笑う太陽を、照らす月
笑う門には福来る。
別に、特段幸福でありたいわけではない。
ただ、どうか不幸が私の大事な人に降りかかりませんように。
そのためになら、いくらでも笑おう。
いくらでも幸福になってみせよう。
それで周りが明るくなるのなら、みんなが幸せになるのなら。
どんなことがあっても、いくらでも、明るく幸せに生きていこう。
「秋ってさ。いっつもポケポケしてるよねー」
「わかる。季節で言うと秋ってよりは春みたい。」
違うよ。私は、みんながいるから、ポケポケしていられるの。
「秋って大胆で、すごいよね。」
「わかる。ふわふわしてそうなのに、実は芯があって強気だよね。」
違うよ。実はとっても怖いんだよ。
一人になると、途端に弱くなっちゃうよ。
強がってるの。ばれないように。見せてないだけなんだよ。
誰かに気づいてほしいわけでもない
つらい時も別にそんなに多いわけじゃない。
それでも、
私がふいに一人になった時
泣きそうなくらい寂しかったことも
石に躓いてにこにこしていた時
ほんとはすごく痛かったことも
きっとあなたは知らないでしょう?
でも、それでいい。そんなことが気にならないくらい私は既に強くなれている。
秋は過ぎて、もうすっかり冬化粧。足早に去っていく月日が私たちの背中を押す。
雪がひらひら舞い落ちる。憑き物を落とすかのように、白く、白く、世界を満たしていく。
二人分の足跡が、ふみふみと残っていく。
除月。
旧年を払い取り除いて、新年を迎える月という12月の別称。
11月は過ぎ去った。憑き物は落ちた。でも、きっとこれからもっと寒くなる。
私は秋。春に憧れ、春のふりをするも春には成れない。されど冬を耐える者。
闇に覆われるこの季節を乗り越えられるのも、
ずっと笑って強くいられるのも、
きっとそれは、あの秋の終わりの月の美しさがあったから。
暗闇と絶望の淵で、温もりと声をもらったから。
大丈夫。。。
大丈夫?
私は秋?
私は飽き?
私は空き?
厭き?大丈夫?アキ?大丈夫?アキ?
「大丈夫だよ。」
「秋は大丈夫だよ。」
そう、私の声だけが響く中、絶望の雲で覆われた世界に、声が聞こえた。暗闇の中で。でも、確かに。
秋の涼しげな風が吹き渡る。その清涼感と力強さに自然と心が凪いでいく。雲が晴れていく。
疑う声ではない。嘲笑の声でもない。取り繕った声でもなかった。
それはまるで澄み切った月明かりのように、私を照らしてくれた。
私は秋で
私は大丈夫だと
そう、強くまっすぐ、声がした。体の震えは一瞬にして消え去った。
その言葉に、どれだけ私が救われたか。
きっと、あなたは知らないでしょう?
でも、それでいい。それで私は強くなれたのだから。
だから、私はこれからも
私のまわりみんなの幸せを守っていける。
あなたも含めて、照らしてあげる。
そんな中でもずっこける。顔から雪に突っ込む私を笑うあなた。
前みたいには痛くない。優しい雪が秋を迎えてくれている。きっと今日も私は運がいい。
むーーーー
頬が膨れる。口は開かない。せっかくの運が逃げるから。
でも、そう。私はついているのだから。
ツキがいつもあるから。
声には出さない。手も出さない。
でも、顔に出やすい私は、下を向く。顔を隠す。顔が赤いのは寒さか、それとも。
そして、顔を上げる。まっすぐあなたを見つめる。
幸せを呼ぶ笑顔を空に満開に咲かせながら。
む~~~~~~!!!!
そうして今日も、頭突きが出る。