4話 ギゼフとロドリー
ギゼフ・ランバル侯爵視点……。
「ねえ、ギゼフ。前の婚約者のことなんだけど……」
「ん? シェイナがどうかしたのか?」
「そう、シェイナよ。彼女は伯爵令嬢なんでしょう? アルバート家よね?」
「ああ、そうだが。それがどうかしたのか?」
幼馴染のロドリー・シンクレア侯爵令嬢は、私の近くのソファに座っていた。私達は現在、書斎で寛いでいる。
「どうして彼女と婚約なんてしたのよ。私と言うものがありながら」
「そうだったな、済まない。私の間違いとしか言いようがないな」
アルバート伯爵家は事業が上手く行っているのか、それなりの額を儲けているらしいのだ。それに目が眩んだというのは、正直あったりする。しかし、シェイナは固すぎた……色々な面においてな。それが我慢ならずにロドリーを選んだわけだが、これは正しい判断だったと言えるだろう。
「間違いというのは?」
「まあ、その辺りはいいじゃないか」
「誤魔化しているでしょう? まったくあなたと来たら……」
「ははは」
「うふふ」
私達は信頼という関係で結ばれている。ロドリーもある程度は気付いているだろうが、深く聞いて来ることはない。この辺りがシェイナとの違いだな。非常に居心地が良いのだ、彼女と一緒に居ると。
「でも、かなり酷いことを言って一方的に婚約破棄をしたのでしょう? 大丈夫なの?」
「たかが伯爵家に何が出来ると言うんだ? 何か言って来たとしても、私の権力で黙らせてやるから安心しろ」
「まあ、頼もしいわ。流石は私のギゼフね!」
「ははは、当然だよ! 大切なロドリーの為なら、私は大抵のことはするさ」
ロドリーの心配も分かるが、私は侯爵なのだ。アルバート伯爵家程度、恐れる相手ではない。何か文句を言って来たとしても、叩き潰せるだけの権力を持っているのだ。そう、完璧に近い力がな……。
「それにしても、ギゼフ。あの絵はとても良いわね。惚れ惚れしてしまうわ」
「ああ、サリシャスの絵画だな。サリシャスの絵画は他国でも人気のようで、私のところへも注文が殺到している。前から絵画でのビジネスは上手くいっていたが、さらに規模を拡張しようかと思っているのだ。需要も増えているからな」
「なるほど、それならランバル侯爵家の資産がとても潤いそうね」
「ああ、お前にも贅沢させてやれると思うよ」
「うふふ、楽しみだわ」
ふっふっふっ……絵画のビジネスを通して金を回収するだけでなく、他国との関係をより強化出来るというものだ。今度のパーティには諸外国の要人も呼ぶとしようか。一気に私の名を知らしめるのにはもってこいだろう。
楽しみだ……。