17話 ギゼフ様との会話 その1
私とキース様はその日、ギゼフ・ランバル侯爵の屋敷を訪れていた。私としてはそれなりに久しぶりの屋敷内部となる。
「き、キース王子殿下……ご無沙汰しております」
「ああ、ギゼフ殿。久しぶりだな」
「さ、左様でございますね……」
ギゼフ様は私達……正確にはキース様の訪問にかなり動揺しているようだった。明らかに慌てている様子は普段なら面白いけれど、今は笑えないわね。
「シェイナ様。大笑いするのは如何でございますか?」
「いや、それは流石に……」
私の護衛……かどうかは分からないけれど、この場にはメイドの一人であるライズも同行していた。彼女は心なしかこの状況を楽しんでいるようだ。ライズは私と同じ18歳のメイドでしかないはずよね……? 彼女の正体が不明だわ。
「ライズ……あなたって一体、何者なの?」
「嫌ですわ、シェイナ様。私はシェイナ様と同じく18歳のか弱い少女ですよ?」
「ええ……」
確かに年齢的には同じだけれど、明らかに肝の据わり方が違っていた。ある意味ではキース様以上に肝が据わっているかもしれない。キース様もライズの態度には驚いているみたいだし。
「なんだか不思議な女性だな」
「そうですね……キース様」
私は苦笑いするしかなかった……。
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その後、私とキース様はギゼフ様の屋敷の応接室に連れて来られた。ソファも目新しいわけではない……私からすればむしろ、見慣れたものとなっていた。
「さ、さて……キース王子殿下、本日の用件をお聞かせいただいても宜しいでしょうか?」
私達がソファに座ると同時に飲み物も配られる前に、ギゼフ様はキース様に問いかけていた。明らかに焦っている様子だ。通常は使用人が人数分の飲み物や茶菓子を出した後に話を進めるのが通例なはずだから。
「ふむ……その質問には逆に、私から聞いておかねばならないことがあるな」
「な、なんでしょうか?」
「私やシェイナ嬢がここに来た理由……ギゼフ殿であれば察しは付いているのではないか?」
「そ、それは……あ、あの……」
ギゼフ様は言葉がしどろもどろになっていた。完全に焦っている証拠だ。私達が来た理由については、もうギゼフ様の中では分かっているはず。それを敢えて彼の口から言わせようとしている辺り、キース様は最初から攻勢に出ているようだ。