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トロール

 ……間に合ったか!


 ギンを全力で走らせ、どうにかトロールの前に立ちはだかる。


 誰が襲われているのかはすぐにわかった。


 それは俺の大事な戦友達と、守るべき姫様だった。


「ブァァァァ!」


「調子にのるなよデカブツが——もう二度と、俺の目の前で大切な人を死なせやしない」


「先輩!」


「ア、アイク殿? ……お兄さん?」


 一瞬だけ振り返ると、そこには知己である二人がいた。

 どちらも、俺にとってかけがえのない人達だ。

 当然、近くにいる元部下達も。

 ただ……セレナ様の顔が固まっているのが気になる。


「何故、二人がここにいるのかはわからない。とにかく……ナイル、セレナ様を連れて下がってろ。こいつは、俺が叩き潰す」


「はっ! この命に代えても!」


「………」


「姫様! ぼけっとしてないで下がりますよ!」


「ふぇ!? え、ええ!」


 三人が馬車に下がるのを確認し、トロールと向き合う。

 ギンが威嚇しているので、相手も警戒している。

 本能で生きる妖魔とはいえ、中級ともなればギンの強さはわかるのだろう。


「ギン、こいつは俺がやる。お前はガルフを乗せて、周りの雑魚を片付けてくれ」


「ウォン!(うむっ!)」


「任せるのじゃ!」


 これで良し、あの二人なら雑魚共に遅れを取るわけがない。

 あとは、俺がこいつを始末するだけだ。


「ブルァァァ!」


「俺なら勝てると踏んだか? ……舐められたものだな」


「ブルァ!」


「ふんっ!」


 振り下ろされた棍棒を両腕を交差して受け止める!

 その衝撃は中々で、俺の足が地面に埋まった。


「ブルァ!?」


「何を受け止められて驚いている? こっちも行くぞ——ゼァ!」


「ゴバァァ!?」


 両腕を上げて棍棒を弾き、回し蹴りを食らわす。

 少しだけ吹き飛んだが……すぐに起き上がり、けろっとしている。

 しかし、その顔は怒りに染まっていた。

 脆弱な人間に力で負けたのが気に食わないのかもしれない。

 ……これならば、挑発すれば容易いか。


「だが、肉弾戦では仕留められないか。どうした? その程度か?」


「ブ……ガァァァァァァァア!」


「所詮は妖魔、安い挑発に乗ったか」


 俺が言葉で挑発すると、奴が棍棒を振り上げた状態で駆けてくる。

 俺は片手を背中にある大剣に添え……振り下ろしを半歩ずれて躱す!


「そんな大振りを喰らうわけがなかろう!」


「ブカァ!?」


「失せろ——斬馬一刀!」


「ガ………ガ、ガ、ガ……」


 隙だらけの身体に跳躍斬りを放ち、大剣により顔面を押し潰す!

 トロールはゆっくりと地面に伏せ……ただの肉塊となった。

 周りを見ると、どうやら雑魚も片付け終わったようだ。


「これでよしと……さて、どうしたもんか」


「お兄さん!」


「うおっ!? せ、セレナ様!?」


 振り返ると、セレナ様が胸に飛び込んできた!

 避けるわけにもいかず、そのまま受け止める。

 色々と柔らかいものや良い香りがして、俺の脳内を刺激する。

 ……ええい! 戦いの後で高ぶってるとはいえ、王女様に対してなんてことを!


「えへへ、思い出しました」


「は、はい? そういえば、お兄さんとは? い、いや、ともかく離れましょう!」


「あっ——私としたことがこんな大勢が見てるところで! し、失礼しました!」


 そこで、ようやく俺から離れてくれる。

 そして、改めて確認するが……目の前にいるのは、間違い無く我が国の第一王女であるセレナ様だった。

 今日は鎧ではなく白いワンピースを着ていて、普通の清楚な女の子って装いだ。


「いえ……それより、どうしてここに? ナイルもいるし……どうなっているんだか」


「先輩! お久しぶりです!」


「ああ、と言っても二週間ちょっとしか経ってないが……言いたいことが多すぎて、頭が痛くなってきたな」


 すると、見知らぬメイドさんが近づいてくる。

 赤い髪に整った容姿、そしてすらっとした体型だが……この佇まいは普通のメイドじゃないな。

 おそらく、隠密系の特殊なメイトに違いない。


「アイク様、お話中失礼いたします。私、姫様の傍付きであるサーラと申します。お三方、まずは状況整理が必要かと思います。ひとまず、アトラス領地にまいりませんか?」


「サーラ殿か、よろしく頼む。確かに、こちらも少し混乱している。一度、落ち着いたところで話がしたいところだ」


「こちらこそよろしくお願いいたします。では、死体の方は如何なさいますか?」


「それなら心配いらない。ギン、お前の炎で処理してくれるか?」


「ウォン!(任せるのだ!)」


 妖魔は人が食べることはできないし、死体を放っておくと魔素溜まりという毒を発生させる。


 なので、必ず燃やして処理する必要がある。


 その後、ギンの火炎により処理を済ませた俺達は、街へと向かうのだった。

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