STORIES 049:汝、依存することなかれ
STORIES 049
人は年齢を重ねるうちに、周囲の人たちとの関係を少しずつ変えてゆく。
親子は、お互いが何歳になろうとも一生親子のままだ。
大抵は、ね。
でも、幼い頃は親に依存していた経済的負担や精神的な支えも、やがて自分で解決しなければならなくなってゆく。
それは親の立場からすると、喜ばしいようでもあり、頼もしくもあり、どこか寂しい気持ちもあったりする。
少しずつ、大人に。
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両親と、僕と、幼かった息子と。
水族園に出かけた日のこと。
息子はまだ、動物や展示物そのものというよりは、遠出や非日常感のほうに魅力を感じているような…
それでもそんな一日を、幼いながらも楽しんでいたようだった。
その夜、実家に両親を送り届け、少し家に上がって話をしていた。
息子は、さっきジイバアに買ってもらったオモチャで遊んでいる。
イルカに車輪が付いていて手押しで走らせるような、家族向けの観光地でよく売られているもの。
彼は車輪が付いた玩具がお気に入りだった。
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日が暮れて暗くなっていたので、車の向きを入れ替えて出やすくしておこうと思った。
荷物も多いし、一人でぱぱっとね。
ジイバアと遊んでいる息子を残して、そっと玄関から車に向かった。
そろそろ帰宅しないとなぁ。
車を移動し終えて…
家の中に戻ろうと振り返ると、玄関の外に出てきたババに抱っこされた息子が、大泣きをしていた。
さっきまであんなに夢中になって遊んでいたのに。
どうしたの?と訊ねてみる。
「エンジンの音が遠くから聞こえた途端にね、オモチャを放り出して、慌てて玄関に向かって走って行ったのよ。置いていかれちゃうと思ったのかな。」
楽しそうにはしていたけれど、息子なりに不安を感じていたのかもしれない。
まだ泣き止まない息子を抱き上げ…
反対側の手で、廊下の隅に放り出してあったオモチャを拾い上げる。
バカだな、この世で一番大切なお前を…
こんなところに置いていく訳がないだろう?
息子はただ、涙を流して僕の首にしがみついていた。
小さな腕で、しっかりと。
そして僕は…
なんだかとても満たされた気持ちになった。
さぁ、そろそろ家に帰ろうか。
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誰かに頼られているということは、自分自身の存在意義を支える重要なファクターであり…
逆に、自らもまたその関係性に依存しているのかもしれない。
あなたがいるから、僕もいる。
あなたが求めてくれるから、僕も生きてゆける。
頼り、支えられているのは、きっと僕のほうなんだ。




