置かれていた。


「あれ?」

「……晶さん、終わりましたか?」

「え、あ、うん。聞こえてたの?」

「はい」

「あ、そっか。もう大丈夫だよって言ったのも?」

「はい」

「手、外してよかったんだよ?」

「そうだったんですか。脅威は去った。との認識でした」

「そっか。それはお父さんの日本語不足だったね」

「そうですね。日本語は正しく使いましょう。それでは夕ご飯の準備をしてきます」

「あ、うん」

「では」

「あっ! 楽しんディナー! だっはっはっはっは!」

「私にとって準備はそんなに楽しくありません」

「あ、うん。そだね。父さんもだよ」


 パタン……。扉が寂しい音を立てて閉まった。


 ちりりりりり……。


「あれがボケだとしたら後はお父さんのツッコミ次第だな。可愛いやつめ。だがまあ欲を言うなら、またあの頃みたいに笑って欲しいな。父さんは」


 晶はエプロンを締め直し台所へと向かった。今晩は金目鯛の煮つけである。




2025/06/08まで毎日18時に更新されますので

楽しみにお待ちいただければ幸いです。


2025/06/08で「バック・トゥ・ザ・君の笑顔」は完結します。


全部で4部作ありますこのシリーズ。

恐らく全てがラノベ化されると思いますので

そちらも合わせてお楽しみいただければ嬉しく思います。


応援の程、よろしくお願い致します。

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