6話 ギゼフの驚き その1
ギゼフ・ランバル侯爵視点……。
「ふふふ、美しい絵だ。サリシャスの絵は何度見ても……」
「本当に気に入っているのね、ギゼフ。サリシャスの絵を……なんだか、妬けてしまうわ」
「おいおい、勘弁してくれよ。あくまで絵画のデザインを気に入っているだけなんだからさ」
「それは分かっているけれど……でも、本人に会いたいとも考えているんでしょう?」
「確かに興味はあるが」
噂によるとサリシャスは女性とのことだ。年齢までは分からないが、会ってみたいというのは事実だった。といってもロドリー以上に好きになったりはしないだろうが。あくまでも興味本位で会いたいという感じが強かった。
「失礼致します、ギゼフ様。少し宜しいでしょうか?」
「どうかしたのか、バナード?」
「はい……実は、サリシャスの絵画についてのお話がございまして……」
「ん?」
一体、何事だ? バナードが私に言って来るということは問題でも起きたのだろうか?
「何か問題が生じたのか?」
「実はその通りでして。サリシャスの代理人からの連絡に寄れば、ギゼフ様が依頼された10枚の絵の作成を断るとのことです……」
「なんだと……?」
私は最初、バナードが言った言葉の意味が分からなかった。あのサリシャスが私の依頼を断った?
「サリシャスが私の依頼の絵を断っただと……!? どういうことなんだ?」
「私にも分かりません。しかし、代理の者からそういう連絡が来ております」
「ば、馬鹿な……」
サリシャスの正体は私にも分からないが、今までこのようなことはなかった。一体全体、どうして断ったりするのだろうか……。
「如何いたしましょうか、ギゼフ様」
「ぬう……」
すぐに対処法を見つけるのは難しかった。どうする? 既に諸外国からの注文は受け付けてしまっているし、それを断ったりしたら、私の信用問題になってしまう。サリシャスには、なんとしても絵の作成をして貰わなければならない。
「ねえギゼフ、サリシャスに会って直接交渉した方が良いんじゃないの?」
「直接交渉? しかし、サリシャスの正体は……」
知らない者の方が多いはず。それを見つける術は……。
「ランバル侯爵家の力を総動員すれば、見つけられるでしょう? 知っている人物に連絡を取るなりして見つけた方が良いわ。なるべく早めにね」
「そ、そうだな……早速、動くことにしよう。バナード、すぐにサリシャスの正体を探るチームを編成するのだ。事態は一刻を争うぞ」
「か、畏まりました。すぐに手配致します!」
「急いでくれ」
マズイことになって来たぞ……まさか、サリシャスが私の依頼を断るなんて。その原因も含めて調査しなくては……。