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実感する

……ん? しまった、寝てしまったか。


「ウォン(起きたか)」


「すまん、ギン。俺はどれくらい寝てた?」


「ウォン(精々、三十分といったところだ)」


「そうか、疲れが溜まっていたのかもな。ともかく、見張りをありがとな」


「ウォン(気にするでない)」


「それじゃ、探索再開といきますか」


水筒に煮沸した水を入れて、再び森の中を進んでいく。

そして山菜や果物を取りつつ、更に一時間ほど経つとギンが立ち止まった。


「ウォン(主人よ、待つのだ。おそらく、この近くに生き物がいる)」


「なに? ……わかった、それでは出来る限り気配を消して進もう」


俺はギンを先導させ、慎重に歩いていくと……俺の視界に大きな生き物が入る。

大きさはギンより少し小さく、短い手足に太い胴体をしていた。

でかい鼻と二本の牙が特徴的な魔獣……ワイルドボアだ。


「ブルルッ……」


「大きいな。俺の知るワイルドボアより、一回り以上でかいぞ」


「ウォン(うむ、我が住んでいた森の個体よりも大きい。よほど、良いものを食べていると見える)」


「天敵である人や妖魔が少ない故か。しかし、奴らは大食漢だ。いずれにしろ、放っておいたらいくら自然が豊かでも危ない」


俺の住んでいた場所でも作物を荒らすことから、見つけ次第討伐するという決まりがあったくらいだ。

すぐに数を増やすし、奴らは気性が荒いから家畜にも向かない。


「ウォン(あれなら食いでもある……やるか?)」


「ああ、そうだな。あれを持って帰るとしよう……ギン、俺がやっても良いか? 鈍った体を、少々動かさんといかん」


「ウォン(うむ。ならば、我は逃げないように回り込む)」


「ああ、頼む。それじゃ、俺はここで待機しよう」


俺は草むらの陰に身を潜め、じっと機会を伺う。

そして、数分後……ギンの動きが止まった。

用意ができたの合図なので、俺はワイルドボアの前に飛び出す。


「ブルァ!?」


「よう、ワイルドボア。すまんが、相手をしてもらおうか」


「ブルルッ!」


「グラァ!」


振り返り逃げようとするワイルドボアの後ろに、ギンが立ちふさがる。

やつは俺とギンを見比べ……俺の方へと突進を仕掛けてくる!


「俺の方が与し易いと見たか——なめるなよっ!」


「ブルッ!?」


「グヌゥゥゥ!」


二本の角を両手で受け止め、押し合い状態になる。

俺は足と腰に力を入れ、どうにかその場に踏み止まる!

身体強化の魔法を使っても良いが、ここは敢えて肉体のみの力で!


「ウォン!(主人! 手伝うか!? もう若くないのだ! はやく魔力を使うのだ!)」


「いらん! 引退を考えていたとはいえ、まだまだ魔獣には負けん——ゼァ!」


「ブァ!?」


相手の角ごと身体を持ち上げて、横投げで木に叩きつける!

相手はすぐに起き上がるが、その体はふらついていた。


「ふんっ!」


「ブルルッ!? ……」


その隙を突き、背中の大剣で上段斬りをし……首だけを切断する。

すると、ワイルドボアはゆっくりと地に伏せた。


「ぜぇ、ぜぇ……やはり歳だな、少し戦場を離れたらこれだ」


「ウォン(魔力を使ってないとはいえ、明らかに身体が鈍っているな)」


「情けないことにな……これは、一から鍛え直さんといかんな」


「ウォン(やれやれ、ゆっくりするのではなかったのか?)」


「なにを言う。健康に過ごすためには、健全な肉体がなくてはいけない」


とか言い訳してみるものの……結局、体を動かすことが嫌いじゃないんだなと実感する。

適度に動き、適度に働き、適度に遊ぶ……そういう生活を目指すのも良いかもしれないな。


「ウォン(それより、早く処理をするのだ)」


「そうだな、早くしないと味が落ちてしまう」


「ウォン(汚れるのは嫌だが、我の背中に乗せると良い)」


「ああ、すまん。それじゃ、先ほどの川に急いで戻ろう。なにも気にしなければ、十分ほどで着くだろう」


そして俺とギンは、来た道を急いで戻っていくのだった。


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