14話 調査 その1
「私の絵をギゼフ様が他の貴族の方から買っているということですよね?」
「買っているのは間違いないと思うが、それを他国に売るのが目的だろうからな。正当な手続きで買っているとは考えにくい」
「そうですよね……ギゼフ様ですもんね」
「そういうことだな」
ギゼフ様のことだから、自分よりも地位が低い貴族を狙って絵の獲得を考えていそうね。それも少額で手に入れていそうだわ。そうでなければ儲けにならないのだし……場合によっては、無料で譲り受けている可能性も考えられそうね。
「ギゼフ様はどういう手段で絵を集めているのか、とても気になりますね」
「確かにそうだな。不当な方法を使用している可能性も考えられるし」
キース様も私と同じ考えのようだった。ギゼフ様は絵の売買を絶対に成功させる必要があるみたいだしね。
「まずは部下に調査させることにしよう。それから……」
「私に何か出来ることはありますでしょうか?」
私は作者本人なのだし、完璧に当事者になってしまっている。なにかキース様の役に立てないか、念のために聞いてみた。
「そうだな、シェイナ嬢は引き続き依頼されている絵の制作を進めて行って欲しい。調査の方は私に任せておいてくれ。定期的に結果を報告するよ」
「ありがとうございます、キース様。ただ、私は自分の絵がギゼフ様に向かっているのは耐えられないので、なんとかしたいと考えています」
「気持ちは分かるが、今のシェイナ嬢には何も出来ない案件だろう?」
「そ、それは……そうですね」
確かにキース様のおっしゃる通りだった。私の能力では何も出来ない……絵を欲してくれている人々に売らないという選択肢を取ること以外では。ただ、それでは根本的な解決にはならないし。しかし、ギゼフ様が他の貴族から絵を購入しているという事実に目を背けることは難しい。
なんとしても阻止したくなってしまう。私の能力では限界があることは分かっているのだけれど……。
「まあ、そんなに心配することはないさ、シェイナ嬢。私がギゼフ殿の絵画の購入方法について調査してみる。そこで何か違反があれば、直接、殴り込みに行くことが出来るからな」
「殴り込みに行く場合、私も同行させていただいて宜しいでしょうか?」
「そうだな、考えておくよ」
「はい、ありがとうございます」
ギゼフ様がまともな方法で絵画の購入をしているとは考えにくい。キース様と殴り込みに行くことは決定事項になりそうね。その時に今まで売った絵も全て返して貰えないかしら?