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5話 キース王子殿下との一時

 あの日、キース王子殿下が屋敷に来てくれてから少しの時間が経過した。キース王子殿下は暇を見つけては私の元を訪れてくれている。



「こんにちは、シェイナ嬢」


「これはキース様! ようこそいらっしゃいました!」



 私はキース様に頼まれた絵の完成に向けてラストスパートをしていたところだけど、彼が訪れたので慌てて椅子から立ち上がる。


「ははは、そんなに改まる必要はないよシェイナ嬢。気持ちだけ貰っておくとしよう」


「あ、はい……失礼しました」



 私はなんだか恥ずかしくなってしまい、そのまま椅子に座り直した。キース様はいちいち礼儀正しい挨拶は必要ないとおっしゃっているのだと思うけれど、なかなかに慣れないわね。まあ、相手は第二王子殿下だししょうがないけれど。


「依頼していた絵の方はどうかな?」


「はい、そちらにつきましては今日中にでも完成するかと思われます」


「凄いな……優先的に描いてくれているのは知っていたが、他の絵も描いているだろうに。速筆というのは噂だけではなかったということか」


「そ、そうですかね……」



 確かに私は速筆として有名だ。私と言うか「サリシャス」が有名なんだけれど。王子殿下に褒められると照れてしまうわね。


「キース様、本日のご用件としては絵の完成度合いの確認でございますか?」


「それもあったが、単純にシェイナ嬢の様子を見に来たんだよ。気持ち的には落ち着いて来たか?」


「あ……ええと、そうですね。前よりは大分マシになったと思います」



 絵を描いていると落ち着くし、キース様が来てくださってからさらに落ち着きを取り戻した気はする。まだ、万全状態ではないけれど。


「そうか、それなら良かったんだが……」


「あの、それからキース様……」


「どうかしたのか?」


「はい……その、私の絵の依頼人にギゼフ様の名前が多くあるのですが」


「ああ、そういうことか……」



 キース様は察してくれたみたいだけれど、少し気まずい雰囲気になってしまった。


「確かギゼフ殿はサリシャスの絵画を特に気に入っていたな。諸外国の要人にも売る手筈があるようだし、自らのパーティに招くことも考えているようだ」


「そうですよね……」


「ただ、彼は君がサリシャスだとは知らないのだろう? どうするつもりなんだ?」


「私は……」



 キース様から質問されたけれど、私の中での答えは決まっていた。あの婚約破棄の日から決まっていたと言えるかもしれない。


「私はギゼフ様には売らないようにしたいと思っております。あのようなことをされて、あの方の為に描けるはずがありませんし」


「ふむ、賢明な判断だな」


 ギゼフ様の為に絵を描く時間があるなら、他に私の絵を欲している方の為に描いた方が何倍もマシだ。私の判断は正しいと思うし、キース様も賛同してくれていた。この判断でギゼフ様がどうなろうと、自業自得でしかないわね。


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