表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/31

孤独の中の不信感

クリスマスイブの日、桜はおしゃれをして尚樹の部屋にプレゼントを持って行った。期待に胸を膨らませてドアを開けたが、尚樹はプレゼントを見て一言、「趣味じゃない」とつぶやいた。彼の無表情な反応に、桜は一瞬固まった。


尚樹は桜にプレゼントとして、子供っぽいネックレスを渡したが、その後すぐにパソコンの画面に向かい、ネットゲームに没頭し始めた。


桜は静かに笑顔を作ろうとしたが、心の中では涙が溢れそうだった。彼女がプレゼントを選んだ時間と気持ちは、尚樹にとってまるで意味のないものだったかのように感じられた。


桜(心の声)

「私の気持ちは、彼にとってこんなにも軽いものだったんだ…」


尚樹からもらったネックレスをつけて、桜は舞香と食事に出かける。しかし、舞香はそのネックレスが安物だと笑い、尚樹が選んだという話も嘲笑する。


舞香の言葉に傷つくが、桜は「気持ちだから嬉しかった」と自分を納得させようとする。しかし、舞香の嘲笑に心の奥底で何かが壊れていく感覚があり、尚樹との関係に微妙な違和感を覚え始める。


舞香: 「そのネックレス、どこのブランドなの?高校生っぽくない?」


桜: 「うん、私はあんまり詳しくないけど、尚樹からのクリスマスプレゼント、嬉しくて…」


舞香: (スマホで調べつつ)「二千円の安物じゃん!しかもそのデザイン、冗談でしょ。私なら絶対身に着けないわ、ハハハ!」


桜は内心ショックを受けつつも、笑って受け流そうとするが、舞香の笑い声が心に響く。初めての彼氏を持ちたいという欲望から、尚樹に対して完全に不信感を抱きながらも、彼の言葉を切り捨てられない。孤独感が尚樹との繋がりを断ち切れなくさせている。


桜は、初めての年越しを尚樹と一緒に過ごせることを楽しみにしていた。彼に「年越しは一緒に過ごそうよ」と誘われたとき、嬉しくて少し浮かれていた。年末には特別な食事や一緒に見るテレビ番組を想像し、彼の家に泊まる準備もしていた。


しかし、年越しの直前、尚樹は急に「友達と初日の出を見に行く」と言い出した。彼が外出する準備をしている姿を見た桜は、驚きと疑問が心をよぎった。「なぜ私を泊まりに誘ったの?」と問いかけたい気持ちを飲み込み、ただ黙って見送るしかなかった。


桜が年越しを一人で過ごしていると、突然、尚樹のお母さんが部屋に現れた。優しい笑顔で「尚樹がこれ、食べさせてって言ってたから」と言いながら、桜にカップ蕎麦を差し出した。ありがたいことに、海老の天ぷらまで乗せてくれていて、少し特別感があった。桜は恐縮しながらも「ありがとうございます」と感謝を伝えたが、心の中では複雑な思いが渦巻いていた。


「彼がわざわざ母親に頼んでまでこれを渡してくるなんて、私と一緒に過ごす気が本当にあったのかな?」と、桜は疑問に思った。年越しという特別な夜に、なぜ尚樹は友達と出かけてしまい、自分はこうして一人きりでいるのか。それを問いただすわけでもなく、ただ彼の家で一人、もらったカップ蕎麦をすすりながら、静かな夜を迎えた。


蕎麦を食べながら、桜はふと天ぷらを見つめた。桜は、母の心遣いを感じながらも、なぜかその夜の天ぷらが味気なく感じられた。目の前の料理を見つめながら、「私は今、ここで何をしているんだろう?」と、静かな孤独が心に広がる。普段なら喜んで食べる天ぷらも、この夜は重たく感じた。家ではなく、他人の家で一人きりで過ごす夜に、桜は自分がどれほど孤独なのかを改めて実感する。


桜は年越しを一人で過ごしながら、心の中に渦巻く思いを整理できずにいた。「尚樹は本当に私のことを大切に思っているのか?」その疑念は、彼の言動に対する不信感を増幅させていた。


翌日、尚樹から連絡があった。「昨日は楽しかった。初日の出最高だったよ。」と軽い調子で言ってきた。桜は思わず言葉を詰まらせた。「私は一人で年越ししたのに、どうしてそんなことが言えるの?私が寂しかったこと、全然気にしてないの?」心の中で葛藤が続く。


「そうなんだ。よかったね!」と、桜はあえて明るい声で返事した。彼に心配をかけたくなかったからだ。しかし、心の奥では、彼との距離がますます広がっていくのを感じていた。


桜は尚樹との関係がますますぎこちなくなり、自分の中で感じている苛立ちや失望感が膨れ上がっていくのを感じていた。彼の言葉や行動に疑念を抱き、心の中で何度も自問自答する日々が続いた。「私を利用しているだけなのか?彼にとって私は一体何なのか?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ