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STORIES 049:汝、依存することなかれ

作者: 雨崎紫音
掲載日:2024/03/14

STORIES 049

挿絵(By みてみん)



人は年齢を重ねるうちに、周囲の人たちとの関係を少しずつ変えてゆく。


親子は、お互いが何歳になろうとも一生親子のままだ。

大抵は、ね。


でも、幼い頃は親に依存していた経済的負担や精神的な支えも、やがて自分で解決しなければならなくなってゆく。


それは親の立場からすると、喜ばしいようでもあり、頼もしくもあり、どこか寂しい気持ちもあったりする。


少しずつ、大人に。


.


両親と、僕と、幼かった息子と。

水族園に出かけた日のこと。


息子はまだ、動物や展示物そのものというよりは、遠出や非日常感のほうに魅力を感じているような…

それでもそんな一日を、幼いながらも楽しんでいたようだった。


その夜、実家に両親を送り届け、少し家に上がって話をしていた。


息子は、さっきジイバアに買ってもらったオモチャで遊んでいる。

イルカに車輪が付いていて手押しで走らせるような、家族向けの観光地でよく売られているもの。


彼は車輪が付いた玩具がお気に入りだった。


.


日が暮れて暗くなっていたので、車の向きを入れ替えて出やすくしておこうと思った。


荷物も多いし、一人でぱぱっとね。

ジイバアと遊んでいる息子を残して、そっと玄関から車に向かった。


そろそろ帰宅しないとなぁ。


車を移動し終えて…

家の中に戻ろうと振り返ると、玄関の外に出てきたババに抱っこされた息子が、大泣きをしていた。

さっきまであんなに夢中になって遊んでいたのに。


どうしたの?と訊ねてみる。


「エンジンの音が遠くから聞こえた途端にね、オモチャを放り出して、慌てて玄関に向かって走って行ったのよ。置いていかれちゃうと思ったのかな。」


楽しそうにはしていたけれど、息子なりに不安を感じていたのかもしれない。


まだ泣き止まない息子を抱き上げ…

反対側の手で、廊下の隅に放り出してあったオモチャを拾い上げる。


バカだな、この世で一番大切なお前を…

こんなところに置いていく訳がないだろう?


息子はただ、涙を流して僕の首にしがみついていた。

小さな腕で、しっかりと。


そして僕は…

なんだかとても満たされた気持ちになった。


さぁ、そろそろ家に帰ろうか。


.


誰かに頼られているということは、自分自身の存在意義を支える重要なファクターであり…

逆に、自らもまたその関係性に依存しているのかもしれない。


あなたがいるから、僕もいる。

あなたが求めてくれるから、僕も生きてゆける。


頼り、支えられているのは、きっと僕のほうなんだ。

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